白馬主稜
2019年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーYK、DS(記録)
期間:2019年4月28日

山行タイム:
2:50猿倉〜5:00白馬尻着(内ルートミス1h)、5:25発〜7:30[峰(2234m)〜8:40(2492m先)〜10:15核心直下着(渋滞待ち、)11:25発〜11:40白馬岳山頂、12:30大雪渓下降開始〜14:00白馬尻〜14:50猿倉

当初の計画では
27日、猿倉〜白馬主稜〜白馬山荘(小屋泊)
28日、白馬三山縦走〜鑓温泉〜猿倉
という計画であったが、事前の天気予報で27日の天候が芳しくない。3月のような寒気が入り強風・降雪も見込まれ、山行日の前数日間は山も雨が続いていた状態。雪崩のリスクも気になる。
様々な気象データを検討し打ち合わせた結果、
「28日、猿倉〜白馬主稜〜大雪渓〜猿倉」
ワンデイでアタックする計画に変更し、出発日を1日遅らせることにした。

27日
16:00、八王子集合。いざ猿倉へ。
GWで中央道の渋滞があるかと思って早めに出発したが予想に反して順調に進めた。
20:00、猿倉駐車場到着。
既に駐車場の半分くらい埋まっている。テントもちらほら。若干風が残っているが、駐車場はほぼ積雪なし。気温0℃。念のためわかんを持ってきていたが置いていくことにした。テントで晩飯と晩酌を済ませ、21:30就寝。

28日
2:00、起床。
満天の星空、北斗七星がよく見える。月と土星が大接近しているらしいが残念ながらよくわからなかった。

2:50、猿倉発。1230m。
猿倉山荘裏手から歩き始める。トレースはまばらで風雪で消えかかっている。夏道の砂防工事専用道路沿いに歩いて行こうとすると途中でトレースが切れて引き返した跡がある。我々も少し戻りトレースがある方へ戻った。(この辺りで多分後述のルートミスをした。)

4:00、白馬尻付近と思いきや長尻沢1500m付近...
痛恨のルートミス。かなり序盤で鑓温泉方面の登山道のトレースに引き込まれたようだ。ヘッ電行程のため周りがよく見えていなかった。反省。
GPSで現在地を確認し、デブリで埋まった長尻沢を下って1400m付近から左へと尾根を少し巻き砂防工事専用道路へ合流した。

5:00、白馬尻着。1550m。
1h弱のタイムロスではあったが日の出と同時に到着。まだリカバリーは効く。モルゲンロートが非常に美しい。その上、無風快晴。自然と気持ちが上がってくる。
白馬尻にはテント5張くらい。3、5人パーティが主稜へ先行しているのが見える。トレースない想定で気合を入れていたので少し残念。

5:25、白馬尻発。
登攀用具・アイゼンを装着しスタート。大雪渓のデブリを横切り主稜末端の登りやすそうなところから取り付く。 ここから主稜の尾根上までは標高差約700m弱アップ。最初の体力的核心だ。数カ所小さなシュルンドはあったが概ね雪は切れておらず、気温もマイナスで締まっており、疲れはするが登りやすい。コンディションはかなり良い。

6:30、1850m付近の小尾根に乗った場所。
小休止。ソロで取り付いている登山者がすぐ後ろを歩いている。

7:30、[峰(地形図上2237m)通過。
多分地形図上の2237mピークが[峰だと思われる。白馬主稜は山頂をT峰とし[峰まで連なった尾根となっているが、正直小ピークがあり過ぎて現地と地形図上のどれが何峰で一致しているかまで正確にはよくわからない。(そもそも地形図上のどのピークを何峰としているのか正確にわからないためどうしようもない。ネット情報も諸説・通説ありくらいで公式?は不明。)とりあえず地形図上で現在地は把握できているので良しとする。

7:40、2300m付近の小ピーク着。
[峰で先行5人パーティが休憩していたので少し先の窪地で休憩。白馬主稜の全容がよく見える。順調なペースで上がってこれた。昨日の降雪具合でタイムリミットに引っかかるようであれば最悪引き返すことも想定していたが、この調子なら大丈夫そうだ。

8:00、同発。
快適なスノーリッジと雪壁が続く。ルートは細い1本尾根なので登りは間違えようがない。写真を撮りながら平成最後の雪稜を満喫する。

8:40、2500m付近(地形図上2492mピーク先)通過。
尾根上にテント設営跡はなかったが、この辺りから数カ所2-3人テントくらいの幕営スペースが見受けられた。整地すればもう少し大きくても張れるか。

9:00、2600m付近着。
小休止。おそらくW峰あたりだろうか。三号沢が落ち込んでいる。振り返ると越えてきた峰々が波打っており、後ろを歩く人達がインスタ映えしている。隣の杓子尾根もダイレクトに杓子岳へ突き上げていて楽しそう。小蓮華尾根もよく見える。小蓮華山から小蓮華尾根への下降はのっぺり開けていて小尾根がいくつかありルーファイは視界がないと難しそう。

9:10、同発。
頂上直下の雪庇がよく見える。例年の記録写真と比べると今年はそこまで大きく発達していないようだ。雪庇の一番小さいところへ辿るラインもイメージできた。今日のトップを登る先行6人が見えた。疲れているようでだいぶペースが落ちていたためすぐに追いついてしまったが、抜くほどのスペースもないのでトレースに感謝しつつ後ろをついていった。山頂直下の渋滞が危惧された。三号沢側も白馬沢左俣側も両側切れており踏み外さないよう慎重に進む。

10:15、頂上直下、核心手前着。
60°、60m、まさにそんな感じの印象だった。遂にここまで登ってきた。猿倉から標高差約1700m、アタック装備とはいえ結構疲れた。
核心は見たところ雪もまだ腐っていないのでロープを出すほどの技術的難しさはなさそうだが、万が一踏み外せば白馬沢左俣側へ数百m滑落するリスクがあり絶対落ちてはならない雪壁であった。念のため1Pロープを出すことにした。
フリーソロで3人抜けるのを見守り、後続の3人パーティがロープを出して登るのを待つ。我々の順番はその後。山頂目の前にして1h以上待った。長すぎだが天気が良いのでそこまで苦ではない。

11:25、登攀開始。
一番ビレイポイントと思しき岩場の基部に1本ハーケンが打ってありそこでスタンディングアックスビレイしてもらった。DSリード。
先行パーティを見て分かっていたことだが、この雪壁、50mロープでは抜けた後の安定したビレイポイントまで届かず、雪庇の直下でロープいっぱいになってしまう。最低60mはないと満足なビレイはできないだろう。我々は50mロープだったので雪庇直下に着いたらスノーバーを1本打ち込んで一瞬コンテ状態で少しYKに登ってロープを伸ばしてもらい、雪庇を越えたら即座にスタンディングアックスビレイで体制を作ることにした。
後続パーティは10名近くの団体でロープを2本繋いで登っていた。

11:40、白馬岳(T峰2932m)山頂着
パートナーとガッチリ握手を交わした。
山頂から空を見上げるとなんとハロができている!幻日環がくっきり現れてしかも環水平アークまでできている!別の場所にも虹がかかっており、なかなかお目にかかれれない気象現象と登頂の喜びで今日一テンションが上がった。タイミングが実に僥倖である。
白馬主稜組以外は山頂にはおらず、お互い写真を撮りあった。360°の眺望、日本海や能登半島、妙高・火打、剣岳や毛勝三山がよく見える。今年の夏に予定している剣岳のチンネや八ツ峰が見えて気合が入った。同日別山行の野反湖BC方面も天気が良さそうだ。

12:30、同発。
名残惜しみつつ山頂を後にする。夏道沿いに下降開始。

12:45、白馬山荘通過。
大雪渓からかなりの人数が登ってきていた。スキーヤーも混じっている。大雪渓は単調な下りが続くのでスキーが羨ましかった。デブリの痕跡が所々ありだいぶ落ちきった様相だったので雪崩の心配はあまり感じなかったが、気温が上がってきていたので休憩を取らず一気に駆け下りた。

14:00、白馬尻着。
やっと安全地帯。朝と比べると雪が汚く山肌が黒々としてきていた。

14:20、同発。
ショートカットしながら駐車場までダイレクトに下降。

14:50、猿倉駐車場着、無事下山!

かなり疲れたが、自分の中で12h行動で雪稜1700mのアップダウンを1日で歩くことは可能という1つの目安はできた。夏に予定しているビアンコグラートはこれ以上に登るというのでまだまだトレーニングを積まなくてはならない。

下山後は倉下の湯へ再訪。白馬駅で解散した。YKは翌日も乗鞍BCに行くということで相変わらずなタフネスぶりであった。

白馬主稜はアルパインを始めた当初から登りたい登りたいと思っていたのになかなかチャンスを掴めなかった憧れのルート。平成最後の登山をとても良い形で締めくくることができてホッとしている。
最後に、今回同行してくれたパートナーに感謝します。ありがとうございました。