黒部東沢
2013年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:錦織良、佐々木正人、他1
日程:2013年8月15日〜18日

記録
2010年8月上旬に黒部上の廊下を遡行の際に、まだ水量が多いとのことで奥黒部ヒュッテから東沢に転戦していったパーティイがあり、気になっていた沢である。東沢は奥黒部ヒュッテから左に分ける沢であるが真直ぐに水晶岳につき上げており、記録を見る限り困難性はなくむしろゆったりと沢歩きを楽しむことができる沢だ。佐々木さんと大宮労山所属の高橋さんとの三名での入渓になった。

H25.8.15
扇沢7:30=黒部ダム8:00〜平の渡し11:40〜奥黒部ヒュッテ14:30
前夜8時の特急あずさで新宿を発ち信濃大町に24時着。タクシーにて扇沢まで行き扇沢で仮眠をとる。始発のトロリーバスに乗り、黒部ダムから歩き始める。天気はここ数日好天が続いており今日も暑くなりそう。黒部湖の周りを歩いて平の渡しへ到着。なんとか12時の渡しに間に合う。乗客は20名以上いてさすがお盆の最盛期といったところ。右岸に渡ってから約2時間、梯子の歩きにくい道を辿り奥黒部ヒュッテ到着。計画では東沢に少し入って釣りと焚火を楽しむつもりであったが、ヒュッテのキャンプ場へツェルトを張ってビールで入山祝とした。上の廊下と東沢の出会いで早速釣り竿を出すが釣果ゼロ、それどころか気が付けば大事な餌をどこかで落としてしまった。ずいぶん探し回ったが見つからず、何とも残念!

H25.8.16
奥黒部ヒュッテ6:30〜一の沢出会い9:00〜二の沢出会い10:00〜ビバーク2050m付近15:00
翌朝6:30出発。ヒュッテの主人に聞いた東沢への入り口は読売新道方面へ行って1〜2分で東沢方面への踏み跡に入るとのことであったが、我々は少し手前で降りてしまいゴルジュに阻まれ登り返す。登り返すとヒュッテの主人が言っていた明瞭な踏み跡があり、その先に東沢右岸への吊り橋がありその手前から入渓する。沢の中はさほど困難なゴルジュではないが水量は多い。一か所ザイルを付けて渡渉を試みるが水流が強くあきらめ、左岸を腰までつかってへつりで突破する。今回の遡行中ザイルを使用したのはこの近辺で2回使用したのみであった。1時間ほどでゴルジュを抜けると沢は開け、河原と岸辺の林の中を歩く。手頃なビバーク地が随所にあり焚火の跡も多い。一の沢出会いを通過し、二の沢出会いでバッタを餌に釣りを試みる。二の沢に少し入って見るが林に囲まれ竿が振れないし、やはり餌が良くないのか・・?前を行く二人は盛んに魚影を確認するがどうにもまったく釣れない。沢は1940m付近からは裏銀座ルートの白い稜線が望める広い河原となり、2000m付近からは鬱蒼とした林の中を流れるようになる。15:00頃林の中の2050m付近に適当な場所を整地してツェルトを張る。ここでも1時間ほど竿を振るがアタリもなし。盛大に焚火をし、イワナの代わりにベーコンを串焼きにして宴会に突入した。

H25.8.17
ビバーク2050m付近5:30〜東沢乗越稜線10:10〜野口五郎小屋14:00
ビバーク地から30分も歩くと二人パーティと遭遇。出発の準備をしているところでイワナもだいぶ釣り上げたとのこと。1時間ほど歩くと沢は大きく開け、水晶岳に続く稜線が正面に見えてくる。下から見上げると緑の草原にところどころ林を交えその上に雪渓を掛け、山頂を岩に飾られた水晶岳は素晴らしい山だ。ルートは東沢乗越への沢を忠実に詰めて高度を上げてゆく。ふと見上げると稜線上に登山者が歩いている。最後の詰めは東沢乗越よりも東の方へ余分なやぶを漕いでしまったが10:10稜線上のルートへ出た。登山靴に履き替え野口五郎岳を目指す。野口五郎小屋には2時頃着。テント場がないので素泊まりとする。自炊場で宴会をしていると朝に合った二人パーティも一緒に合流。イワナの串焼きはもちろん刺身やたたきの写真まで見せられ、また地元でBCにも盛んに行っているとの話に盛り上がる。

H25.8.18
野口五郎小屋6:00〜烏帽子小屋9:00〜高瀬ダム12:00=七倉温泉
昨日の二人パーティが七倉に車を駐車していて信濃大町まで便乗させてくれることになり、行動を共にする。烏帽子小屋までは上り下りの無い平坦な道だが、烏帽子小屋からの下りのブナ立尾根は北アルプスでも名だたる急登。我々は下りだが多くの登山者が登ってくる。大汗をかいて高瀬ダムへ到着。ダムではタクシーが待っており七倉温泉へ、七倉温泉からは途中食事を挟んで信濃大町まで送っていただいた。

東沢自体は困難な沢ではなくゆっくり楽しむことのできる沢だ。楽しむことの要素の最も大事なイワナが釣れなかったことは何とも悔しい。2010年の上の廊下でもそして今年の東沢でもまったくのボウズ!黒部の沢で釣れなかったらどこの沢で釣れるのか・・?まだまだ修行が足りないということか・・?山の中でイワナの刺身、たたき、から揚げを食することを夢見てまた次の沢へ行きましょう。
(錦織:記)

ゴルジュ内部

明るい河原と林の中を歩く

振り返れば立山

上部河原と水晶に続く稜線

一直線の東沢全貌