吾妻連峰中津川
2012年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:CL久留島、西野、小野寺(記)
日程:2012年9月15日〜16日
15日 東京駅発0640発の新幹線で郡山経由猪苗代着0920頃。それからタクシーで磐梯吾妻レークラインを通り中津川渓谷レストハウス前に到着1000頃。タクシー代約9,000円

タクシーの途中からの磐梯山、晴天で気持ち良い。

その後、1020に出発、歩道を下り渓谷に入る。最初は河原、ゴーロ歩きと続き、ガラ八丁から難所の白滑八丁に入る。岸の両岸をへつっていくのであるが、乾いている割には思いのほか悪い。きれいなナメが続くが、沢の中に対しては緩い傾斜がそのまま伸びるのではなく、U字型になって切れ落ちており、底はかなり深いことが上から見るとよくわかる。

左図は白滑八丁の一部。
白滑八丁最後の難所に着いた時にはほぼ2時間が経過していた。他の記録よりは時間がかかっている。この少し手前でも残置ハーケンを利用したりしてやや不安定な登りが続いていた。

上図はKが淵に飛び込む前のものである。このあと前方の淵に飛び込み、左岸の三角に見える岩に取り付こうとしてホールドなく撤退している(”1”の方向)。その後、”2”で示した、少し出っ張ったところから対岸(出っ張っているところ)に飛び移り、右岸をへつってチョックストーン?のあるところまで到達。但し、ここでは支点は無く、落ちるとそのまま水に入る。
ビレイはKの左手の延長戦上、チョックストーン右辺りで行う。強度は十分にあった。左岸から巻いたパーティもあるようだが、今回は傾斜、岩の濡れで無理と最初に判断している。
3人のザックのみをロープを使用してKのいる箇所まで引き上げた。次にロープを繋いでOが”1”に行こうとして水に入ったが足が立たず、体が沈み、メガネを亡くしてしまう。平泳ぎしようとしたが、波に呑まれつつあり下流にロープを引いてもらい。何とか岸に這い上がる。この時点で撤退しようという声がKから出たが、何となくそのまま続行した。今度はNが”2”の方向からトライ、一度は失敗したがロープで戻し、2度目に成功、そのまま”2”のルートを行く。次に同じくOが飛んだが岸に届かず、4〜5m流される。メガネ無であり、位置感覚が合わなかったようだ。ここでも泳ぎにならず途中の水中の突起に足を立て、岸に手をかけるが自力では体が上がらない。水中に胸まで浸かること約20分程度(と思われる)、上からザックと一緒に泳いで来たKに手伝ってもらい岸に上がる。陽が強く照っており、体の水面より上は暑かったせいか、極端な体温低下はなかったが、唇は紫がかっていたようだ。また水中では足がつりそうになったりはした。この時点で撤退を決定した。ザックも戻り、予備のメガネを付けることができた。

ルートの採り方
ルートはこの場合、1でも2でもどちらかしか取りようがないように思われる。選択にはかなりの時間を費やした。最初に1を選んだのは支点があり安全と判断したことによる。上述のように2には支点がなく、落ちたらそのまま急流に流される恐れがあった。
ただ1の場合、水流の勢いと水深(U字型)に対し慎重になるべきだった。何の気なしに水に入ったのが引き金となった。この時のメガネの紛失が後の行動に大きく影響した。
最初から2に行っていれば問題なく通れる可能性が高かったかも知れないが、今となっては後の祭りである。ただ、最初の失敗の後には失敗者が誰であろうとすぐ撤退すべきであった。

遭難者の心理と救助者の心理。
こんな話を聞いたことがある。遭難者が到着した救助者に対して、「遅い」と言ったそうだ。こんな話は論外にしても、遭難者は早く救助に来てほしいと思い、確かに多少もどかしく思うようだ。今回の場合は、救助者は突然のことで焦るが、すぐに落ち着いて行動し、救出までは全体として両者ともジタバタしなかったのが良かった点かも知れない。感謝である。天候もよく、地理的条件に比較的恵まれたせいかも知れない。
時間的には、正確に計ったわけではないが、この場所に到着してから撤退まで約1時間程度と思われる。

沢の特徴
水面までは、両岸とも傾斜を持ったスラブ状の岩であるが、水中は急に削れて深くなっている。きれいなナメに騙されて不用意に足を入れると沈んでしまうことになる。沢の幅が広くて深いのではなく、両岸が狭まっていて深いということである。同様の沢はあまりみたことがない。

泳ぎについて
Oは泳ぎは上手ではないにしても、下手な方でもない。普通に平泳ぎ、クロール等出来る。しかし、今回はなぜかうまく泳ぐことが出来なかった。沢登りは本来へつるもの、泳ぎは積極的というより、やむを得ない場合の手段と考えているが、今回はそれに該当した。

その後、13時30分頃であるが、この場所から少し下流に戻り、20〜30分程度左岸に上がり、道に出た。それほど踏まれているようではない。沢の入り口近くに戻ったのが15時過ぎ、そこで木を集め、例により焚き火をして、酒を飲み、就寝。

 焚き火

  翌朝のまぶしい陽の光

16日 ゆっくり起床し、左岸沿いの道を出来るだけ上部まで行き、沢の状態を俯瞰する。昨日の難所より上は河原歩きが多くなりそうだ。魚止めの滝までは届いておらず見ていない。道も所々崩れており、また藪も多く、あまり人が入っているとは言えない。釣り師はこの道の途中から沢に降りたりしてそれなりに入渓している。白滑八丁の下の方はU字をプール代わりに利用して小学生などが泳ぎに来ているようだ。勿論深いので大人が近くでみている。

11時頃には出発点に戻り、そのまま秋元湖のサイクリングロードを2.5時間ほど歩き、バス停に到着、そのままバスにのり猪苗代に戻る。駅前で腹ごしらえをし、帰りは東北本線経由であった。
以上