八ヶ岳西面 小同心クラック
2016年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー西野、中山(記録)
期間: 2016年12月3日(土)

記録:
12月2日(金)
22:00新宿集合・出発
24:30赤岳山荘P到着(車中にて仮眠)

12月3日(土)
3:00起床/3:25駐車場を出発 - 5:10赤岳鉱泉到着/5:30出発 - 7:00大同心基部(登攀準備)/7:30トラバース - 8:30小同心クラック取付/8:45登攀開始 - 11:40 3P目終了点(小同心の肩) - 12:05 4P目終了点(小同心の頭) - 登山道を経て - 13:00大同心ルンゼ下降開始 - 13:50大同心基部(待機)/14:30出発 - 15:30赤岳鉱泉(待機)/16:30下山開始 - 18:00駐車場

冬壁のトレーニングに行くという米田さんにお声かけいただき、今回の八ヶ岳行きが実現した。小同心クラックは、西野さんも私も昨シーズンにフォローで経験しているので、今回はつるべで臨んだ。
 日帰りのため、未明に駐車場を出発。赤岳鉱泉を経て、大同心稜を登るうちに夜が明けた。朝焼けが見事だった。大同心基部で大方の身支度を終え、雲稜ルートを登る米田さん・松邨さんと分かれて小同心クラックへのトラバースに向かった。先行者なし。
トラバースルートの雪は少なく、降りたてということもあってサラサラで足元が定まらない。岩壁に沿ってルートをとるが、薄く降り積もった雪のすぐ下にある岩の形状が見えず、一歩を踏み出すのがとても恐い。終始西野さんが先行してくださり、大変心強かった。今回の山行全体を通しての一番の核心は、このトラバースだったと感じている。最後は岩壁から離れ、小同心の基部を回り込むようにして雪の斜面を登り、取り付きに着いた。
小同心クラックは、奇数ピッチを西野さん、偶数ピッチを中山が担当した。
1P目はチムニー手前までノーピンのため、出だしはランナウト気味に登らざるを得ないが、できるだけピナクルで支点をとれるようなルート取りをした。チムニーに入ったところのビレイ点でピッチを切る。私がフォローで登り始める頃には、小同心の基部に日が差してきた。とても暖かく、冬壁の練習にしては条件が良すぎるくらいだ。
2P目、はじめ左側から登り、上のビレイ点を過ぎてから右手のチムニーに入る。昨シーズンの記憶が見事になくなっており、ピンを上手く見つけることができない。そもそも易しいルートなので、そう多く支点があるわけでもないのだろう。適当なピナクルにスリングを掛けたり、岩の隙間を見つけて積極的にカムを噛ませて進んだ。慎重になり過ぎて、時間をかけてしまった。寒いチムニー内で長らく西野さんをお待たせしてしまったのが申し訳ない。
2P目の終了点でビレイをしていると、後ろからフリーソロの青年がやってきた。朝イチで裏同心ルンゼを登ってきたという。「早いですね」と声をかけると、「一人だとロープも出さないし」と笑う。我々を追い抜いてサクサクと登って行った。この後、ジョウゴ沢へ偵察に行ったというから、フットワークの軽さに驚かされる。続いて西野さんが上がってきたので、チムニーから顔を出すお決まりの写真を撮り、3P目へ。
3P目は右ルート(広めのチムニー・階段状)と左ルート(クラック状)があるが、今回は右側を選んだ。15メートルほどで小同心の肩に到着。実質的なクライミングはここで終了。西野さんと握手を交わし、4P目として小同心の頭までロープを延ばす。最後の短い斜面は、草付きにアックスがよく効いて楽しい。
 小同心の頭でロープを解いて横岳方面へ。途中から、岩稜帯の基部に沿ってトラバースをして登山道へ出た。下降路である大同心ルンゼは、積雪量の関係か、昨シーズンと様子が違っていた。2ヶ所ほど岩場をクライムダウンする所があるが、岩の凹状部分に薄氷が張っており、そのまま降りるのは難しそうだったため、懸垂下降をした。行きに苦労した大同心基部〜小同心のトラバースルートは踏み固められ、安定した道になっていた。この日は、大同心南稜が大人気で、多くのパーティが取り付いていた。いつかここにも登ってみたい。
 大同心基部にて雲稜ルート組と無線交信をしたのち、我々は先に赤岳鉱泉まで下りることに。その後も数度、無線による交信をして、赤岳鉱泉から赤岳山荘へ向かう道中で、無事全員合流した。


大同心稜から見た朝焼け


今回の核心・大同心基部〜小同心のトラバース


1P目リード


2P目の抜け口にて


登り終えて。赤岳をバックにしたつもりが…


大同心南稜のパーティ

無線の使用について (西野)

今回、小同心クラック組と大同心雲稜ルート組で、1台ずつ無線を持参した。両方ともスピーカーマイクをつけ、大同心基部より常時オンにしていた。
・登攀開始、終了時など、行動の節目となるところで無線連絡をする。応答可能なときならば応答する。登攀中であることなどを考慮し、応答がなくても、とりあえず現状報告をすることとした。
・小同心クラック取り付き到着時に連絡。
・2ピッチ目フォローで登攀中に 米田組から一度連絡あり(お互いに現状報告)。
・登攀終了(大同心の頭到着)時、稜線から大同心基部への下降点にて連絡。
・その後は、ドーム基部から撤退する米田組と、現在地の報告を随時行いながら下山。北沢登山道の堰堤広場で無事に合流できた。
・近いところにいるが異なるルートを登るパーティどうしでの交信に無線は非常に有効である。連絡をとりあい、現在地を互いに理解している安心感があった。スピーカーマイクはいちいち無線機を取り出す必要がないので使い勝手が非常によい。