ドロミテ
2018年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーYK, NN, SM, SS, 他1
期間:2018年9月8日〜16日

2015年に登ったドロミテ の話をしたところ、興味を示した会員が多かったため、今回のドロミテ クライミングを計画した。
期間は、2018/9/8~9/16までの9日間。行き帰りの日数を引いて、正味5日間のクライミングの予定である。
「5日しか日数がなく、雨でも降ったら・・・」という会員もいたが、雨が降るかどうかは、その日になって見ないと分からない。また、数日しか登れなかったとしても、ドロミテに行く価値は十分にある。
海外登山に初めて行ったのは、もう30年以上前になるが、その時先輩から聞いた一言が未だに頭に残っている。

「海外登山に行くには、休み、費用、技術、経験、知識、周囲の理解等、いくつかの条件が必要になる。しかし、これらの条件を全て満たせるのは、一生のうちに何回あるか考えろ。いくつかの条件が揃ったら、まずは行かないと。条件を全て揃えようとすると、行けるチャンスを逃すことになる。」

今回はそのうちいくつかの条件が揃い、総勢5名で行くことになった。
メンバーは、同じ会のS先輩、S氏、N嬢、U君と自分の4名。

9/8に成田を出て、ドバイ経由でベネチア空港へ。そこからレンタカーで、9/9の夕方、コルチナ・ダンぺツオに入った。

9/10
天気:無風快晴、暑くも寒くもないクライミング日和
ルート:サス・デ・ストーリア(ヘクスタイン)サウスリブ
タイム:駐車場(9:30)〜取り付き(10:10)〜終了点(山頂)(13:00-14:00)〜駐車場(15:00)

2015年に一度登ったルートだが、今回同行した4人は、初ドロミテなので、易しくて、景色も素晴らしく、下山はフェラータという、初めてのドロミテ 体験には最適だと思われるこのルートを選択した。

快晴のなか、下山口にある駐車場に車をとめ、取り付きへ向かう。
明瞭な踏み跡がついているので、迷うことなく、取りつきについた。
左手のスカイラインが明瞭にみえる所から、右上へ向かう踏み跡にはいる。このポイントを見逃すと、どんどん取り付きから遠ざかってしまうので、注意が必要。

自分、U君、S先輩と、S氏、N嬢のオーダーで登り始める。
サウスリブは、3級、4級の易しいルートだが、石灰岩に慣れていないので、どのスタンスに足を置いても滑らないのか、その感覚が分かるまでは、難しく感じた。
また、ドロミテのトラッドルートはどこもそうだが、易しいルートにはピンが、ほとんどない。易しいとは言え、ドロミテ はかなり高さがあるルートが多いので、カムをもって行った方が安心して登れる。
岩の感覚を掴みながら順調にに各ピッチをこなし、山頂の十字架へ。
山頂には、フェラータから上がって来た人が結構いた。
360度の展望を満喫し、下りは、フェラータを使って、迷う事なく下山した。

メンバーからは「素晴らしい景色の中でのクライミングで、夢のような1日だった」との感想が聞かれた。日本では、絶対見ることが出来ないドロミテ の景観は素晴らしい。

車で30分程度でコルチナのホテルに戻り、街中のレストランで入山祝い。
天気予報では、明日も快晴だ。




9/11
天気:無風快晴、暑くも寒くもないクライミング日和
ルート:ドライチンネン チマ・グランデ、改めチマ・オベスト、ノーマルルート
タイム:駐車場(6:30)〜取り付き(8:40)〜終了点(山頂)(11:30-12:00)〜取り付き(14:00)

ホテルで朝食を取ってから移動すると遅くなってしまうので、夜明けに現地に着くよう、5:30にコルチナのホテルを出た。
前回チマ・グランデを登った時は、壁の基部を下山してきた記憶があったので、オーロンゾ小屋の一番上の駐車場から、岩場の基部の踏み跡を辿ってアプローチした。
いくつかの大きなルンゼを経て、多分ここか?というところから、ルンゼに入った。

ルンゼ内のアプローチでは、1箇所お助けロープを使ってチョックストーンを乗っ越し、詰めあげた正面の岩に書かれた矢印に従って、左手の壁に取り付いた。
ここから先は、要所要所に付けられたマークを辿って登ったが、グレードは3級程度なので、ノーロープで登っていく。ルートは、岩場の弱点を繋いでおり、右へ左へとトラバースを繰り返しながら高度をあげていく。このノーマルルートはかなり複雑で、マーク無しで登るのは相当難易度が高い。

途中のコル状のところから、一段上にあがる所は、やや難しそうにみえたので、ここだけロープをつけて登った。登り切ってからすこし上がったところで、頂上の十字架が見えた。
頂上の十字架までは、易しいが、高度感満点のトラバース。数歩先は、基部まで約400M切れ落ちている。

登っている時から感じていたが、アプローチも含め、前回の記憶と今回もルートが全く一致しない。頂上の様子も全く違う。嫌な予感がして、隣の岩峰のピークを見ると、多くの人ががいるのが分かる。高さも若干高い。

登っている最中から厭な予感がしていたが、やってしまいました。我々が登っていたのは、チマグランデではなく、隣のチマオベストだった。
登っていたのは、我々以外には、1パーティのみ。チマ・グランデの混雑ぶりに比べれば、格段に静かな山頂だった。

下山は同ルートを戻ったが、所々ラッペルピンを探しながら下るので、前日のようなお気楽さは無い。取り付きまで降りても、ルンゼ内いっぱいに詰まったガラ場が不安定で、降りるのに時間がかかる。駐車場に着いた時には、新品のアプローチシューズが、石灰岩の小石で、真っ白になっていた。

朝ドライチンネンに行く時には、途中ゲートがあり、通行券が発行された。帰りに払うのだろうと思い、ゲートで通行券を見せたが、早く行けとジェスチャーで示された。どうやら料金はかからなかったらしい。
行きで1時間かかったが、帰りはコルチナまで30分で着いた。

ピークを間違えてしまったのは、情けない限りだが、チマ・オベストは、それはそれでいいピークだった。





9/12
天気:無風快晴、暑くも寒くもないクライミング日和
ルート:ドライチンネン チマ・グランデ、ノーマルルート
タイム:駐車場(6:30)〜取り付き(7:30)〜終了点(山頂)(11:00-11:30)〜取り付き(15:00)

昨日チマ・グランデを登るはずが、チマオベストを登ってしまったので、どうするか再度皆で相談。天気予報では、9/13以降は雨の予報なので、行くならこの日しかない、ということで、再度ドライチンネンへ行く事にした。

今回は、ガイドブックどおりオーロンゾ小屋から少し歩いた所にある教会からアプローチし、無事チマグランデの取り付きに着いた。
取り付きは、チマ・グランデと、チマ・ピッコラの間のルンゼに入って行くが、しばらく登ると、チマ・ピッコラ側に↑のマークがペイントされている。その反対側が、チマ・グランデの取り付きになる。

先輩のS氏は、体調を崩してしまい、この日は残念ながらホテルで静養。ルートを間違えた自分のせいです。S先輩、本当に申し訳ありませんでした。

取り付きで準備していると、次から次へとガイドパーティが登ってくる。取り付きから、ガイドパーティーと相前後しながら登った。ルートは3級程度で易しいのでノーロープで進むが、途中かなり切れている所もあるので、慎重に登った。

上部1/3ぐらいの所にある、ウオール状のピナクルからロープをつけるが、ルートはガイドパーティで大渋滞。日本なら順番待ちになるが、現地のガイドはお構いないしに、追い越しに、割り込みをする。日本人の感覚からすると、非常ににマナーが悪い。

おまけに連れてくるお客は、全くの初心者で、割り込んで来ておきながら、我々のロープを掴んで登るので、do not touchと注意せざるを得ない状況。なかなか進まないので、足の置き場を指示して、登らせた。

このピッチの終了点のコルにあがると、ガイドが割り込みをしたせいで、ロープが交差しており、一旦ロープを外さないとガイドのお客が登れない。ロープを外すしかないが、ガイドのお客は、ロープの外し方、付け方が分からないというので、代わりにやってあげ、goと言って先に行かせた。
やれやれ。チマグランデのガイドは、最低限の力がないと連れて行かないスイスのガイドとは全くちがうらしい。 ここから2p登り、終了点で一旦ロープを外し、歩きで山頂を目指した。

見覚えのあるチョックストンを乗っ越し、左を見ると、山頂の十字架が見えた。
昨日登った隣のチマオベスト山頂の十字架を見るのは、何とも言えない気分だ。

360度の眺望を楽しみ、同ルートを下山。登り同様、下山もガイドパーティと相前後しながら降りる。懸垂ピンもかぎられているので、早いもの順、かつ奪い合いである。
懸垂ピンは、思わぬところにあったりするので、初日のフェラータを下山するようなお気楽さはなく、慎重にルートを見定め、取りつきにもどった。




9/13
天気:曇り、暑くも寒くもないクライミング日和
ルート:ファイブフィンガーズ 親指ルート
タイム:取り付き(11:00)〜親指ピーク(14:30)〜リフト乗り場上(懸垂終了点)(16:50)

9/13以降は雨の予報だったので、頑張って2日連続してドライチンネンを登ったが、なぜか晴れたので、サッソルンゴとなりのファイブフィンガーズ親指ルートへ。
我々中高年組は、雨(休養日)のあてが外れ、ややお疲れ気味である。 コルチナからサッソルンゴまでは若干遠く、現地についたのは10時過ぎだった。(所用1.5時間)

駐車場から、2人乗り、かつ立ち乗りのリフトにのるが、かなりスピードが早い。乗る時は、係員2人に押し込まれ、降りる時は、両腕を掴まれて引きずり下ろされるような感じだ。S先輩は、係員にgo jump!と言われ、リフトをダッシュでおいかけて乗り込んでいた。

親指の取り付きは、リフト降り場から約3分。初日とおなじオーダーで登り始める。このルートは、グレードは低いが、高度感、露出感が半端ない。
傾斜は強く、トップの靴底が、ビレーポイントからしばらく見えているぐらいの傾斜だ。
リッジを登るルートなので、左手はすっぱりときれており、右手のかべも傾斜が強い。
この傾斜、この露出感、ガバ連続の易しい難易度。こんなルートは日本では絶対経験出来ない。ドロミテ に行く方は、一度登ってみることを是非お薦めします。

傾斜の強い数ピッチをこなし、ピークに着いたが、親指のピークは、十字架がある訳でもないので、そのまま素通りして懸垂で降りる。ガイドでは、40Mクライムダウンとあるが、無理ではないとは思うものの、万が一スリップしたら、運が良くても命は無いと思える高さだ。懸垂ピンがあったので、ピークからは懸垂で降りた。

2P目の懸垂は、途中で空中懸垂になる。親指と人差し指のコルまでは、50Mダブルでは、ロープが届きそうに無かったので、右手のスラブを目掛けて降りた。降りきった所に次の懸垂ピンがあった。ロープ末端のノットを作り忘れたら、容赦なくすっぽ抜けるぐらいのギリギリさだった。

ここからは、1pスラブを懸垂し、ケルンを追っての歩き。その後は懸垂数ピッチで、リフト降り場のすぐ上に降りた。
リフトの営業は17時までだったが、何とか3分前に駆け込み、ギリギリ間に合った。

日本では絶対経験が出来ない、高度感たっぷりのシビれるルートでした。





9/14
天気:曇りのち雨
ルート:チンク・トーリ、トーレグランデ
タイム:取り付き(10:00)〜終了点(山頂)(11:30)〜懸垂終了点(12:00)

連日のクライミングで、全ての指が深爪してしまったようになり、かなり痛い。石灰岩で指紋も擦れてしまったのか、iPhoneの指紋認証機能も効かなくなってしまった。指に体重がかけられないので、自分は今日は登らないことにした。

1人以外は全員中高年なので、今日は観光でも、という話になりかけるが、唯一の若者が、是非登りたいと主張。 我々は山岳会なので、登りたいという者が一人でもいるのであれば、やはり「観光」という選択は出来ない(と思われた)ため、同室のS氏が同行を申し出て、近場のチンクトーリに行くことにした。

自分とS先輩は、チンクトーリ周辺をハイキングすることにし、一緒に現地へ向かった。取り付きまで案内後、チンクトーリを1周したが、頑張ってゆっくり歩いて1時間程度だった。

クライミングチームが登り終わったあと、ジャストのタイミングで雨。急いで下りのリフトに乗り、今回のドロミテクライミングは、これで終了。

結果的に5日間通して、晴れたのは4.5日。天気に恵まれたクライミングでした。