大雪山系 旭岳〜トムラウシ山〜十勝岳縦走
2022年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーDS
期間:令和4年6月25日〜28日


山行タイム:
6/25(土):旭岳ロープウェイ姿見駅(1:20)旭岳(2:00)白雲岳避難小屋(2:30)忠別岳(1:05)忠別岳避難小屋C1
6/26(日):C1(3:55)トムラウシ山(4:35)双子池(1:55)オプタテシケ山(1:45)美瑛富士避難小屋C2
6/27(月):C2美瑛富士避難小屋C3(停滞)
6/28(火):C3(1:25)美瑛岳(1:35)十勝岳(2:05)十勝岳温泉

大雪の縦走は実は10年前くらいから興味を持ち温めていた計画だった。この手の山行はいつでも行けると思っているとなかなか行かないもの。 今回はたまたま家族と避暑も兼ねた札幌体験移住で数週間の滞在が決まったため、ここしかない!と思い、期間中になんとか山行をねじ込ませていただいた。感謝。
6月下旬頃の北海道といえば梅雨知らずでカラッとした晴天が続く、、そんな通説を信じてこの時期に計画を立てたのにあら不思議。本州は異例の早さで梅雨明け、おかげで北海道に梅雨前線の雨雲が全部来てしまった。これも地球温暖化の影響だろうか。
数日前まで天候が不安定で絶望的な予報だったが、結局、直前の予報では山行期間の土日はなんとか持ちそうで月火は雨時々曇。これを受け、前2日間で核心部を抜ける行動計画に変更することにした。 元々は旭岳?十勝岳まで、札幌朝発で白雲・南沼・美瑛の3泊4日の計画だったが、出発を早め前夜発で旭川まで入り、好天期間を最大限活かせるようにヒサゴ・美瑛の2泊3日(予備1日)で組み直した。この山行の成功の鍵は忠別?オプタテシケ間を如何にスムーズに抜けるかがポイントと考えていた。 総距離、約62km。トレランのような計画になってしまったが、これで行けなかったらタクシーの出費覚悟で途中からエスケープするしかない。

6/25(土)、霧のち曇のち晴
7:11、旭川駅
前夜は忠別川の畔で仮眠。蛙の鳴き声が凄かった。 始発バス(いで湯号)で移動。今週末はあさひかわバス無料DAYということでタダで乗車できた。
8:51-9:00旭岳ロープウェイ(片道2000円)。 20分間隔で出ている。
9:10-9:15、姿見駅
霧で視界はあまり良くない。 混雑しているので旭岳石室まで行って登り支度をする。姿見ノ池はまだ殆ど雪の下。例年よりは残雪は少ないらしい。 序盤から強風(15-20m/s)で身体が煽られながらの登りでいきなり北海道の洗礼を浴びる。
10:35-10:45、旭岳
せっかくの百名山ピークだが濃霧で残念ながら展望なし。いつか再訪しよう。身体もしっとり濡れてきたので秀岳荘で買った新品雨具着用。こんな天気でも旭岳往復の登山者は大勢いた。 裏旭キャンプ場までは暫く緩斜面の雪渓下り。キャンプ地の一部はまだ雪の下だった。
11:45、北海岳
花ノ沢源頭あたりは残雪で一面覆われておりルートが分かりづらい。視界も無かったので白雲分岐手前まで時々GPSで場所を確認しながら進む。
12:45-12:55、白雲岳避難小屋
今回のコース中、唯一の有人小屋。本日から営業開始。数年前に建て替えられたばかりの綺麗な小屋だ。テン場にはフードロッカーがあった。
ここから先は大雪高原温泉から登ってきた数パーティとすれ違った他、高根ヶ原分岐から先は忠別まで誰にも会わなかった。 因みに三笠新道はこの時期限定のルート。例年7月上旬にはヒグマ出没で通行止めになるらしい。
天気は高曇りしているが、高度を落とすにつれ高根ヶ原分岐あたりから視界は開けてきた。 下り基調の平坦な山稜が続きラクなのだが徐々に疲労が出てきた。前日までの雨で登山道がところどころ川状態になっていて少々煩わしい。 忠別沼も殆ど雪で埋まっていた。一応水は確保できそうに見える。
15:25-15:35、忠別岳
展望良く良い山。意外と個性的な山容。相変わらず風は強いが太陽が出てきて気分上々。
16:40、忠別岳避難小屋
分岐からハイマツ帯を抜けると雪渓下り。 3人先客あり。 小屋は2階建。だいぶ古そう。トイレはぼっとんでゴミが汚い。 水場は小屋の下方の踏み跡を辿ると雪渓からジャブジャブ流れていた。
CT11:15、21.3km。明日のことを考えたら新築のヒサゴ沼避難小屋まで進めたかったが、疲れたので無理せず今日はここに。(あとから思えば翌日キツかったのでもう少し頑張れば良かったかも。)
19:00、就寝
概ね晴れているがなおも強風。寒くないのが救い。

6/26(日)、晴れ時々曇のち霧、強風
3:40、起床
朝焼けが綺麗だった。
4:30、C1出発
稜線目掛けて最短で雪渓を直登してみたが藪に阻まれたので大人しく登山道に進む。
5:10、五色岳
6:00、化雲岳分岐手前
木道をスタスタ歩いていたら行手にヒグマ3頭発見。親熊1頭と子熊2頭。早めに気づけて良かった。ホイホイ叫んで手を叩いてこちらの存在を知らせたら化雲岳山頂方面の登山道へ逃げていった。何故そっちに、、と思ったがしょうがない。化雲岳山頂は諦めて雪渓通しに巻道を利用。 全体を通して言えることだが雪渓から登山道に復帰するポイントを見つけるのが少し分かりづらい。
6:30、ヒサゴ沼分岐
日本庭園付近は木道やロープが張られている。点在する沼と高山植物で素晴らしい景観だ。振り返ればヒサゴ沼が光り輝いて眩しい。遠くには石狩岳やニペソツ山も望める。散歩してる気分で気持ちが良い。
ロックガーデンの巨岩帯はペンキを頼りに。 北沼はコバルトブルーの綺麗な沼。水を確保できる。沼なのに強風で白波が立って水飛沫の中に虹をたたえていた。
8:25-8:35、トムラウシ山
今山行の中間地点。旭岳?十勝岳までのパノラマビューは最高の一言だが、冬山のような爆風で立っているのがやっと。今山行ベストピークだった。
山頂には先客1人。トムラウシ温泉からの日帰り往復のようだ。以後美瑛富士避難小屋まで誰とも会わなかった。
8:50、南沼キャンプ指定地
携帯トイレブースが2ヶ所ある。風は若干避けられる程度だが雰囲気の良いテン場だった。テン場に近い南沼の水場はあまり綺麗ではないという噂を聞いていたので給水はしなかった。

9:55、三川台手前の登山道の曲がり角で鹿4頭と間近に出くわす。声をあげたらこちらを見て一目散に逃げていった。熊じゃなくて良かった。 三川台までお花畑が綺麗。 この辺りは道が笹で覆われているところが多く、足の間隔と笹の雰囲気で進む。
10:00-10:10、三川台
ここからコスマヌプリあたりまでは展望も乏しく単調。また歩きたいとは思わなかった。
11:10-11:20、ツリガネ山
ハイマツうるさい。コバエもうるさい。 地図上に水場マークがあったが登山道上では確保不可。下の方に雪渓はあったので結構下ればとれるかもしれないが無いものと思って行動した方がいい。 既に疲労困憊になりつつある。
12:30-12:40、コスマヌプリ
目の前に聳えるオプタテシケ山が威圧的。あれを今日中に越えなくては、、と思うも心折れそうになる。
13:40-14:10、双子池キャンプ指定地
今山行最低鞍部。コルは広いが殆ど笹藪でテント適地は意外と少ない。 明日以降天気が良ければここで泊まるのだが、生憎明日は雨予報。明後日も今ひとつな天気。今日は風も強くテント倒壊の心配もある。笹が多くていかにも熊が出そうな雰囲気。テン場の水はけ環境も良くない。テント停滞と小屋停滞は格段に生活環境が違う。等々考えた結果、体力はもう限界近いがここは頑張りどころ。オプタテシケ側の雪渓下で水補給しながら身体に鞭打って気合いで進むことに決めた。 メンタルが弱っているのもありオプタテシケ山が異様に大きく感じる。標高差600mなんて慣れている筈なのに北海道だと相対的にやたらデカく見える。
14:55、1650m付近。
残雪を200mアップで登山道復帰。思ったより長かった。視界がないと分かりづらいと思う。そこそこ急なので途中から軽アイゼンを履いた。アイゼンは歩荷に終わるかと思っていたが大活躍。ここの下りは雪の状態次第ではツボ足は厳しいだろう。 歩いてる時はどれが双子池なのか分からなかったが、振り返って上から見ると双子池という名前の意味が分かった。
15:15-15:20、1800m
休むつもりはなかったが超疲れたので一息。 もう疲れてペースが上がらない。
16:00、オプタテシケ山の直下あたりから霧。 完全に登りはバテた。自分を鼓舞しながらなんとか歩く。
16:10、オプタテシケ山
一足遅く展望はなし。時間が押しているのでそのまま進む。
17:05、べベツ岳
石垣山からの下りで夕焼けに照らされた美瑛富士や十勝岳から富良野岳の山稜が一望できて癒された。下ホロが富士山のように独立して見える。
17:55、美瑛富士避難小屋C2
明日は平日で天気も悪いし悠々自適に貸切だ!と思って小屋を開けたら狭い小屋に長期泊の撮影隊が7人もいた。残念すぎる。8/22にBS放送予定のにっぽん百名山という番組の取材らしい。 水は分岐付近の雪渓から登山道沿に流れる小川から汲める。 小屋内は圏外だが外は電波が入る。大雪は意外にも電波が拾えそうなポイントでは大体電波が入る。お陰で気象情報はこまめに確認できた。
CT19:30、27.9km。こんなに1日で山を歩いたのは初めてかもしれない。

6/27(月)、曇のち雨
今日は計画的停滞。しかし3日分を2日間で歩いた代償は大きい。身体中バキバキで疲労困憊。メルカリで買った中古登山靴のソールは片方踵が剥がれる始末。ショック。 ゆっくり起床して外を見ると天気は予報ほど悪くない。午前中は雲の切間に時々青空が見える。その後は12時から数時間土砂降り。夕方には止んだがガスで濡れ濡れ。 外で明日の天気予報を確認するもいまいち。今日午前中に降りれたな、という考えも過ぎったが結果論か。
昼頃雨の中、更に歩荷隊2人と登山客1人が上がってきた。大勢いる小屋内を見て1人は結局外でナキウサギが鳴く中テント泊。 地図を眺めたり写真を見返したり記録を書いたり昼寝したり外を散歩したり、のんびり疲労回復に努めていたらあっという間に1日が過ぎていった。

6/28(火)、曇りのち晴れ
3:15、起床
雨は降っていないがガスが濃いのでしっかり明るくなるのを待つ。
4:35、C2出発
美瑛富士分岐までのトラバースで少し雪渓が出てきたため念のため軽アイゼンを履く。 それにしても今日は身体が軽い。超回復を感じる。
5:50、美瑛岳分岐
6:00-6:10、美瑛岳
ガスで展望ゼロは明白だったが近いので一応ピークハントしてみた。またいつか。
6:15、分岐(地図なし)
地図にないペンキ付きの踏み跡が稜線上にあったのでショートカットでそちらを利用。 火山の様相を呈する登山道に徐々に変わっていく。火山独特の黒いポロポロした石粒の斜面で足とられやすく歩きづらい。 しんとくコース分岐の道標を過ぎればもう山頂は近い。
7:45-8:25、十勝岳
雨にも負けず風にも負けずガスにも負けず、なんとかここまで辿り着けて一安心。 山頂は生憎のガスだが、登山者は急増し熊の危険もかなり軽減された。 山頂は太陽が時々見えるくらいの高曇りだったので暫しガスが切れるのを待ってみたが、望み叶わず。この辺りは天気の良い時に再訪したい。 火山ガスで咳が出る。
8:55-9:00、上ホロカメトック避難小屋
今年建替で使えないはずだったがまだ中に入れテントも張れる。小屋の下方で雪渓から水もとれそう。 ここまで下りるとだいぶ晴れて視界も開けてきたので変化のある風景が面白くなってきた。
9:10-9:20、上ホロカメトック山
この辺りの岩場は道民が冬の利尻に行くステップアップとして冬に登られているらしい。観察してみたが結構リスク高そうなエリアだと感じた。因みに夫婦岩と化物岩は奇岩百景らしい。
9:30-9:35、上富良野岳
長かった縦走もいよいよラストピーク。荒々しい火口の谷の景観が素晴らしい。 十勝岳温泉から続々と人が登ってくる。
10:10-10:20、分岐
余分な水を捨てたり雨具脱いでいたら餌を咥えた狐と遭遇。北海道は本当に色々な動物によく遭遇する。
11:00、十勝岳温泉凌雲閣(ランチ&入浴1650円)
たんぽぽの群生に迎えられ下山。 露天風呂は上ホロの展望良かった。

CT7:50、13.1km。
4日で約12万歩も歩いていたのに体重変わっていなくて少し残念。

ようやく大雪山系を歩けて良かった。行動計画に余裕は無かったが十分楽しむことができた。次回この山域に来る時は是非沢登りで登ってみたい。

<備忘録>
エキノコックス対策の浄水器はソーヤーミニを使用。ペットボトルに付けられる形状でいろはすは装着可能だったが南アルプスの天然水はダメだった。事前に装着確認が必要。スーパーデリオスも使いやすそう。
山道具は秀岳荘北大店が品揃え豊富で便利。
ガス缶は避難小屋泊ということもあり3泊で250g以内で足りた。
熊スプレーは旭川駅近くのアサヒカワライドでレンタルできる。札幌駅ではDOORSという個人っぽいサイトでレンタルできる。
公共交通機関で移動の場合、札幌〜旭川間は特急電車の自由席往復割引きっぷ(Sきっぷ)5550円がお得。
山の情報は大雪山国立公園連絡協議会HP内の登山道情報が非常に充実しており参考になった。


忠別岳山頂


忠別岳遠景


化雲岳ヒグマ


ヒサゴ沼


日本庭園


ロックガーデン


トムラウシ山&北沼


トムラウシ山から十勝岳連峰


三川台手前のお花畑


オプタテシケ山


オプタテシケ山の雪渓登り


美瑛富士避難小屋周辺


十勝岳連峰の火山帯