北鎌尾根
2016年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー阪辻、中山
期間:2016年7月9〜11日

1日目
7:45 上高地出発
10:15 横尾着
11:45 槍沢ロッジ着
12:15 同 出発
14:20 水俣乗越着
14:40 同 出発
17:30 北鎌沢出合着
1日目。上高地を出発。天気は雨。風がなくレインウェアがとにかく暑い。槍沢大曲分岐から水俣乗越への急登での暑さは半端なく、大量の汗が流れる。乗越に到着すると、中山が「山の天気ってホント当てにならないですね。明日、本当に晴れるんですか」とつぶやく。雨が止まないことに不機嫌になっているようだが、誰も止むなんて言っていない。ここからが今日の核心なので気を取り直してもらい、天上沢への下降を始める。
土と小石が堆積したザレザレの沢をずり滑りながら下りていく。手がかりはなく、足元もひどく悪い。ごまかしながらしばらく下ると、中山が「こっちに踏み跡あります!」と右岸を指差す。お手柄。中間部から現れた雪渓を軽アイゼンで通過し、雪渓が切れると飛び石を拾いながら天上沢本流へ到着する。
ここからは、増水した沢の下降に難儀する。時おり沢から離れ藪を歩いたりするが、間ノ沢出合で水量がさらに増え沢幅が広がり、飛び石がなくなる。沢に入って歩くしかないけど嫌だな、どうしようかなと思案していると、中山が「沢に入って歩けば」と提案。急流を登山靴のまま徒渉し、天上沢左岸に渡る。しばらくして無事、北鎌沢出合に到着。よかったよかった。出合の下流側すぐのところに絶好のテン場を発見。偵察で二股を確認した後、幕営する。

2日目
3:00 起床
4:40 出発
4:55 北鎌沢二股
7:15 北鎌沢のコル
7:50 同 出発
8:55 天狗の腰掛
10:15 独標
17:00 槍ヶ岳山頂
17:30 槍ヶ岳山荘
2日目。朝、テントから出ると沢の水量がぐっと減っている。これなら北鎌沢も問題なさそうだ。大量の虫に閉口しながらも順調に進み、北鎌沢のコルに到着。身支度を改めて、いざ北鎌尾根。
独標まではしっかりした踏み跡があり、大天井岳から西岳の西鎌尾根の眺めを楽しみながら歩く。緑色のフィックスロープが張られた悪いトラバースを越え、独標を巻くと、槍ヶ岳の穂先が見えた。中山が「おお」とつぶやく。快晴で、水晶岳、鷲羽岳、黒部五郎岳など黒部源流域の山々がよく見える。北の方を見ると、鹿島槍や白馬、剱岳も見えた。昨日の不快な雨がうそのような、最高の天気だ。
しばらく進むと巻き道が切れ落ちてなくなるが、周りをよく見ると懸垂支点があり、3mほど下にはザレて細いトラバース道が続いている。懸垂下降しようか悩んだが、下のトラバース道が極度に悪いように見えたので、相談し一段高いところをトラバースすることにする。安全第一。
この後も、なるべく安全に歩くため慎重にルートファインディングしながら進む。ところどころ踏み跡が複数あり悩むが、「こっちに踏み跡がある」「こっちの方がいいよ」と言い合いながら進路を決めていく。慎重なあまり非常に時間はかかったが、結果的にはその慎重さが、懸垂下降をしたりロープを出したりすることなく北鎌尾根を無事に通過できた要因でもあると思う。
途中、4人パーティが後ろから現われる。稜線伝いにガシガシ登っていく様子が我々と対照的だが、Different strokes for different folks ということか。違うかな。巻き道を歩く我々の上を落石を落としながら通過し、しばらくすると見えなくなった。
P15を千丈沢側に巻き穂先基部を目指すが、千丈沢側に下り過ぎていることに中山が気付く。一度、尾根に戻り穂先基部に向かうルートを再確認、無事基部に到着。III級くらいの岩場を登ると山頂の祠真下に。ジャンケンで勝った中山が先に槍ヶ岳に登頂。時間はかかったけど無事に登れて、よかったよかった。

3日目
5:00 起床
6:40 出発
10:40 滝谷出合
12:00 白出沢出合
12:20 同 出発
13:40 新穂高温泉
3日目。まずは、槍の肩から西鎌尾根を千丈沢乗越へ向かう。南の方に、焼岳や乗鞍岳が見える。今日も快晴だ。乗越から飛騨沢沿いの道は花が多く、ミヤマキンポウゲ(たぶん)、クルマユリ、チングルマ、クロユリなどを楽しみながら下山する。滝谷出合で中山が写真を撮っている。「いつかは滝谷」と思っているのだろうか。右俣林道は日陰で風が通り快適そのもの。コースタイム通りに進み新穂高温泉に到着。1日目は雨、2日目は長時間行動でたいへんだったけど、終わりよければすべてよしということで、充実した3日間だった。

水俣乗越からの下り。雪渓が現われる

出合から20分ほどで北鎌沢二股に

独標を越えたら槍の穂先が見えた

槍ヶ岳山頂。今日は天気に恵まれました