土合ビーコン等訓練
2011年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:久留島、植田、野田、佐々木夫妻、樽木、中島、小柳夫妻、結城、下坂、田仲、池部、 御手洗、山崎、牛山、西野
日程:2012年3月10日〜11日
3月10日(土)
午前1時  土合駅集合。 
久留島、植田、野田、佐々木夫妻、樽木、中島。7名
      土合駅待合室がいっぱいのため湯檜曽駅に移動。佐々木さん、植田君の誕生日会。4時前消灯。

6時30分 起床。白毛門登山口3分の所にテントを3張りたてる。
      小柳さん夫妻合流。合計9名
      朝飯後、各自基本操作の確認。

9時    渋滞で主要メンバーの到着が遅れているため、予定を変更してチームレスキューから。7人パーティーで他パーティーからの救助要請、2人の遭難者(2台のビーコン)を探すという設定。平地で行う。
      他、クロスサーチの説明、プロービングの説明。

実際にやってみてでた意見、注意点など
@ 救助要請があったとき何を聞くかマニュアルをつくるべき。
・ いつ雪崩れたか
・ 何名か
・ ビーコンをもっているか
・ 最後に遭難者を見失ったのはどこか
・ 雪崩の幅
    など
A ビーコンを受信モードにするとき、全員手をあげるなどしてきちんと確認する。
そのとき、
・ 1人は警察に報告
・ その他の携帯の電源をすべてoffに
・ 2次雪崩の時の逃げ場所確認
・ 救助メンバーに余裕のある時は、二次雪崩の見張り役をつける。
※あの場でも話が出た記憶がありますが、ビーコンサーチ要員以外に上記見張り役も含めゾンデ/掘り出し要員、救助/警察との連絡要員等の役割を分担し、埋没箇所特定後に1秒でも早く埋没者を掘り出すことが必要です。

実際の救助ではビーコン操作同様、それらを短時間で適切な判断をすることが、重要かつ難しいと思います。日頃から、メンバー全員が頭の中でシュミュレーションしておくことが必要と考えます(無線交信と同じで、頭でわかっていても、いざしゃべろうとすると口が動かないのと同じです)。

B 残留物があったら、その周辺は確認。残留物の移動はしない。
・ もしかしたら遭難者がビーコンを付け忘れていたという可能性もあるので、その周辺はプロービングすべき。(この意見はこの日にでたものではないが、翌日帰る間際の練習でそういう設定をやってみて感じた。)
・ 残留物より下に埋まっている可能性の方が高いので、そこまでは早く行く。しかし、
  複数遭難者がいる場合には残留物の上にいる可能性もあるので、いないと決め付けてもいけない。(この意見も、翌日でた)
C 2次雪崩の時
・ 逃げるのが優先
・ 余裕があればビーコンを送信に切り替える
※これは非常に判断が難しい状況ではありますが、自分としては下記対応をすべきと考えます。

1. ほぼ確実に逃げ切れると判断した時は、そのまま逃げる。
2. 逃げ切れず、巻き込まれると判断した時は送信モードに切り替える。

本来、送信モードへの緊急切り替え操作は2次雪崩対応のためにあります。可能な限り送信モードに切り替える努力は必要かと考えます。
※捜索開始時、送信モードにしたビーコンをすぐにヤッケのポケット等に入れられるようにジッパーを開けておく、等の準備は必要かもしれません(付属の頼りないゴムひもでは、雪崩の圧力で簡単に引きちぎられると思います)。

※もちろん、ビーコン送信切り替え作業の数秒間が命取りになり、雪崩に巻き込まれて死亡しまっては本末転倒です。捜索中も、二次雪崩を常に想定しながら捜索すべきでしょう。

D 捜索者2〜3名が列を組んで探す時
・ 隣の捜索者担当のエリアの方から電波を感じる時、
自分がそっちにいってしまうのではなく、まずは隣の捜索者に聞いて同じものを感じていればそこはその人に任せる。
・ 強い電波を感じたら、
すぐにリーダーに報告。他のビーコンの人は別を探す。
E クロスサーチ
・ ビーコンの向きを変えない
・ ゆっくり動かす
・ スパイク、フォルス・マキシマムなどの現象に注意
数値が1番低い所が2箇所以上離れてでることがある。この場合そういう箇所の真ん中を中心に調べるとよさそう。
数値が高→低→高となってもそこと決め付けず、もう少しはっきりするまで動かす必要あり。
F 1人みつかり他に移りたい時(トラッカー)
方向ランプが中央にある時、SPをおす。少し離れて、他を探す。
このモードでは、何個でも電波を同時に拾える。
2個のビーコンがすぐ近くに置かれていると、2種類の違う数字が交互にでたりもする。
ピープスではもっと楽らしい。
G プロービング
・ 1人でする時
まずプロービングする面の中央を指し、そこを中心に円。 
・ 2人でする時
やっぱり端からいくより中央からじゃないか。並んで、右、左、1歩前。
・ とにかく、まっすぐさす
・ ビーコンに1台穴をあけてしまった。
・ 岩をつく感覚が靴の感覚と同じ。
人間なら更につけば柔らかい部分にあたるはずで、周りもついても硬ければ岩と判断するべき。(翌日、帰る間際にでた意見)

12時   結城、下坂、田仲、池部、御手洗合流。合計14名。
      午前からのメンバーは昼ごはん。
午後メンバーは2人と3人に別れ、1つのビーコンを探す、基本操作の確認

14時   小柳夫妻帰宅。12名に
      6人ずつにわけて、午前と同じ内容。
      午前からのメンバーはより深く埋めて、繰り返し練習する。

15時   池部帰宅。11名に
      あと1〜2回やってからおやつ。
16時   山崎合流。12名に
      現役と結城さんでロープワーク。スタンディングアックスの練習。
      実践的斜面で落ちて、とめてを各自3回くらい。
      自分でセットして懸垂を、初めての人全員にやってもらう。
      最後は暗くなる。18時30分?

朝2時まで宴会。夜、牛山合流。下坂、御手洗帰宅。

3月11日(日)

9時   西野合流。今日は12名
     6人ずつにわけて、実践的斜面で前日と同じ練習。

実際にやってみてでた意見、注意点など
@ クロスサーチの時、斜面を下に行く方がビーコンに近くなるので、ピンポイントと思われた地点より実際は上に埋まっている可能性が高い。
A 急斜面の場合、真上からついてもあたらず、プローブを横からさした方があたるという意見がでた。

11時    スノーマウントをつくる。
       ザック4つ、5人くらいで20分。2人横になれるサイズ。

11時30分 V字メソッドでの掘り出し〜搬送(斜面を下まで)

V字メソッド 4分交代と書いてあるが、ローテーション完了させるため1分交代。
       雪質によると思うが、がんがんほれる。
3人くらいでも、同じようなことはできそう。
いずれにしても、掘り出しでは
・ どこから掘るか(平地で埋没の深さの2倍)
・ どの角度で掘るか(あとで救助しやすいように)
・ 効率的なローテーション
などの計画が大事です。

搬送の手順(要点のみ)  
@ ツエルト、銀マットを敷き、そこに救助者をのせる。ハーネスでロープに連結。
A 膝、腰、肩の上、それぞれ左右合計6箇所と、頭、足2箇所にカラビナなどでアンカーをとり、スリングをクローブヒッチで結ぶ。
B 向かい合うスリングをシートベントでつなげる。
C 縦方向もシートベントでつなげる。(胸の所はV字になる)
D ビレイと別のロープがあれば、6箇所をクローブヒッチで繋ぎ補強
(10年以上前に自分が習った時は、これはなかった。)
E 6箇所に6人がつき、ビレイもしながらおろす。

実際にやってみてでた意見、注意点など
@ 人数も必要で時間もかかる。最終手段
A 段差に気をつけないと救助者は腰など痛める。
B ツエルト、銀マットがぼろぼろになる。もし次にやる時は、ぼろぼろになってもよいものを用意する。

12時30分 昼食

13時    テント撤収

13時30分 野田、植田、佐々木夫妻、樽木、中島、結城帰宅。残り5人

14時    埋没体験
       全身埋まって、プローブでさされる。
       少しの雪でも重くて、寒い。

14時30分 ヒューマンチェーン
・ 手首をつかみ合うことと、持ち上げるとき膝も使うのがポイント。
・ 3人で1人持ち上げるのが限界
・ 平地で無いと無理
・ 夏山でも使えるし、どこでも練習できるから、全員形は知っておくべきだと思う。

15時    再びビーコン
       斜面+平地、複数埋没、チームレスキュー
       残留物とプロービングだけで捜索

16時30分 今回最後の課題
       2回にわけて雪崩発生。浅く埋まった人(そばに残留物)のほぼ真下、深い所にもう1人いる設定。(もちろん救助者には設定内容は教えず)

1人目はわりとすぐに発見。SPにして、近くにもう1人いることもわかる。
それを探す時、トラッカーだとどうしても最初の電波が邪魔する。
リーダーの判断で最初に救助された人を少し離れた安全地帯に運ぶ。
クロスサーチで探すが一番小さい値で1.8くらい。
奥と下に掘りクロスサーチ、プローピングを繰り返すがなかなか近づいてこない。
スパイク、フォルス・マキシマムの現象もおきていて大混乱。
今回最後にして一番時間がかかる。45分以上
深さに対して、大きな課題を残した。

考察
・ どうせ救助するときは掘るので、掘りながらビーコンの数値をさげるというのもありな気がする。
・ 『雪崩リスク軽減の手引き』73ページによると、深い埋没では
@ クロスサーチで細かく動かさず、大きくビーコン操作する(ピンポイントの特定に時間をかけずに区域を決める)
A 区域を決めたらグリッド・プローピングする
ということです。知らなかった。

17時30分 終了

18時    土合駅