コジ沢右俣(旧カモシカ新道)〜燕岳〜中房川
2014年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー久留島隆史(37)高橋弥幸(34)高橋裕二(27)田仲譲二(22)浦西桃梨(24)
日程:2014年8月2日(土)〜4日(月)

記録、久留島

計画

高瀬川からの登山道で今も残るものは、七倉尾根、ブナ立尾根、竹村新道の3本しかないが、廃道になったものは調べただけでもあと5本ある。餓鬼岳への忠芳新道、昨年登った東沢本流、三俣山荘への伊藤新道、槍への宮田新道、そして今回のカモシカ新道だ。古の登山道に歴史を感じ、槍を背に花崗岩の燕岳に裏側から登る。山頂ではコマクサの群落と大展望が待っているだろう。さあ、歴史の旅へ出発だ。

カモシカ新道について

 1969年高瀬ダム工事着工、1979年高瀬ダム完成。高瀬ダムができた頃には、すでに廃道となっている。廃道となる以前も、最初はコジ沢右俣〜2437mピーク〜燕岳西尾根、その後は川久里沢沿い〜燕岳・燕山荘中間点にと、何度かルートがつけかえられている。廃道になって以降の完登記録は見当たらなかった。

コジ沢について

 登山体系に『沢の上部、北燕への登りが急である。』とだけ記述がある。これだけだとどこのことか特定は難しいが『北燕』とあるので、おそらく1720m二俣で左俣(右俣より水量は少ない)に入るルートについて書かれていると思われる。

山行概要

8月2日(土) 晴
 高速バスが渋滞で遅れるが、なんとか明るいうちに名無避難小屋に着く。水場は目の前、ストーブもある快適な小屋だ。畳の上は詰めれば8人くらいまで寝られる。

   
(小屋前でカレーをつくる)       (薪ストーブを囲む)

8月3日(日) 晴
 寝坊した。すでに明るい。急いで用意する。20分でコジ沢出合。沢靴に履き替える。6時、遡行開始。頭上に吊り橋、壊れかけの小堰堤を過ぎ、標高1435mの所で冬の尾根を偵察する。1470m、5m滝。左の巻きにトラロープがかかるが、無視して左壁を直登。

 
(5m滝)

1480m、15m大滝下でハーネス装着。ここは残置トラロープ(これがこの沢最後の人工物)を利用して左から高巻く。次の10m滝も水量多く左から巻く。その上は二俣まで穏やか。


(15m滝)

9時1720m二俣。このあたりから雪渓の残骸が残り、水が冷たい。予定通り右俣に入る。左右の壁とも崩落地で沢自体傾斜もあり、落石には非常に気を使う。ここから三俣(1900m)まで荒天時の逃げ場はない。
二俣からも見えた一番上の滝(5m)が多少細かく、落ちると確実に怪我をするので念のため後続にロープを垂らす。その上は小滝の連続。水流から外れると岩が脆いので、冷たいがシャワークライムの連続となる。ガンガン高度も稼げ、楽しい所だ。

  
(小滝その1)                          (小滝その2)

11時1900m、地図上の三俣。「地図上の」と書いたのは、実際には水線は2本しかなく、しかも右はか細い流れ。右から小さな枝沢を合わせたようにしか見えないからだ。これが右俣なのは間違いない。当初の予定は中俣を直接コルに上がるルート。正面10m滝の上に30mはありそうな大滝がそびえる。中俣、左俣分岐は一段上か?とりあえず荷物を置いて偵察。10m滝を右から巻き、さらに上を見上げる。水線はただ1本。轟々と流れる大滝のみだ。これを登るのか?左のブッシュから高巻けそうだ。


(空身で偵察。本流の10m滝と30m滝。引き返し、支流(右俣)に入る)

荷物に戻りもう一度みんなで落ち着いて検討した結果、10m滝上、大滝の末端から右にのびる谷状(藪で覆われ、水はない)が当初予定した中俣であるということがわかったが、この標高から藪こぎはきつい。予定変更!はっきりした谷筋のある右俣に入る。
右俣に入ると水は減るが、沢筋はしっかりしており開けている(ただ、足場が崩れやすく、落石に気を使う)。2150mで水は消えるが、その後も出てくる分岐は左に左にと進み、藪漕ぎなしで13時に2250m地点小尾根に突き上げた。ここから岩場の基部を左に長いトラバース、14時30分2370mコル着。燕岳や燕山荘が見える。


(岩場基部のトラバース)

 靴を履き替え十分休んだ後、みんなを先に行かせ久留島1人2437mピークの偵察に行き、15時45分にコルに戻り追いかける。 出だしは歩きやすいが2450m付近藪が深く、行き詰まっている仲間たちと16時30分合流。深い藪を脱出し、17時15分第1岩峰(2500m)着。2520m付近も藪が濃いが一時的で、その後は割と快適。19時第3岩峰(2650m)着。山頂にガスがかかる山もあるが、槍、大天井、立山、剣、針の木…、長い旅の最後に相応しい大パノラマが広がる。


(左奥雲の中に槍)

暗くなる前にと、19時30分一足先に山頂に立ちライトをつけ、みんなに合図した。大町の夜景が綺麗だったが、最後の一人が山頂に着く20時ころには一面ガスに覆われた。霧雨の中20時30分、いびきがあちらこちらから聞こえる燕山荘のテント場に到着。売店がしまる直前に、全員分のビールを買いこんだ。

8月4日(月) 霧雨のち晴
 合戦尾根ではなく、中房川沿いの登山道を下る。あいにくのガスの中、出発。北燕稜線は花が美しい。東沢乗越に着く頃、晴れ間が見えてくる。燕岳から中房温泉までですれ違ったのは一人だけ。沢沿いで涼しく、気持ちのよい登山道だった。

反省点とルートの考察

地図で見た三俣は左俣が大きなガレマークで合わさる。そのため山行前から、左はただのガレに水が少々流れるのみ、右俣と中俣だけで二俣をつくるはずだという間違った思い込みがあった。あの滝があまりに大きかったので考え直すことができたが、簡単な滝ならあそこで偵察せず、それを中俣と思い込んだまま越えていった可能性がある。もう少し慎重さが必要だ。
中俣は藪っぽいということで切り捨てたが、藪は一時的でそのまま行けた可能性も高い。その場合今回よりルートは短くできるが、沢筋が広いため今回よりルートファインディングは困難だろう。

ルートについて

 特別難しい所はなく30mロープで十分。二俣(1720m)から上は落石注意。尾根に出てから一時的に藪の濃い所(2450m、2520m)がある。途中ビバーク適地はあまりない。

コースタイム

8月2日(土)
高瀬ダム17:30 名無避難小屋19:10

8月3日(日)
出発5:15 コジ沢出合5:35 1720m二俣9:30  1900m三俣11:00 2250m小尾根12:50 2370mコル14:40着15:45発 2500m第1岩峰17:15 2650m第3岩峰19:00 燕岳19:55 燕山荘20:35

8月4日(月)
出発6:30 燕岳7:00 東沢乗越8:45 中房温泉11:45