八ヶ岳・赤岳東稜
2015年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー尼子、牛山、中山(記録)
期間: 2016年3月5日(土)〜6日(日)

【記録】
3月5日(土)
9:05サンメドウズスキー場P出発 〜 県界尾根登山口 〜 9:50県界尾根分岐(「小天狗まで1時間」の標識) - 10:05分岐発 〜 12:35二俣・赤岳東稜末端取付 − 14:30 幕営(2,400M付近)

サンメドウズスキー場の駐車場から、車道を経て、県界尾根登山口へ。しばらくは、登山道をたどり、小天狗に向かう登り坂の手前から大門沢へ入った。歩き始めたときから雪の少なさが気になっていたが、案の定、沢床が完全には埋まっておらず、仕方がないので沢の左岸を進んだ。途中、大きな岩に行く手を阻まれ沢に下りると、その先がちょうど二俣であった。
二俣にある尾根末端は、雪が少ないために露出している岩の面積が多く、事前にチェックしていた記録写真とは様子が大きく異なっていた。違う沢に入ってしまったのでは…と、一人で勝手に不安を感じていたが、先輩方の判断は正しく、そこが目指していた東稜末端であった。デブリを利用して尾根に取り付き、シャクナゲの枝を掴んで這い上がった。その上の樹林帯は雪がグザグザで踏み抜きがひどく、なかなか思うように進めない状況が続いた。尾根に乗ってしまえば1時間ほどで幕営適地に着けると思っていたのが甘かった。くさった雪との闘いで散々体力を消耗した後、斜面がやや緩やかになり、樹林が開けたところで幕営することにした。

3月6日(日)
4:00起床/6:15出発 〜 8:07第一岩峰基部(1本) 〜 8:55稜線 〜 9:30第二岩峰基部(1本) 〜 11:45竜頭峰/12:05下山開始(真教寺尾根) - 14:35牛首山 〜 16:30賽の河原 - 17:20県界尾根登山口 〜 17:38サンメドウズスキー場P到着

入山前に見た天気予報が思わしくなかったので、あまり期待はしていなかったが、起きてみると美しい朝焼けが広がっていた。幕場を出発してすぐに、第一岩峰が目に入った。早朝なので雪の状態も多少はマシかと思ったが、少し気を抜くと やはり踏み抜いてしまう。なるべく南側の斜面を意識してルートをとり、第一岩峰の基部に到着。比較的 安定していると思われる岩の左側を巻いて登った。
第一岩峰から第二岩峰までは雪稜を行く。ここまで踏み抜きだらけの斜面を登ってきた我々にとっては、待ってました!という感じの、短いけれど気持ちの良い雪稜歩きだった。
第二岩峰は、基部から岩を左に回り込むようにトラバースし、ルンゼを詰め上げる。ここで初めてロープを出してもらった。尼子さんと牛山さんが交替でリードしてくださり、3ピッチで稜線に出た。ルンゼ内は、手も足も、決まるような決まらないような微妙な雪質だったので、ロープがあるのは心強かった。ロープをまとめて岩稜を少し進んだ先が竜頭峰だった。登頂を祝い、しばし休憩した後、下山を開始した。
下山ルートは真教寺尾根にとった。雪が少ないおかげで、上部の鎖はすべて出ていた。樹林帯に入ってからは緩く長い下りが続き、さらに途中からは雨に降られ、思ったよりも下山に時間がかかってしまった。サンメドウズスキー場の上部からは、大門沢を経由して県界尾根に合流し、登山口まで戻った。

【尼子の感想】
 初めて「赤岳東稜」の計画に参加したのは20年前。先輩2人に連れられて来たのだが、東稜の末端にすら取り付けず、県界尾根を楽しく登ってしまった。その次は10年ほど前。二俣から左俣へ入って稜に取りつき、順調に進んだが、前方に見えていた岩壁(これが県界尾根上の岩壁だった)を第一岩峰と勘違いして、最後は県界尾根上部を登攀してしまった。「3度目の正直」か、「2度あることは3度ある」かと不安が入り混じった心境での山行だった。
 今年の雪の少なさは八ヶ岳の東面も同じ。沢床に雪が溜まらず、やむなく沢の中の盛り上がった部分をしばらく辿って二俣まで。ここも正面の岩がまるで「大岩壁」のように露出しており、出合のあたりはどうもデブリが固まっているような雪だった。二俣かどうかの確信をもてないまま、右俣へ少し入って牛山が稜の末端へ取付いた。ブッシュで木登りのあとは終始ラッセル。根雪がなく、サラサラ雪の下にクラストした部分があるので、それを踏み抜かないように静かに体重をかけた途端に踏み抜いてしまい、下の層もサラサラでズボズボと潜ってしまう。
ラッセルすれどもなかなか先に進まない。前方やや右手に岩壁が見えている。これが前回間違えた県界尾根の岩壁のようだ。右へ寄らないよう左寄りへ進むが、第一岩峰は視界に入ってこない。尾根途中の平になったわずかな部分を利用してテントを張った。
 2日目、夜の間に冷え込んで朝から快適にアイゼンで!との淡い期待はもろくも崩れ、夜の冷え込みもなく気温は高め、雪は昨日と同じ状態だった。ラッセルすること2時間弱で第一岩峰手前。これは時間切れ敗退か?との不安を吹き払うべく、ここまで来たからには完登するぞ!と巻き直して、第一岩峰を左の草付帯から巻いて稜線へ上がると綺麗なリッジが続いている。しかし、ここから結構時間がかかった。第二岩峰は左側のルンゼを抜ける。草付帯&腐れ雪の登攀に不慣れな中山のためにロープを出し、状態の良くない雪をだましだまし登り、基部から3ピッチで竜頭峰へ向かう稜線へ出た。すぐ左に真教寺尾根、目指すピークはもうすぐだ。ロープを外して5分も歩くと登山道と合流、切なる想いが通じ、完登です。
 下降は真教寺尾根だが、これが長かった。上部の鎖場を通過し、樹林帯の中の雪面に入るや雪は最悪、まるで粘着質の粘土を団子にして足につけているみたいだった。シリセードも効かず、体力がどんどん奪われている。牛首山の先で小雨が降り出し、賽の河原が近づく頃には本降りになっていた。大門沢への標識があったのでそのままテープを追うように下降し、往路の登山道に合流した。雪はさらに消えている。長〜くてかったるい下降、お疲れ様でした。

 

ハイライトの痩せ尾根

主稜線にて、赤岳山頂をバックに