行く手に格好いいピラミッド型の山容が見える。目指すピークはあれだ!と登攀意欲を駆り立てられるが、雪面には亀裂が何か所か入っていた。左へ回り込むと雪壁があり、ここは各人10メートルくらいの間隔を空けながら登って行く。最初の雪壁を超えたところで岩場が出てきた。そこの先にまた雪壁があるが、斜度がきつそう。ここからロープを出し、スタカットで行く。牛山がリードし、末端は小川につけ、尼子は間に入ってプルージックで登る。牛山のスタンスは高くて届かず、諦めて自分で作り直し。緩んだ雪はザラメ状態になっており、蹴り込んでもすぐに崩れてしまう。ピッケルを駆使してそうっと体重移動し、なんとか乗っ越した。次のピッチは、出だしはそのままロープを引きずって行ったが、足場の悪いところが出てきたところでスタカットに切り替えた。
3回ロープを出し、やっとピークだと立ったところはまだ南峰。この時点ですでにPM3:30、本峰はすぐ先に聳えているが、残念ながらタイムアウト、峠の我が家へ戻ることに。
南峰山頂からは、すぐ近くの谷川連峰からはるか遠くの越後の山々まで一望に見渡せる。青空に雪の白さが映え、なんともいえない。風もなく穏やかな日和で、この時期の上越でこんな日はめずらしいのではないか。
上りでロープを出したところは下りもロープを使った。上から牛山に確保してもらい、尼子、小川の順に降りる。思ったほど悪くはなかったが、それでも緊張した。なんとラストの牛山は確保なしでズンズン下りてくるではないか。さすが!!最後のピッチは5〜6メートルの懸垂をし、岩場を超えたところでロープをしまった。あとは、テン場目指して歩くのみ。夕焼けに染まった茂倉岳と武能岳がとても綺麗だった。
日が沈み、暗くなる直前にテン場到着、PM5時58分。さあ、あとは酒盛りを残すのみ。つまみと酒と小川調達のおいしい鍋に皆ご満悦。夜になって少し風が出てきた。明日は下りるだけなので時間もかからない。夜10時すぎ就寝。
3月1日(日)曇り後雨
AM6時30分起床。よく寝た。強い風でテントが押されている。朝食は久々のインスタントラーメン「出前一丁」なり。ラーメン用に残しておいたネギを入れ、ゴマラー油で味付け。おいしゅうございました。
テン場発8時40分。風は強いが気温は高く、雪はゆるゆる。昨日凍っていた斜面が心配だったので尼子と小川はアイゼンをつけた。ところが一晩中気温の高い状態が続いたせいか、ズボズボ潜って歩きにくい。歩きの練習のためには外してしまうのがよいのだが、面倒くさく、そのままつけて下りて行った。途中の雪面にザックが2つデポされていた。なんと踏み跡の真下に雪洞が掘られていた。快適そう。荷物をデポしてピークハントしに行ったのだろう。天気が持てばよいがと他人事ながら心配してしまう。
土樽駅に続く道路に下りるころには雨がパラパラ落ちてきた。登山口到着9時50分。駐車場で、タカマタギへ行ってきたという3人組の青年に出会った。昨日はタカマタギからも絶景がみられたと感動していた。そう、タカマタギも良き山です。
身支度を整え、湯沢の「岩の湯」という温泉に寄って帰京。足拍子は良き山かな。次は本峰&荒沢山を回ろう!
(記 尼子)