八ヶ岳西面 中山尾根・小同心クラック
2015年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー米田、中山(記録)
期間: 2016年1月10日(日)〜11日(月)


記録:
1月9日(土)
11:30美濃戸口到着(車中泊)

1月10日(日)
4:00起床/5:00美濃戸口を出発 − 8:00赤岳鉱泉(幕営)/8:45出発 − 9:00中山乗越 − 9:55.中山尾根・下部岸壁取付(登攀準備)/10:30登攀開始 − 12:30上部岸壁 − 14:30終了点 − 14:50地蔵尾根下降開始 − 15:20行者小屋 − 16:00赤岳鉱泉
前日夜のうちに、車で美濃戸口に入り車中泊。まだ暗いうちに、美濃戸口を出発した。途中で夜が明け、八ヶ岳西面の岩峰が目の前に広がった。これからあそこへ行くのだと思うと、赤岳鉱泉までのだらだらとした道も苦痛ではなくなった。
赤岳鉱泉でテントを設営し、中山乗越に向かう。中山尾根の下部岸壁取付までは、しっかりとトレースがついていた。取付で身支度をしていると、どこからかコールが聞こえてきた。中山尾根に先行者はいないようなので、石尊稜あたりを登るパーティであろうか。空気は澄んでいて、大同心の最終ピッチに取り付いている人影も確認することができた。
登攀開始。
1P目は基部を右へトラバースしたところから凹角を上がっていく。今回は一本歯アイゼンの使い初め。一歩一歩確かめながら登った。途中グラついているハーケンがあり、引っ張ってみるとあっけなく抜けた。アルパインルートのプロテクションの見極めには慎重にならなければならないということを実感。岩を左に回り込み、草付を少し登ったところでピッチを切った。
2P目。1P目でロープをのばしたので、すぐに雪稜部分に上がることができた。上部岸壁の手前までは、ロープをまとめて2人同時に登った。
3P目。ここが一番クライミングらしく、楽しいピッチだった。もちろん、フォローという安心感から、そう思えたのではあるが。
ビレイ点に着くと、後ろから単独の青年がやってきた。かなり慣れた様子で、システマチックに作業をこなしている。見ると素手で全ての作業をおこなっていた。私は薄手の手袋をして登っているにも関わらず手がかじかみ、常に「このままでは指先が死んでしまうのでは…」という恐怖と闘っているというのに。寒さに対しての慣れが違うのだろうか。先を急ぐ青年に道を譲り、後姿を眺めていると、そこからのピッチはフリーで抜けていた。
この頃から雲が低くなり、風が強くなってきた。
4P〜5P目では、強風でコールが全く聞こえない状況になっていた。リード米田さんの姿が見えなくなってからは、ビレイ点で、手元のロープが引かれていくのを見つめながら、壁に張り付き風にたえていたが、じっとしていると凍えてしまいそうなほど。八ヶ岳西面では強風でアブミが舞い上がると聞いていたが、これか…、という感じだった。米田さんがロープを引き上げ、ビレイ態勢に入ったであろうタイミングで、様子をみながら登り始めたつもりだったが、実際には米田さんをかなりお待たせしてしまったらしい。コールが聞こえないという状況はよくあることなので、あうんの呼吸が大事なのだとのこと。もっと場数を踏む必要がありそうだ。
終了点でロープを解き、縦走路へ出るためにトラバース。地蔵尾根を下り始めると、風は大分おさまった。

1月11日(月)
4:00起床/5:20赤岳鉱泉を出発 − 7:00大同心基部(登攀準備) − 8:00小同心クラック取付・登攀開始 − 9:50終了点 − 10:30大同心ルンゼ下降開始 − 11:00大同心基部 − 11:40赤岳鉱泉(撤収)/12:40下山開始 − 15:00美濃戸口
赤岳鉱泉から大同心沢に入り、大同心稜の急登を上がる。こちらもしっかりとしたトレースがあり心強い。大同心基部に到着する頃には空が明るくなっていた。ガスがかかっているものの、昨日より風は弱いようだった。大同心基部で身支度をし、小同心へトラバース。小同心クラックに先行者はなかった。
登攀開始。
1P目。1ピン目が見えないなぁと言いながら、リード米田さんが登っていく。クラックに入る手前で、やっと1本目のプロテクションが取れた様子。岩に付いた海老の尻尾のせいで、ピンが見つけにくいのかと思ったが、下部はフリーで登るしかないようだ。ホールド・スタンスとも豊富で、クライミング自体は問題ないのだが、プロテクションを探しながらのリードは難しいだろうと想像できた。1P目の終了点に到着すると、取付に後続パーティの姿が見えた。
2P目は、リードできたら格好いいだろうなと思わせるチムニー。こちらもフォローで登ること自体は楽しいのだが、とにかく岩の冷たさに慣れずスピードが上がらなかった。ホールディングが不安だったので、アウターグローブを外してインナー1枚で岩を掴んでいたのだが、どうしても雪を触ってしまい手袋を濡らしてしまう。途中でそれが凍りつき、慌てて予備のインナーに変えたのだが、どうしたものか…。その後はなるべくアウターをしたまま登るよう努力し、どうしてもという場所だけアウターを外すようにしたが、リード中に同じことができるだろうか。グローブについての課題は次回に持ち越しだ。
最終P。岩伝いにトラバースし、草付きを上ったところでロープを解いた。
そこからは岩稜の下をトラバースして、一旦縦走路へ出てから、大同心ルンゼを下降。所々クライムダウンする箇所があり地味に恐い。大同心基部を経て、大同心稜を下降し、赤岳鉱泉に戻った。テントを撤収し、しばし休憩した後、下山。

感想:
この時期に一度冬壁を経験しておきたいという気持ちが強く、今回の計画をお願いした。出発前の情報によると、土日とも天気の大きな崩れはないが、稜線は風速20メートル超えとのこと。ちゃんと登れるのか、少々不安を抱きながら八ヶ岳に向かった。確かに初日は強風に煽られたが、無事登りきることができて、ほっとしている。これから冬のバリエーションを続けていくにあたって、これくらいの洗礼はうけておいたほうがよいのかもしれない。
今回は2ルート全ピッチを米田さんにリードしていただいた。フォローということで思い切り動けたし、下ろしたてのアイゼンとの相性もばっちりで、楽しく登ることができた。リードができるようになるには課題がたくさんあるとは思うが、経験を積んでいつか自分でも登れるようになりたい。


中山尾根1P目リード


中山尾根全景


大同心基部からの小同心


小同心クラック1P目リード


小同心クラック1P目リード


小同心クラック2P目リード


小同クラック2P目フォロー


登り終えた後の小同心