奥利根源流遡行
2012年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:錦織良・西野淑子・植田雄亮
日程:平成24年8月22日〜平成24年8月25日
ルート: 水上=八木沢ダム=バックウオーター〜越後沢出会い〜裏越後沢出会い〜利根川水源の碑〜丹後山〜栃ノ木橋〜十字峡〜三国川ダム〜野中=六日町

記録
一昨年、黒部上の廊下を遡行し次の目標は奥利根源流に定めていて、40年前現役のころから一度は遡行してみたいと思っていた沢である。記録は八木沢ダムができ建設される前からあり、雪標山岳会伊藤文平氏編集による「夏の利根川源流―雪標山岳会13年間の記録―」(平成23年3月発行)に詳しい。また、最近の記録はNetでも見ることはできるが「奥利根・谷川連峰の沢」白山書房出版に詳しい遡行図があり、我々も参考にさせてもらった。

H24.8.22
水上7:40=須田貝発電所入口8:15=八木沢ダム=西千ヶ倉沢10:50〜水長沢12:05〜雨量観測所12:25〜井戸沢14:00〜越後沢15:15
前夜JR上越線水上駅集合、駅前で仮眠をとり朝7:40発のバスでボートの予約をしていた民宿やぐらさんへ向かう。民宿やぐらからはボートを牽引して八木沢ダムへ。ダム入口では利根川ダム水資源機構の監視人へ登山計画書と入山の承諾を得る。近年の遭難事故等により監視が非常に厳しくなり、ボートの繋留もできなくなっているとのことであった。ダムは渇水が続いていて水位が非常に低い。そのため持ってきた大型のボートでは湖面に下せても回収ができなくなる虞があり急遽小型のボートに取り換えに車だけ戻ることになった。待つこと30分、ボートを下し湖面を30分ほど走ってバックウォーターで下してもらう。バックウォーターは西千ヶ倉沢出合付近で25000地図からは4`程水位が下がっている。歩き始めは砂とひび割れた泥の上を歩く。小穂口沢、水長沢を過ぎるとやっと沢らしくなってきた。雨量観測所を過ぎるとシッケイガマワシとなる。スノーブリッジ(SB)を一つ潜るが特にいやなところもなく巻淵は左岸を巻いて越後沢出合に到着。出合高台の藪の中にはしっかりしたテント場がありツエルトを張る。早速イワナを求めて竿を出すが、釣れない・・・。深い沢に入れば私のような下手釣り師にも自殺志願のイワナが来るだろうと思っているのだが・・・。虚しくベーコンの焚火焼きで初日の宴会とする。

H24.8.23
越後沢6:10〜ヒトマタギ7:00〜牧ヶ倉沢9:15〜滝ヶ倉沢10:00〜裏越後沢12:00
利根川本谷は蚊・ブヨが多い、ちょっと油断するとジャージの上から刺されるのでハッカ油を頻繁に散布する。今日のメインは剣ヶ倉土合とオイックイの通過だ。水につかり岩をヘツリながら快適に遡行をして行くとヒトマタギ、記念の撮影をして通過。民宿やぐらさんでも聞かされてはいたが昨年7月の大雨で沢が土砂で埋まっているのが見てとれる。淵の中は歩き易いところが多く、るーと遡行図にある「100mの狭いゴルジュ泳ぎ交じり」は見当たらなかった。滝ヶ倉沢を過ぎるとオイックイの通過となる。この辺りからSBが頻繁に出てくる。この日だけでも7〜8個所のSBを潜った。大半は出口の明かりが見えているが、中には出口が見えず真っ暗な中を手探り足探りで息を殺して足早に通り抜ける長いSBもあり、今年の雪の多さを実感する。SBを一人ずつ慎重に通過して行くと裏越後沢出合に到着。時間は早いがこの先の天幕場の定吉沢の状態がわからないのでここにツエルトを張る。二人が薪を集めている間に今日こそはと竿を出す。しばらくして30p前後のイワナをゲット。二匹目をヒットするも針を取られて逃してしまった。逃した魚はデカかった。盛大に焚火をし、イワナの塩焼きを食す。ウマイ。

H24.8.24
裏越後沢6:00〜きよし沢7:10〜大利根滝10:20〜2段6mCSの先15:00
昨日はバラバラと夕立があったが、今日も天気はよさそうだ。歩き始めて間もなく定吉沢を通過。二条魚止めの滝は右岸を高巻き懸垂で下降。SBが何度も出て来て、その度に怖々潜り抜ける。二段ヒョングリの滝。さらに3mチョックストーン(CS)滝を越えると大利根滝20mになる。大利根滝は右壁を登るが、壁の途中で持ってきたハーケンがないことに気が付く。ハーネスのプラスチック部分が壊れカラビナごと落としたようだ。その後も小滝や淵が連続し、なかなか進まない。ハト平は、藪とイタドリの林で最近キャンプをした形跡が見られた。チョットした滝が越えられず、踏み跡を頼りに左岸を高巻き始めたところトラバース地点を見失いかなり上まで追い上げられてしまった。木を伝いながらトラバースし、適当なところから40m懸垂して沢身に戻るもかなりの時間を消耗してしまう。トイ状の滝を過ぎ、2段6mCSの滝を過ぎた辺りで時間的に見ても今日中に稜線に上がるのは無理と判断し、狭い場所を整地してツエルトを張る。薪をたくさん集め3日目の焚火と最後のお酒を楽しむ。

H24.8.25
ビバーク地5:50〜人参滝6:30〜深山滝7:45〜赤沢滝8:40〜利根川水源の碑10:40〜丹後山11:30〜十字峡14:30〜野中バス停16:00
今日も天気は良い。SBを抜けた目の前に人参滝15mが現れる。左岸の岩を登りリッジに出て嫌な草付きを上がってから4〜5mの懸垂で沢身へ戻る。この先はゴーロとなり傾斜が出て来て高度を上げてゆく。深山滝20mは西野リードで右壁を登る。続く赤沢滝4段20mは植田リードで流水沿いを登る。水上滝は右岸の流水跡から高巻き懸垂20m。もう稜線まで見通せ、終盤が近い。最後の三角雪田の下で関東平野を流れる利根川最初の一滴を味わい稜線に出た。藪漕ぎはほぼゼロ。稜線から30mほど歩くとトンボの飛び交う利根川水源の碑。記念撮影をし、丹後山、丹後山避難小屋を経由し十字峡へ下った。十字峡から右岸オートキャンプ場でタクシーを呼ぶつもりであったが、昨年7月の災害で流されており道路も各所で寸断され通行止めとなっている。やむなくダムの上を横断し野中への車道を下る途中、トラックに拾ってもらいバス亭まで乗せてもらう。かなり疲れていたこともあり大変に助かった。バス停から民宿やぐらさんと利根川ダム水資源機構へ無事新潟県側に抜けたことを報告し、六日町へ向かった。
(錦織:記)



快適なボート渡し


バックウオーターの歩き始め


最初のSB

越後沢出合


剣ヶ倉土合


ヒトマタギ


SB


SB


イワナを食す


7m2条魚止めの滝


大利根滝


3日目の焚火


深山滝


赤沢滝


利根川最初の一滴


利根川水源の碑