夏合宿・剱岳周辺
2012年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:牛山、植田、錦織
日程:2012年8月11日〜17日

夏合宿剱岳ということで、早くから計画が立ち上がり、最大7人の参加者が集まったものの、様々な原因でから参加者が減り、結果的に3名で行くことになった。牛山、植田が全行程、錦織さんは15日まで参加であった。

8月10日夜、東所沢に22時集合、牛山車で扇沢まで。3時前に到着し、無料駐車場に駐車。テントを張り、山に持っていけない余ったお酒を消費して就寝。

8/11 天気曇り時々雨
黒部ダム:7:35
ハシゴ段:13:00
真砂:15:05
6時起き、7時のトロリーバスで黒部ダムへ。ダムから歩き始める。内蔵助谷出合いからの登りでは、時折左からの小沢の水を飲み、喉を潤す。内蔵助平付近で最後の水場。その後雨に降られ、雨具を着たり脱いだり。さらにハシゴ谷乗越を越え、剱沢に下り、少し登って真砂沢ヒュッテ横の天場に幕営。

8/12 天気晴れ
真砂:4:30
Dフェース富山大ルート取付き:8:00
終了点:11:30
V VIのコル:13:10
真砂:14:40
この日は午後から崩れるという予報のため、予定の八ツ峰から変更しVI峰Dフェースへ。剱沢〜長次郎谷では多くの登山者が登っていく。予定していた八ツ峰I,II峰のコルへ続く雪渓はズタズタに途切れ、登っていくクライマーがいるが悪そうだ。たっぷり3時間歩いて危ういシュルンドを越え、Dフェースに取り付く。Cフェースは多くのクライマーで渋滞気味、Dフェースも既に数パーティが登っている。富山大ルートは全6ピッチだが、前半を牛山リードで2ピッチで抜け、後半植田リードで2ピッチで抜けた。後半は眺めが素晴らしく、多くのクライマーが来るのもうなずける。VI峰に出てからは八ツ峰の稜線上をしばらく歩いて下り、最後45mくらい懸垂した。


I,II峰のコルへ続く雪渓

8/13 天気曇りまたはガス
真砂:5:00
二股:6:00
三の窓:12:30
前日見たところ八ツ峰は時間がかかりそうだったため、三ノ窓雪渓から三ノ窓へ上がることにする。剱沢を二股まで下り、そこから三ノ窓雪渓を約1000mひたすら登る。雪渓の出だしで薄い部分を歩いていたとき崩落し、植田と錦織さんが少し落ちて緊張する。かなり上がったところで一部雪渓が切れていて、雪渓からクライムダウンした後ガレたルンゼを登った時は緊張した。再び雪渓に戻り、6本爪アイゼンの限界に近い傾斜の雪渓を登ると、岩場に突き当たった。しかし、濃いガスで位置がわからず難儀した。後でわかったが、これはやや左に寄っていたため、チンネの取り付きの方に出てしまったようだ。少し右にトラバースして三ノ窓に出ることができた。

8/14 天気ガス時々雨
停滞
この日は終日ガスで何も見えず、また雨も降り、登れる状況になく一日停滞。牛山所有の23年目のテントが雨漏りが激しくて困った。

8/15 天気ガス時々雨、午後やや回復
(錦織下山)
三の窓:4:50
剣岳:8:00
剣御前:12:30
室堂:14:30


(牛山、植田)
チンネ左稜線:13:00〜17:00
錦織さんは、最終日だったため、朝から一人下山した。
牛山、植田組は昼まで寝たり起きたりしていたが、午後になって天気がやや回復したため、濡れたチンネ左稜線を登ってみた。1ピッチ目植田、III級だが難しかったらしい。2ピッチ目牛山、結局5ピッチくらい登り、ピナクルの上まで行って時間となったため、そこから同ルートを懸垂下降。濡れた岩場を登っても楽しくないし、ガスで景色も楽しめない。ただ、ここまで来て登らずに帰ることになってしまったら悲しいので、少しでも登ってみた。

8/16 天気晴れ〜ガス、夕方雨
三ノ窓:6:00
剱尾根R10取り付き:7:30
コルE:8:30
コルC:12:00
門手前のR6のコル:15:20
R5取り付き:18:30
三ノ窓:20:00
この日も朝からガスで諦めかけていると、となりのテントのパーティーから富山側は晴れている、との声があり、剱尾根に向けて急いで出発する。非常に不安定な池ノ谷左俣をしばらく下ると雪渓が出てくる。アイゼンをつけてさらに下り、情報の通り約1時間でR10付近に達する。しかし、我々はよく分からずに剱尾根末端が見えるところまで下ってしまったため、R10まで登り返し時間をロスした。
R10は見た感じ登れそうで、確かに登れるのだが、落石が非常に不安定で神経を使う。1時間かかってコルEに達する。そこからはハイマツや潅木の藪こぎで痩せた尾根上を進む。コルDまでに一度ロープを出した。コルDからは短い壁が立ちはだかるが、これはどう見てもロープとクライミングシューズが必要なので靴を履き替えて登る。コルCは非常に狭く落ち込んだコルというか溝で、正面に残置スリングがたくさん垂れている垂壁が立ちはだかる。最初これが門ではないかと勘違いしていたため、ルートを探して迷った。結局垂壁部分は人工で越え、右に回り込んで傾斜が落ちたところはフリーで登った。さらに草付き〜藪を抜けると、今度は本物の「門」がガス越しに見えた。
ここで既に3時20分となり、このまま登ったら日が暮れることが明白となったため、ここから敗退を決める。ここから池ノ谷左俣に下るR6とR5のルンゼを懸垂下降する。1回目ハイマツから50m、2回目残置ハーケンに1本打ち足して50m、少し歩いて下りR5に入る。3回目白樺の木に直掛けで30m、4回目潅木にかかった残置スリングで50m、少し歩いて左の潅木から5回目50m、右のルンゼに入り、ハーケンにかかった残置スリングで6回目25mで雪渓横に降り立った。なお、下降中に雨に降られてずぶ濡れとなる。雪渓から流れる水を水筒にたっぷり汲んで、暮れゆく夕焼けを見ながらヘッデンをつけて池ノ谷を登り、ようやくテントに戻った。夜は満天の星が見られ、天の川が綺麗だった。


コルDの壁




8/17 天気晴れ
三ノ窓:5:00
剱岳:8:40
剣山荘:12:00
室堂:15:30
扇沢:17:20
下山日は天気に恵まれた。明るくなった5時頃4泊もした三ノ窓を出発。剱岳までの稜線は時々非常に悪く、特に長次郎の頭からの下りは極度に悪かった。ロープを出すべきだったかも。あとは問題ないが、10時間以上歩いたため、疲労困ぱいで室堂に到着。

感想:晴れていた八ツ峰VI峰Dフェースはとても快適で楽しく、多くの人がここに来る気持ちがわかる気がした。一方後半は天気に恵まれず、チンネは試登のみ、剱尾根は時間切れとなった。しかし、剱尾根からの敗退の懸垂下降では、雨の中支点を探しながらの下降となり、良い訓練になった。次回来る時には綺麗に登りきりたいものだ。(記録:牛山)