北岳バットレス4尾根
2015年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー結城(CL)、米田、西野、野田、松邨、中山、錦織、小川
日程:2015年7月31日(金)〜8月2日(日)
天気:日中は概ね晴れ

<コースレコード>
7月31日(金)晴れ

八王子駅(7:15集合・出発)・・・芦安駐車場(乗合タクシー)・・・広河原(11:00発)・・・白根御池小屋(13:15着)(幕営)
8月1日(土)晴れのち曇り
白根御池小屋(4:20発)・・・bガリー大滝への分岐(5:07)・・・bガリー大滝取り付き(6:15着)・・・4尾根取り付き(8:00着)・・・4尾根主稜取り付きテラス(10:30着)・・・4尾根終了点(14:30着)・・・北岳山頂(15:20着)・・・草すべりコース・・・白根御池小屋(17:30着)
8月2日(日)晴れ
白根御池小屋(5:20発)・・・広河原バス停(7:05着)

<山行内容>
一日目、三日目は広河原・幕営地間の移動のみ、二日目はバットレス登攀のみの日程。
各組に入会2年未満の者を入れての3パーティを結成。
結城(リーダー)・野田・松邨組、西野(リーダー)・中山組、米田(リーダー)・小川組の順番での登攀。
リードは各リーダーが行った。

<概要>
7月31日(金)晴れ

八王子に集合し、野田車、松邨車に分乗して芦安村まで。芦安村の駐車場は金曜日にもかかわらずいっぱいで、バス停からかなり離れた第4駐車場に駐車。
乗合タクシーで広河原まで移動(一人1200円)し、広河原山荘で身支度を整え、幕営地へ出発。2回の休憩を経て幕営地到着。
(途中で小川の足がつってしまい、皆さんにご迷惑をおかけしました。)
8月1日(土)晴れのち曇り
3時起床、4時20分出発。
二俣までは基本的に緩い下りのトラバースだった。二俣からは雪はなく、持参した軽アイゼンは使用しなかった。bガリーへの分岐(大岩が見えるところ)で、北岳山頂での再会を約束して錦織さんと別れる。
しばらく岩場(ガラ場?)を登り、bガリー大滝の下でハーネス等の装備を装着。
ここまでのアプローチで約2時間。二俣からの登りで体は結構疲れていた。体力不足を実感。これから10数ピッチも登攀するのかと思うと、不安でいっぱいだった。
6:15 大滝に向かって左側でセルフビレイを取り、bガリー大滝を登攀開始。その後草付きを歩くことを考え、靴を履きかえることなく登山靴のままで登る。2ピッチで大滝の上部に抜けた。ここで一旦ロープをしまい、草付きを歩いてからCガリーを横断。Cガリーは急傾斜でザレザレ。落石を起こさないように、間を空けて素早く渡るよう、米田さんから指示があった。まるで底無し沼のように、ザレた斜面は踏み出す足を下へと飲み込む。一歩踏み出すたびに、大小の落石が起きる。足を滑らしたら途中で止まりそうにない。緊張。横断中に米田さんがいろいろと声をかけてくれていたが覚えていない。最初にCガリーの横断を始めた結城組も手こずっていたようだった(結城さん談「今回の一番の核心」)。
8:00 4尾根の横断バンドを越え、4尾根の取り付き到着。
先行2パーティがあり、ここで小一時間渋滞待ち。靴を履きかえる。真っ青な空。まだ午前8時過ぎだというのに日差しが強い。米田さんの「暑い」という発言を20回くらい聞いたところで登攀開始(8:40位)。4尾根取り付きのテラスまで4ピッチで切って登った。3、4ピッチ目(?)は、スラブっぽくもあるし、クラックっぽいのもあったしで結構難しかった。そのため、この登攀の時点では、すでに4尾根の主稜に取り付いているものと誤解していた・・・。


10:30 4尾根主稜取り付きテラス着。2人用テントが張れる位の広さがあった。ここで、この場が本当の4尾根主稜の取り付きと聞かされる。一気にテンション↓。
【1ピッチ目 40m(W+)】
 クラックの後スラブ。
 クラックでのフットジャムが痛かった。
【2ピッチ目 40m(U)】
 登るのは難しくなかった。が、ビレイの際、米田さんの登るスピードにロープの送り出しがついていかなかった。
【3ピッチ目 40m(V)】
クラック。本当に岩が白かった。あまりにも多くの人に登られて、岩がつるつる滑り、登りづらかったが、上で支えられている安心感で思い切り登ることができた。
【4ピッチ目 30m(V)、30m(W+)】
 支点は3か所あったが、到着の順番で今にも崩落しそうな岩の下でのセルフビレイ。真上を野田さんや松邨さんが登ると、ボオンボオンと低音が響くのが聞こえた。「怖い」と米田さんは連発していた。岩に負担をかけないように登るよう指示される。自分で登っていても低音が響く。とても嫌な感じ。今回、崩落しないでよかった。
 本来、2ピッチで切って登るところを、切らずにマッチ箱まで一気に登った。後半の出だしの垂壁はホールドがなく難しかった。吊られている安心感がないと登れなかったかもしれない。それを越えると難しくはないが両方が切り立っていて高度感と「落ちたら・・・」感満載のリッジ。
【5ピッチ目 20m(懸垂下降)】
支点のセットを解除するのに手間取ってしまった。
【6ピッチ目 30m(W)】
右コーナーのクラックを越えリッジを登る。

【7ピッチ目 30m(V+)】
枯れ木テラスへの登り。
ビレイのセットの際、確保器にロープを通し間違えて、米田さんの登攀中にやり直しをしてしまった。足場が確実なところだったからよかったものの、ビイヤーとしてやってはいけないことをしてしまった。深く反省。
【8ピッチ目 20m(W+)】

枯れ木テラスからDガリー奥壁城塞チムニー下の支点までナイフリッジをトラバース。ナイフリッジの裏側は深くえぐれていて、ここもいつ崩落してもおかしくなさそうだった。途中、70センチくらいの隙間があり、そこを超えるのに緊張した。
【9ピッチ目 20m(W+)】
出だしが難しい。ホールドもなく、少しかぶっていて、幅が広いチムニー。後半はそれほど難しくない。中山さんが苦労して探したホールドのおかげで、出だしは何とか登れた。

14:30 終了点到着。リードの米田さんにお疲れ様の握手の手を差し出されて、登り切ったことを実感した。感動。少し登った広めのテラスで、先に到着し、待っていてくださった結城さんにも「おめでとう」と握手され感動。ほかのみんなとも握手を交わし感動。
 ロープをしまい、靴を履き替え、お花畑の草付、稜線を経て15:20北岳山頂到着。お花畑の途中ではライチョウも姿を見せてくれた。
15:40 肩の小屋着。錦織さんと再会。7時間も山頂で待っていてくださった。感謝。
17:30 草すべりコースを経て白根御池小屋着。
8月2日(日)晴れ
 4時起床、5時20分出発。
 初日に通った道を下山。広河原から乗合タクシーで芦安駐車場へ。
 白峰会館で汗を流し、帰路へ着く。

小川山行感想
 北岳に初めて登ったのは2年前。そのときは自分とは違う世界と思っていたバットレス 登攀。今回、登頂できてとてもうれしい。
 訓練山行も含め、最初から最後までメンバーの方々(特に米田さん)にお世話になりっぱなしの山行だった。 みなさま、本当にありがとうございました。

(文責 小川)




8月1日(土) B.西野・中山パーティ 記録・感想  (文責:中山)
5:50 bガリー下でクライミング装備を身に着ける。
6:10 Aパーティ(結城・野田・松邨)につづき、登攀開始。難しい場所はないが、1本目なので緊張した。足元はアプローチシューズのままだったが問題はなかった。
2ピッチ登って、草付をトラバース。踏み跡はしっかりついていたが、1か所間違えやすい場所があるので注意が必要とのこと。
7;35 cガリーをトラバース。急斜面を大小さまざまな石が覆い、非常に崩れやすい。ときどき蟻地獄のように足元を掬われながら、何とか無事に通過。
8:00 第四尾根の末端に到着するも渋滞で、ジリジリと日に焼かれながら、小一時間待つことになる。
8:50 先行の2パーティが進むのを待って、登攀再開。3ピッチのうち、1ピッチ目後半のクラックと、3ピッチ目の階段状の岩の上部(右側から回り込み乗っ越すところ)が、私にはやや難しく感じた。てっきり「第四尾根主稜」が始まっていると思っていたが…。
10:30 ここでようやく第四尾根主稜の取り付きに到着したことを知り、皆驚きを隠せない。想像していたよりも登りごたえのある「アプローチ」であった。
ここからも、先行パーティの進み具合に合わせて、ときどき待機しながら登る。この頃から、周囲にガスがかかり始める。
主稜1ピッチ目の出だしのクラックは、カムをセットしたが効かず、トップにはフリー状態で登ることになったが、それさえ越えてしまえば後は易しく、次の2〜3ピッチ目もスムーズに進む。
4ピッチ目は、50mロープをいっぱいに使って、本来の2ピッチ分を一気に抜けてしまうことにしたが、Aパーティよりも下にビレイ点を設けていたため、ロープが若干足りなくなり、一旦登攀を中止してビレイ点を上げなければならなくなった。ロープの残りの長さを正確に伝えられるようになることは課題のひとつだ。4ピッチ目後半の三角形の垂壁では、ピンに沿ってやや左から入ったあと、右へトラバース気味にして上がる。ここは少し難儀した。
12:30 マッチ箱からの懸垂では、先行パーティが渋滞していたため、Aパーティのロープを借りて下降。その後の2ピッチは順調に進む。ガスの隙間から少し景色も見え始めた。
枯れ木テラスからのトラバースは、片側が崩落して断崖絶壁の上、途中完全に岩が途切れる個所もあり、慎重に足を進めた。トップがビレイ点に到着した後ロープを引き上げる際、ビレイヤーがロープを弛ませすぎて、岩角に引っ掛けるというミスをしてしまった。トラバースでは特に、ロープの扱いに注意したい。また、ランニングはこまめにとるとよい。
再び完全にガスに包まれた状態で最後のピッチ・城塞チムニー。これまでで一番難易度が高く感じた。
14:30 登攀終了。
全行程において、ロープワークやギアの受け渡しなどの基本的な動作は、非常にスムーズに行えた。これは事前の三つ峠訓練の成果だと思う。
また、今回は全ピッチにおいて、西野さんにトップをお願いした。いくつかの難しいピッチでは、フォローなので勇気を出すことができたが、トップでも同じ動きができるか…。今後も練習を重ね、いつかこのルートをリードできたらいいと思う。





8月1日(土) A.結城・野田・松邨パーティ 記録・感想  (文責:松邨)
各ピッチの通過時間は、上記記録とほぼ同じ。

白根御池小屋を出発し、bガリー大滝下でクライミング装備を整える。ぎりぎり雪渓の切れ目からアプローチシューズで登攀開始。Aパーティは結城さんが全ピッチをリード、そして基本的に野田、松邨の順で高度を稼いだ。
足もとの悪い急斜面のガレ場であるcガリーを横断し、第四尾根末端にてクライミングシューズに履き替える。この地点でdガリーから上がってきたパーティ2組と出会い、先に進んでもらう。ここからは、合わせて5パーティが尾根に取り付いている状況。トップの結城さんは、先行者がビレイポイントを空けるのを待たなければならないことも多かったが、順調にロープを伸ばしてくれた。
トポを見ながら進んでいたものの、四尾根の取り付きまでも予想以上に登りごたえのあるクライミング。「もしかして、これはすでに四尾根に入っているのでは……」と野田さんと話しつつも登ると、その後明らかに写真で見ていた取り付きの岩が現われ、何ともいえぬ思い……。(もちろん、トップの結城さんは全て知っていた)
4尾根最初の出だしは岩角のクラック。気持ちを新たにして、フットジャムの痛みをこらえて乗り越した。その後もクラックやスラブのルートが続くが、多くのホールド・スタンスが(クライマーによって?)磨かれていて、滑りそうな雰囲気。それでも実際足を置いてみれば、それほど危ぶむことなく登ることができて安心する。
4ピッチ目。後ほど、自分たちが登っていた時に「ボオン、ボオン」という音が響いていたと、岩の下にいたCパーティから聞かされたが、その時には全く気付かず、知らぬが仏。それでもマッチ箱からの懸垂下降後、基部のクラックを覗いた時に、向こう側が見えた時には、バットレス崩壊進行中を実感した。ちなみに途中、三角形の垂壁ではスタンスがなかなか見つけられず、自分にとっては少し思い切りが必要なポイントだった。
その上は、崩壊箇所の切れ目に残る枯れ木テラス。ガスが切れると目の前に中央稜が現われ、その威圧感に圧倒される。そこから逆方向に、まさに今割れ落ちたようなリッジを掴んでのトラバース。ここでのビレイ時にロープが枯れ木絡まってしまい、スムーズに送り出せなかった。トップをゆく結城さんにいったん止まってもらって解くことができたが、これはロープが溜まった足もとの地形に注意しなかった自分のミス。反省。
リッジ際のトラバースでは途中60pほどすっかり岩が途切れる箇所があり、足を広げて越えた。ちなみに、この幅も徐々に広がっているという話もあるから恐ろしい。
 トラバースを終えれば、ルートを90度折って、最終ピッチ(9ピッチ目)である城塞チムニーへ。出だしは難しく思われたが、手探りで岩溝の奥にあるホールドを見つけてからは安心感も後押しして、迷わずに登ることができた。その後は、完登の握手とお花畑とライチョウ。
 今回は全ピッチフォローだったので思い切り登ることができたが、リードとなれば、まだまだ自信の持てない箇所も多かった。今後、より安定した技術を身に付けられるよう、練習を重ねたい。皆さん、どうもありがとうございました。