東北沢ツアー(早池峰山、コメガモリ沢右俣。 和賀山塊、堀内沢・マンダノ沢・上天狗沢〜部名垂沢右俣下降)
2012年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:久留島・下田
日程:2012.8.16〜19

15日夜
もともと和賀山塊の予定だったが、ころころと天気予報が変わるため、家にあった東北北部の地図すべてをもってでた。早池峰に変更を決めたのは、東北道の仙台付近。「明日は秋田雨、盛岡曇り、宮古曇り時々晴れ、明後日は全国的に雨」という直前の予報を信じた。前線は西から近づいており、太平洋側の山が望ましかった。
早池峰に沢があると知ったのは1時間前。「コースタイム3時間、登山道より花が多い」と登山体系にある。早池峰は岩手の太平洋側に位置し午前中で登れそうなことから、初日はここに決めた。5万分の1の登山地図しかないが、地形図と遡行図なしの山行は以前何度か奥多摩で練習済みで、脱奥多摩にちょうどいい場所とも思われた。登山体系片手に山を気ままに決めるのも楽しい。
お盆過ぎの平日だというのに、うすゆき山荘(無料開放)は満員、河原坊駐車場にもテントがいくつもあった。さすが、100名山。  

16日(曇り) 早池峰山、コメガモリ沢右俣  
登山道が本流を渡る所から遡行開始。最初の10分ほど、登山道が横切ったりするが、やがて見えなくなる。最初から水量は少なく源頭のよう。お花畑の中の穏やかな沢登りだ。虫はいない。
やがて、水が二分し左にいく。ここから先、傾斜がきつい。小滝を一段こえた所が二俣。左は水が続くが狭そう。水がないが開けている右俣へ。岩は硬いが落石がたまっている所もあり、気を使う。傾斜はずっと強くたまにクライミングがまじる。初心者がいるときは、お助け紐があった方がよい。
傾斜が落ちたと思ったら、藪漕ぎもなく、稜線上のお花畑の真ん中にでた。花を踏まないように気をつけながら、目の前の木道にあがる。5分で山頂。ガスで展望がなく風が強いので、山頂小屋では多くの人が休んでいた。
八幡平を観光後、盛岡にある下田のおじさんの家に泊る。洗濯をさせてもらい翌日に備える。

タイム 5:50河原坊発 6:10遡行開始 7:30二俣 9:00山頂着  9:30山頂発 11:00下山

ルートについて
 体系にある通り登山道より花が多く、藪漕ぎがなく、稜線まで一気に登れて楽しい。こじんまりとしていて初心者むき。早池峰にバリエーションから登れるというのがよい。

17日 休養
 前夜に、17日は八幡平の南白沢、18日は森吉山の桃洞沢という計画をたてたが、朝おきると天気予報が少し変わっており、今日は休養して、土日で泊りの沢に行こうということになった。
 午前中はおじさんの家で甲子園を見ながらものを乾かし、午後花巻観光、下田の祖父母のお墓参りなどをして、横手焼きそばで夕飯を済ませてから、夏瀬温泉に入山した。花巻で信じられないほどの豪雨にあった。

18日(快晴) 和賀山塊、堀内沢・マンダノ沢  
 出発から2分、ダム目の前でいきなり渡渉だが、水量はたいしてない。大量の小魚の群れが見え、今晩が期待できる。半分廃道化した林道が堰堤まで続き、そこから入渓。左右に渡渉を繰り返すが、困難はない。アブがあまりに多いので、暑いのは我慢して雨具の上を着る。
 有名な三角錐岩塔は大きな流木がひっかかってしまって、やや残念な感じになっている。
ここまでくると、標高が上がったためかアブは一切いなくなる。マンダノ沢に入ると、傾斜が増し、滝が連続する。登山体系にのっている滝の数よりあきらかに多い。途中の滝でロープを1回だす。1手スタンスが高く非常に悪い。残置支点はこの沢を通して1本もなく、ハーケンがあればうちたかった。この滝は巻く方が時間がかかりそうだ。
 蛇体淵周辺は、泳いだら気持ちよさそうなエメラルドグリーンの大きな淵がたくさんある。魚が泳いでいるのもたくさん見える。二俣を下天狗沢の方に3分進むと広い河原があり、ビバークする。流木は多く焚き火は盛大、開けた河原なので眺めをさえぎるものはなく夜の星は満天に輝き、魚、肉、酒も尽きない最高の夜だった。

タイム 5:40夏瀬ダム出発 6:10堰堤(遡行開始) 8:00朝日沢出合     9:00マンダノ沢出合着 9:30出発 12:45蛇体淵 14:00二俣

19日(快晴) 上天狗沢〜羽後朝日岳〜部名垂沢右俣下降 
 少し戻り上天狗沢に入る。ブナの原生林の中、ナメがどこまでも続く。ときおり現れる小滝も登り応えがあり楽しい。ここでも、やや悪い1手があり、お助け紐があれば安心。
源頭は紫陽花から見たことのない花までたくさんあり、その数は花で有名な早池峰山をこえる。藪漕ぎ30分、その後稜線付近のお花畑を一気につめ、羽後朝日岳の山頂に飛び出した。360°の展望、一面のお花畑、誰もいないし、稜線上の踏み跡は微か。秘境の雰囲気抜群の山頂だ。
 下降は部名垂沢に道があると聞いていたのでそこを目指すが地図を開くと小ピークから下る右俣と、鞍部から下る左俣と2つある。資料をもっていなかったので「どちらでも大差ないでしょ」という適当な会話になり、稜線の踏み跡が歩きにくかったこともあり、手前の右俣の踏み跡に入る。これが失敗。踏み跡はすぐに消え、藪こぎ15分のあとしばらく降りると、滝の連続となってしまった。後ろ向きのクライムダウンを続け(ロープがほしいかもと思いながら出さなかったのが3箇所)、なんとか二俣に出た頃にはバテバテ。ここからは赤布とトラロープのついた道を下田に励まされながら、ふらふら歩く。林道にでてほっとしたものの、この林道はダムの周りを標高200m以上だらだらと登り、本当に疲労困憊でダムに戻った。

タイム 5:30出発 8:30羽後朝日岳着 9:00出発  9:30部名垂沢下降開始 11:10二俣 12:50林道  14:00夏瀬ダム

登りのルートについて
 遡行図に書ききれないのであろうが、小滝やナメは体系にあるよりはるかに多い。ダム周辺はアブが多く辛い。残置物は一切なく、巻き道の踏み跡もほとんどない。蛇体淵手前もビバークに最適な広い河原。花、木、魚など自然が豊か。一昨年行った八幡平の沢と同じく、東北北部の沢には関東周辺やアルプスにはない魅力感じる。

下りのルートについて
 いろいろな人の記録によると、左俣には稜線まで赤布があり、要所にトラロープがあるらしい。確かに二俣から下を歩いた限り、そのような印象を受けた。
 右俣は、体系によると初心者向きの沢とされている。確かに登るなら簡単だと思うが、下りはかなりの高度感があるうえ懸垂下降に適した支点も少なくロープをはりづらいので、初心者向きとはいえない。
                                   記、久留島