北岳バットレス dガリー大滝-下部フランケ-dガリー奥壁
2021年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーDS、YK
期間:2021年7月18〜19日

山行タイム:
7/18(日)、広河原(1:50)白根御池小屋C1
7/19(月)、C1(1:40)dガリー大滝(0:55)下部フランケ(2:40)dガリー奥壁(2:10)登攀終了(0:20)北岳(1:20)C1(1:25)広河原

7/18(日)、晴れ
7:30、八王子集合
10:05、芦安駐車場発(バス)
11:00-11:10、広河原山荘(1529m)
梅雨明け後初の週末で結構登山客がいる。小屋の水場で水を汲んでから出発。小屋のポスター掲示によると広河原山荘は来年インフォメーションセンター付近に建替予定らしい。
12:15-12:25、第一ベンチと第二ベンチの中間
いつもの休憩ポイント。日陰は微風が涼しいが登るとやはり暑い。甲府は37℃の猛暑日だとか。
13:10、白根御池小屋
まだ北岳周辺の小屋だけだが、遂に今シーズンからテント泊まで事前予約制のオンライン決済に変わっていた。(天気で山行中止したら払戻してくれるのだろうか...)他にもコロナの影響で前回来た時とは色々違う様式に変わっていた。
昼過ぎから山の上はガスがかかる。今日はアプローチだけなので早々にお酒を飲みまったり過ごし明日に備える。
18:00、就寝

7/19(月)、晴れ
2:30、起床
3:30、白根御池小屋発
3:50、大樺沢二俣
4:25、bガリー出合
通称バットレス沢。沢の入口にボルダー岩の目印があるので分かりやすい。昔、第4尾根を登る際bガリー大滝のアプローチで登った。
4:30、cガリー出合
陽が出て北岳バットレスがモルゲンロートに包まれて美しい。水流のあるcガリーを飛石で渡り、隣の小さなガレ沢から詰める(もしかしてこれがdガリー?)。詰めていくと1回巨岩に行手を阻まれるが左から簡単に巻ける。
ネットの記録を見ていると、cガリー右岸からcガリーとdガリーの中間尾根が1番利用されていそうだったので踏み跡を探したが、どうも尾根上は薮っぽくて見つけられなかった。しかし目的のdガリー大滝は沢の出合から既に見えているので特に拘らずガレ沢を進む。
dガリー内の歩行箇所に雪渓なし。梅雨明け早々で直近の記録が見られなかったため念のため軽アイゼンを持ってきたが結局歩荷になってしまった。
5:10-5:45、dガリー大滝取り付き
dガリーは落石が集中しやすいので先行パーティがいれば、同じ取り付きスタートの第5尾根支稜から取り付こうと思っていたが、この日は平日とあって貸切。予定通りdガリー大滝を登る。
50mロープいっぱいにV級程度のクライミング2Pこなした後は傾斜も落ちてくるのでdガリー内をコンテで登る。
最後dガリーから横断バンドに上がるところで、急に頭上でブンブンと音が聞こえ、蜂でもいるのかと警戒して見上げるとそこには鹿の死骸が...思わず声を上げてダッシュで下部フランケ取り付きに逃げる。どうも昔から動物の死骸は苦手。
6:40、下部フランケ取り付き

〜下部フランケ〜
1P目、5.10a、20m。スラブ〜バンドを右へ。
取り付きにはスリング付きのビレイ用支点あり。最初YKリードで登り始めるが、出だしのスラブの立ち込みで苦戦し、やむ無くリード交代。以降、奇数ピッチDS、偶数ピッチYKのツルベ登り。ここはスラブ核心、抜ければバンドは安心。次のピッチも繋げることも出来そうだが、ロープが屈曲するのでトポ通り切る。
セカンドビレイ中にアクシデント発生。何やら背中が濡れてきた。まさか…!?とは思ったが、やはりプラティパスが破けて水漏れしていた。まだ先は長いのにいきなり水無しは辛い…替えの容器はないのでできる限りガブ飲みしてお腹に貯水した。
2P目、W、15m。凹角。
ステミングでジリジリ登って左に抜けた。
3P目、W+、20m。V字凹角。
右壁のクラックにハーケンが連打されている。2P目と似たような感じ。
4P目、W+、20m。V字凹角〜ハング下を左へ。
本来の4P目終了点手前で短めに切る。
5P目、W+、25m。カンテ状のクラックを左上。
途中のビレイポイントらしき箇所を過ぎて更に直上し、dガリーへの横断バンドを探しながら登る。ここまで来るとdガリー奥壁の全景が視界に入ってくる。バンド候補を2つくらい見つけ、ハーケン2本リングボルト1本カム1個で支点を作る。トポでいう正規の4P目終了点なのかは不明。
6P目、V、40m。草付きバンドをトラバースでdガリーへ。
ランニングはあまり取れないが記録で見るほどそこまで難しいトラバースではなかった。
7P目、V、40m。dガリーを詰める。
ホールドも豊富で傾斜もそこまでないのでランニングを取りながらコンテで登る。
9:20-9:40、dガリー奥壁取り付き
座って休めるテラスで小休止。灌木でセルフビレイ。
ガスが湧いてきて暑くも寒くもなく快適な気温。おかげで水の消費が少なくて助かる。

〜dガリー奥壁〜
1P目、X+、40m。3段ハングをクラック沿いに乗り越し、続くスラブのクラック沿いに登る。
ここはトポでいうdガリー奥壁の核心ピッチ。ハング帯はホールド豊富でボルダーチックに豪快に越えられて面白い。直線的だったのでトポ2P目の真ん中まで登りカムとハーケン2本でビレイ。
2P目、X、20m。スラブに走るクラック。
正規の2P目で切る。ハンドサイズでクラック内のホールドは豊富。久しぶりのフットジャムは痛かった。
3P目、W、40m。赤茶けたスラブを左上。
全体を通してこのピッチが1番難しかった。トポのW級20mはきっと嘘。登りながらピッチの区切りとライン取りを間違えたかと思ったが、一応ピンは続いていたので多分ラインは合っているはず。
1つミスは、簡単なショートピッチのつもりで進んでいたので登り始める前にギアをMAXで受け取らなかったこと。最後の方はギア不足になってしまい節約しながらランニングを取る羽目に。絶対に落ちられない状況を自ら作ってしまったことは反省。
逆層のツルツルスラブの中、細かいスタンスを見つけてジリジリ登っていく。カムを決めれる場所はない。スラブがハング帯で行き詰まるところから左上していく。この辺りは腐りきったお助け紐のついた古びたハーケンや腐ったスリングに抜けたリングボルトがぶら下がっていたりと支点の状態は悪い。ただピンの間隔は短いので昔のエイド用なのだろうか。もしかしたらトポのビレイポイントはピンが抜けてなくなってしまったのかもしれない。
4P目、W+、30m。緩傾斜のオフウィズス/チムニー〜城塞ハング正面の左上したチムニー。
このピッチは2010年崩壊後暫くしてから第4尾根を登った時と同ルート。ホールド、支点共にたくさんあり難なく突破。
dガリー奥壁はハング、クラック、スラブ、チムニーと変化に富んだ素晴らしいルートだった。
11:50-12:10、dガリー奥壁終了
靴脱ぎ場で登攀終了。登攀具を解きアプローチシューズに履き替える。
山頂までの踏み跡周辺には高山植物が咲き乱れていた。一面に広がるキタダケソウやミヤマキンバイなどのお花畑には思わず足を止めて写真撮影。登攀の御褒美に癒される。
12:25、登山道
12:30-12:50、北岳(3193m)
看板が少し新しくなったような。以前登った時より標高が1m上がっている。
14:10-14:40、白根御池小屋
北岳肩の小屋経由で駆け下りてテント撤収。なにやら山小屋は救急騒ぎでバタついていた。水がうまい。
16:05、広河原下山
翌日は筋肉痛確定。16:40発の最終バスのつもりだったがタイミング良く乗合タクシーに便乗。
芦安駐車場の日帰り入浴はやってなかったので竜王ラドン温泉に向かった。
ここ数年計画立てる度、雨に悩まされ山行中止や取り付き敗退を余儀なくされ、なかなかチャンスを掴むことができなかった北岳バットレス。漸く登れて素直に嬉しい。ありがとうございました。北岳バットレスは崩壊が危険かなとは思いつつも、次行く機会があればピラミッドフェース〜第4尾根〜中央稜を登ってみたい。


初日の広河原から北岳バットレスと大樺沢


bガリー


cガリー


dガリーからモルゲンロートに包まれたバットレス


登攀ルート全景


dガリー大滝取り付き


下部フランケ1P目


下部フランケ3P目


下部フランケ4P目


下部フランケ6P目


dガリー奥壁1P目


dガリー奥壁2P目


dガリー奥壁3P目


dガリー奥壁4P目


お花畑