赤谷川本谷
2023年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーDS、NK
日程:2023年8月22日〜23日


8/21(月)
19:30、水上駅集合
タクシーで川古温泉へ。
関越交通の営業時間が7-20時のためギリギリの時間でタクシーを事前予約。昔は23時近くでも利用できていたので若干不便になった。
20:00、川古温泉
駐車場でツエルト泊。これが湿度と相まって暑すぎた。虫もいっぱい入ってくるしヒルの恐怖もあるしで不快指数はかなり高い。汗だくで寝苦しい夜だった。 夜は予報通り時々小雨がぱらついた。
8/22(火)晴れ時々曇り、夜から雨
3:30に起床のつもりが朝寝坊で1時間弱ロス。
4:40、川古温泉
昔9月に歩いた時はヒルに合わなかったが、今回は8月。事前情報通り恐ろしいくらいのヒル地獄の林道だった。暗闇の中歩かなくて良かった。虫もいっぱいいるしでもう最悪。上からも下からもヒルがくっついてくる。沢靴のアッパーやジッパーからでも入り込んできて何箇所か噛まれてしまった。恐ろしすぎて歩くことに集中できなかった。人生で初めてヒルに噛まれた。もうこの時期にこの道は一生歩きたくないと思った。
7:10-7:50、渡渉点
沢に入ってようやくヒルの恐怖から解放された。 全身ヒルチェックを済ませていざ赤谷川本谷へ。
8:25、マワットノ下ノセン(下)
渡渉点から平凡な沢を進むとすぐに深い瀞の先にマワットノ下ノセンの頭が見え出す。 1段上がったところから左壁を1Pで登る。下部はヌメリで緊張したが上部の乾いたスラブは快適に登れた。1段上る前からビレイしても良かったかもしれない。
8:50、マワットノ下ノセン(上)
一旦穏やかな河原になる。少し歩いて右に方向転換するとすぐに次のマワットノセンのお出まし。
9:05、マワットノセン(下)
記録では右壁から登るか、右岸ルンゼから巻く記事をよく見たが、どちらから行くかは現地で考えることにしていた。右壁は確かに取り付けば登れそうにも見えるけど明らかにランナウト必至。灌木もなくカムは決められそうにないのでハーケンなどで支点構築していくしかなさそう。チャレンジしてみたい気はしたがこの時点ではまだドウドウセンを登るつもりで来ていたので、余計なタイムロスは避け大人しく右岸ルンゼから巻くことにした。右岸ルンゼは簡単に登れた。ある程度登ると右側が露岩帯からブッシュ帯に変わってくるのでその辺りからルンゼを離れ藪漕ぎでトラバースしマワットノセンの頭付近に歩いて下り立った。うっすら踏跡もあった。
9:30、マワットノセン(上)
マワットノセン上からは暫く巨岩ゴーロ帯約800m。 点在する巨岩の積み重なった迷路のような沢を左右に移動しながら弱点を探しボルダリングで越えていく。右岸側に大体進みやすい道があった。 まだ岩魚が走っていたのには驚きだ。
10:50-11:00、巨岩帯途中で休憩(1080m付近)
12:00-12:20、裏越ノセン(下)
この時点で予定より2h遅れていた。巨岩帯で思った以上に体力を奪われた。 裏越ノセンはまず左岸の草付バンドまでフリーでジグザグに上がり、岩が抉れた広いバンドからロープ2P出す。残置支点は何もなかったのでハーケンと岩角でビレイ。 1P目、狭いバンドを左斜上し高度感のある壁をトラバースしていくと古びた赤いスリングの付いた残置ハーケン2本があったので一旦切る。声は届かないので事前に決めた笛で合図を送る。
2P目、引き続きトラバースを続けてF滝の頭が見えてきたところ辺りからクライムダウン開始。ここはフォローの方が怖い。支点を出来るだけ多く取っておいた。流心を渡って右岸へ移動。殆ど残置支点はなかったがクライムダウンするところだけは残置ハーケンベタ打ちだった。マイクロカムが2箇所決められた。 水流沿いは黒黒として滑りそうだったので止めてロープをたたみカンテ左の凹角を詰めて歩いて沢へ復帰した。
14:00-14:20、裏越ノセン(上)
裏越ノセンを越えるとすぐに4m滝が現れる。 滝の手前の岩盤上で幕営可能。 右壁からバンド沿いにフリーで登ったが部分的に登りづらかったのでハーケンを打ち上からロープを出して確保。 NKは何度か釜に落ちてザックが水で重くなってしまった。
15:10、扇沢出合
ドウドウセンは右岸枝沢の扇沢から巻きに入る。 扇沢を暫く登って二俣を右へ。
少し踏跡あるが途中から消え藪漕ぎ。少しでも薄いところを繋いでトラバース気味に進む。疲労でNKのペースが上がらず間隔が開いて姿を見失いがちになるので途中からコンテでロープを繋ぐことにした。
小さな尾根を越えると対岸のスラブ状岩壁が見えてきてその下が幕営予定の広河原。下降ポイントの目印にできた。
更に下り気味にトラバースを続けているとだんだん日が傾いてきた。結局そのまま藪漕ぎ中に18:30過ぎから暗くなってしまい、パラつく雨で藪は滑りやすくなりガスで視界も悪くなり、急に悪条件が畳み掛けてきた。藪漕ぎ中に日が暮れたのは初めて。しかし状況に反して気持ち的には殆ど焦りは無く、久しぶりに残業だなぁなんて思いながら淡々とこなしていけた。
そんな最中、途中からロープが全然引けなくなった。NKが藪漕ぎに苦戦しているのかなと思い暫く待ったが一向に動かない。何かあったのかもしれないと思い、灌木にロープをfixし荷物を残置してロープ伝いに様子を見に戻った。NK発見。藪漕ぎ中に段差のあるところを数m滑り落ち宙ぶらりん状態になって身動きが取れなくなっていたことが判明。合わせて滑落の際にヘッドランプ落としてしまい暗闇でどうしようもなくなってしまったとのこと。急いでまず荷揚げを行いあとはロープを引っ張って空身でよじ登って貰った。とりあえず怪我が無くて良かった。藪漕ぎ中のコンテはロープが邪魔で進みづらくなるが今回は繋いでおいて良かった。
ヘッ電を落としたのはかなり痛いと思ったが、不幸中の幸いでNKはモバイルバッテリー代わりの懐中電灯を予備で持っていた。これでなんとかまた行動再開でき、最後まで歩きだけで沢まで下りることができた。
21:20、C1
木がないので焚き火はできないが核心部を抜けた安心感を満喫できる快適な河原。
晩飯は久しぶりに米炊きでカレー。たらふく食べた。
0:00、就寝

8/23(水)、霧
5:00、起床
朝はジャージャー麺。
昨晩の下降箇所とドウドウセン出口を見学。
7:00、出発
すぐに8m滝。最初は右岸ヘツって進むが滝付近が悪そうに見えた。1P出して右岸草付から小さく巻く。
8:00、8m滝上
程なくしてゴルジュ帯。基本的にはゴルジュ内を進めたが、最後の方で1回だけゴルジュを右岸から巻いて懸垂で沢に復帰した。
10:00-10:20、1447mあたり
霧と小雨がぱらつく。
下流部とは打って変わって穏やかな源頭の雰囲気。両岸草原の開けた空間にナメが続く。晴れたらさぞ気持ち良いのだろう。
13:50、登山道
最後まで沢筋を詰めて沢地形が消失してから笹の藪こぎスタート。オジカ沢の頭まで藪漕ぎする気にはなれず左手に稜線は見えているのでそちらを目掛けてトラバース。
14:20-14:45、オジカ沢避難小屋
かまぼこ型の小屋内で休憩。霧雨と風で少し寒いので雨具を着る。股ズレが痛かったので応急処置。
16:50、天神平ロープウェイ
ロープウェイの営業終了は17時。今までのペースだと間に合わないので一縷の望みに掛け先にダッシュで天神平へ向かう。ロープウェイ従業員に少し待ってもらえないか交渉してみたが、営業時間外は非常運転になるため28000円かかると言われ断念。流石に高すぎる。田尻尾根から下山を選択。
20:30、土合駅
なんとか最終電車に間に合って当日中に帰宅できた。
沢の後で風呂に入れず帰宅はなかなか辛かった。

長年行きたいと思っていたルートを歩くことが出来たことは素直に嬉しいが、反省の多い山行だったので次に活かしたい。ドウドウセンを登れなかったことや2日目視界が悪かったのが心残りなので天気が良い日にまた再訪したい。

追記:
NK感想(反省点)
・47〜48年前に登ったことがあったのでなんとか行けるだろうとの安易な気持で参加したこと。
・20代の体力と70代の体力の差を過小評価していたこと。
・DSには2度ほど藪の中を引っ張り上げられて助かったが、自身の力で脱出できなかったことは情けない思いが残った。
・今回登りながら前回辿った箇所を思い出したのは数か所でほとんど忘れている。その分新鮮ではあったが・・
・沢は年々変化するので昔の記憶だけでの判断はNG、自分自身で現在の状況を把握すること。
・結果として二日間の残業山行になってしまったこと。
・良かった点は、藪漕ぎ中ロープをコンテでつないだことや懐中電灯の予備を持っていたこと。