葛根田川〜大深沢
2022年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーDS・NK・NN
期間:2022年8月6日〜8日


山行タイム:
8/6(土)、滝ノ上園地休憩舎(0:40)入渓点(2:10)大石沢出合(1:50)滝ノ又沢出合(1:00)920m広河原C1
8/7(日)、C1(2:50)八瀬森山荘(1:50)大深沢出合(1:10)十字峡(3:30)大深山荘C2
8/8(月)、C2(2:20)松川温泉

元々は8/6朝発の計画だったが、8/7午後以降暫く雨予報だったため、急遽前夜発に切り替え行動計画全体を繰り上げて好天を最大限活かすようにした。

8/5(金)、晴れ
20:48、雫石駅
新幹線で約2h。事前予約のタクシーに乗車。運転手の話では8/3はかなりの大水だったそう。気象庁HPを確認したら葛根田のその日の降水量は79mm。3日も経てば平水に戻るだろうと軽く聞き流す。
21:30、滝ノ上園地休憩舎(断水中のため閉鎖)
中で泊まる気満々だったのでショック。おかげで水もトイレも屋根もない。電波も入らない。仕方がないので駐車場でツェルトを張り軽く飲んで明日に備える。
23:00、就寝

8/6(土)、晴れ
4:30、起床
5:05、滝ノ上園地休憩舎
地熱発電の管が通る車道を行く。 15分程歩くと車止めゲート。車道から林道に入り一番最初の右カーブ手前から葛根田川が近くに見えるのでまっすぐ下りた。
5:45-6:00、入渓地点
身支度を済ませ、いざ葛根田川へ。水は透き通っており水量も問題ない。沢というより完全に川の様相。右に左に渡渉を繰り返しながら歩きやすい場所を選んで進む。NNは早速全身水に浸かって楽しんでいた。
6:30、明通沢出合
下降でよく記録を見る沢。 次の698mの出合で支流からドクロの滝が流れ落ちる。
6:50-7:00、700m付近の沢出合
釣り師2人を発見。 この先、葛根田川のハイライト、お函に突入。青空の下、白岩の広いゴルジュ帯にエメラルドグリーンの水を湛え、素晴らしい自然の造形美を生み出している。 基本的には左岸を歩くことが多かった。要所要所に残置ロープがあり問題となるところはなかったが、増水していたら通過は厳しいだろう。
8:20-8:30、大石沢出合
当初のビバーク予定地。今回はスルーして滝ノ又沢出合を目指す。ここで本流の水量がだいぶ落ち着く。
9:00、沼ノ沢出合
支流の滝が大きい。この先もそうだったが支流の滝がいちいち立派。葛根田川の引き立て役になっている。先日の大雨の跡が色濃く残る。目線より上の草木が一様に折れ曲がっている。4m近く増水したことが窺える。
9:10、中ノ沢出合
NNの知人3人パーティに出会う。前日から入山したがまだ増水が引いておらず早々にビバークしたそう。
9:30-9:55、葛根田大滝
2つの釜を湛える2段の滝。滝の落ち口まで遊びに行く。2段目の滝が登攀不可なので下の釜の左岸から巻く。踏み跡明瞭で残置ロープまであった。 大滝を過ぎればこの先は平凡な河原歩き。とは言え支流にかかる滝は立派で飽きさせない。
10:45-12:45、滝ノ又沢出合
大休止。出発から休憩込みで6h弱、予定のコースタイム通り来れた。本流左岸一段上に焚き火跡の残るビバーク適地を見つける。ここで泊まる予定だったが流石に時間が早すぎる。この先の天候を考えると少しでも先に進めておきたい。 相談の結果、地形図から910-920m付近の広河原と930mの二俣あたりが泊まれそうだったのでそこまで進めることにした。行ってダメなら八瀬森山荘まで登ってしまおうということになった。 この先岩魚が減りそうだったので先にNKは滝ノ又沢で釣りタイム。釣果は岩魚3匹。感謝。 釣りの間、散歩で大白森に抜ける沢の二俣まで行ってみたがビバーク適地はなかった。
13:45、920m付近の広河原C1
910-920mの間はビバーク適地多数。930mの二俣まで足を伸ばして探してみたが、左俣の右岸に1箇所見つけるもジメジメして微妙だったので戻ることにした。 戻ったビバーク地は貸切で最高の一言。薪もいっぱいあり盛大な焚火ができる。 岩魚は2匹を焚火で焼き、1匹はソテーで頂いた。美味い、美味すぎる。自然の恵みに感謝。 晩飯は久しぶりに米炊きをして茄子チキンカレー。胡瓜のマッシュポテトも美味。焼物は安定のベーコン。焚火の炎を前にまったりと至福の時を過ごす。
20:00、就寝

8/7(日)、午前小雨のち曇り、午後晴れのち曇り
4:30、起床
空は思いの外曇っていて雨は時間の問題かと思われた。焚火を起こし朝食を頂く。
6:05、C1出発
早速微妙に雨がぱらつき始める。
6:10、930m二俣
二俣で一度ルートミスをしかける。前日ここまで偵察に来た時からトポと地形図の二俣の場所を1つ手前と勘違いしており、最初迷わず左俣に入ってしまった。早々に指摘を受け右俣へ復帰し事なきを得る。
6:50-7:00、15m滝下
ハーネスを装着。滝中央の右上バンドから水線を直登出来そうにも見えるが上部がかなりリスキーなので大人しく右岸から巻くラインを探す。 因みにこの滝から僅かに戻った箇所に入口の小さな沢が右岸から入っている。トポでいう1050m付近の奥の二俣。ここを入ると同じく10m滝にぶつかる。左から登れそうだが、ここを登ると最短距離で湿原に出れる代わりに詰めで藪漕ぎを強いられるそう。今回はパスした。
8:00、15m滝上(GPS1040m付近)
15m滝落ち口付近の右岸の踏み跡を一段登り、そこからロープを出す。泥壁とブッシュ帯を30m巻き上がって、立木を支点に懸垂10mで沢床に復帰する。 葛根田川の核心ピッチだったと思う。色々偵察していたら時間を食ってしまった。 巻き終わったらいつの間にか雨は止んでいた。
8:10、10m2段の滝下(GPS1060m付近)
もうロープを出すところはないかと思ったらすぐにまた10m滝が現れた。微妙に数手悪そうだったので念のためロープを出して右壁を登った。
8:30、10m2段の滝上
この先は穏やかなナメの中、最後まで沢通しにほぼ藪漕ぎなしで幻想的な湿原に出た。咲き誇るお花畑に癒されながら目の前の八瀬森山荘を目指す。 NN知人パーティと再び遭遇。昨日はルートを誤って2hの藪漕ぎを強いられたらしい。
9:05-9:30、八瀬森山荘
立派な2階建ての避難小屋だった。稜線で天気予報を確認したかったが、電波は入らない。 登山道を少し下って湿原に戻り大深沢方面へ下降していく。 沢に入るとかなり上流にも関わらず魚影が濃い。岩魚が群れを成している。もしかしたら釣り師が放流しているのかもしれない。
10:20-10:35、関東沢出合
この先10分程で、釜を持った4m滝。クライムダウン出来なくもないが念のため右岸懸垂。残置スリングを使用。実質ここが魚止の滝だろう。
11:35-13:25、大深沢出合
大休止。ビバーク適地はいくつもあった。いかにも釣れそうな沢の様相なのでNKは釣りタイム。6匹釣ったが内3匹は小ぶりのためリリース。青空で暑いくらいに晴れてきた。
14:00、ナイアガラの滝下
岩が赤く染まり始めたらまもなくナイアガラの滝が見えてくる。大深沢のハイライト。NNシャワークライミング御所望で滝中央の残置ロープが垂れているラインをロープ1P出して登る。比較的濡れない登れそうなラインは他にも左側にあった。
14:30、ナイアガラの滝上
滝の先は非常に綺麗なナメが何十mも続いておりヒタヒタ進んでいく。
14:35、十字峡
計画的には宿泊予定地。仮戸沢の左岸にビニールシートなど色々な残置物が残されたビバーク適地を見つけたが、如何せん薪が少ない。この先天気も怪しいし盛大な焚火ができないなら釣りも済ませたことだし、小屋までもうひと頑張りしようということで大深山荘を目指す。 この先もナメと登れる小滝の連続。もう美しさが渋滞している。葛根田川より大深沢の方が更にクオリティ高い美渓な気がした。 30分ほど進むと1040m付近の右岸から立派な50m?2段大滝がかかる。ここにあるから名前がないだけで、奥多摩とかにあれば絶対有名な滝になるのになんて不遇な滝なんだろう。
15:40-15:55、1130m出合
まだまだナメが続くが、徐々に傾斜が増し始め源頭の様相になりつつあった。
17:05-17:20、1380m付近
まだ本流の水線ははっきり続いていたが、最後はどこへ行っても藪漕ぎらしいので最短距離で登山道に出るようにルートを決めた。本流を離れ右岸の枝沢から距離400mの藪漕ぎ大会スタート。背丈を超える屈強な根曲がり竹と1h大乱闘。藪漕ぎに入った途端NNはすっかり魂が抜けてしまいペースダウン。
18:25、1410m付近登山道
なんとか暗くなる前に抜けれた。午後から雨予報だったが結局雨には降られず曇り。夕方はブヨが凄い。 トポでは十字峡?大深山荘2hとあるが、地図を見る限りいやいや3hはかかるだろうと踏んでいたが、いやはや4hもかかってしまった。本流沿いに進んだ場合どれくらいかかったか気になるが知る由もない。
18:35、大深山荘C2
2003年に改築された非常に綺麗な2階建ての小屋。管理が行き届いており中にペーパー付きのトイレや布団まである。貸切避難小屋最高。 晩飯は米を炊いて豚の角煮丼&岩魚ソテー3匹&胡瓜と海苔のたらこバター和え。美味い、美味すぎる。NNはいつもの抜け殻状態に陥ったため早々に就寝。 小屋は電波が入る。水場は登山道を数分下った湿原の中にある。水量豊富。
21:00、就寝
夜中霧雨が降り予報通り風が出てきた。

8/8(月)、曇り
5:00、起床
NNは復活したようだ。良かった。
6:55、C2出発
今日は下山だけなのでバスに合わせて遅立ち。山頂はガスって展望0なのでピークは踏まず巻道から下りることにした。 水場あたりは湿原にコバイケイソウなどの花が一面に咲き乱れている。シーズンは7月下旬あたりだそう。
7:50-8:05、巻道分岐
途中、水場あり。登山道は刈り払いされているがぬかるんでいて滑りやすい。
8:50-9:00、丸森川出合
水場。
9:40、松川温泉峡雲荘
入浴&大広間でランチ。シャワーが無くて不便だったが露天風呂は気持ち良かった。
12:59、松川温泉(バス)
八幡平マウンテンホテルで乗換。
15:03-16:50、盛岡駅
駅ビルの白龍でじゃじゃ麺を食べお土産を購入して満員の新幹線で帰京。

結果的には天気にも恵まれ全ての歯車が噛み合った山行だった。葛根田川も大深沢も東北随一の銘渓という名に恥じぬ素晴らしい沢。お楽しみ要素満載で最高の沢旅だった。同行してくれたメンバーには感謝しかない。ありがとうございました。


ドクロの滝


お函


お函


葛根田大滝


滝ノ又沢で釣り


初日テンバ


2日目最初の核心、15m滝


ナイアガラの滝全景


ナイアガラの滝登攀中


大深沢ナメ


大深山荘で岩魚ソテー


下山途中の湿原、お花畑