北ア・丸山中央山稜
2014年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーCL 結城,小川,尼子(記録)
日程:2014年5月3日〜5日

17年ぶりに訪れる丸山中央山稜はどんな顔で迎えてくれるのか。ちょっとワクワクしながら今回の山行を迎えた。前夜PM10:00八王子集合,結城号にて扇沢へ。AM1:00過ぎ着。無料駐車場にはすでに何台も停まっている。車の脇にテントを張って仮眠。

5/3 天気:晴れ後雨
(タイム)7:05黒部ダム発〜11:00すぎ内蔵助平〜13:30ころ標高2000m付近(幕営)

AM5:00起床。空気はひんやり冷たい。支度をしてダムへのトロリーバス乗り場へ向かう。ここ数年連続して扇沢へ来ているが,どうも登山者より観光客とスキーヤーが目につく。
これも時代の流れか?バスは,AM6:30発が第1便。

AM7:05ダム発。ダムの登山者用出入り口はまだ除雪が済んでおらず,2メートルを超える雪の上まで梯子がかかっていた。乗り越えて下へ少し降りたところで身支度をする。対岸の丸山南峰は雪がほとんどついてなく,やぶ漕ぎを強いられそうだったので,内蔵助平を回るコースを採る。時間が経つにつれ気温は上がり,暑い。ときどき雪面を踏み抜いては嵌っていたのは誰?ときおり吹く風がとても心地よい。私たちのほかに2パーティ入っている。相前後しつつ黒部川沿いに歩き,内蔵助谷へ入って少し上がったところで,行く手を岩に阻まれた。まるで沢登りの岩場のようで,岩に土と枯草が張り付いていて見事にこけてしまい,泥だらけ。結城Lからお助けロープを出してもらって切り抜けたが,その上もこれまた岩。夏道が一段上にあることに気が付き,またもやロープを使って脱出。他の2パーティも苦労しているようで,結局ロープを出していた。あとは内蔵助平までタラタラと登って行く。ぐさぐさで歩きづらいところはあるが,雪の量自体はそれほどでもない。今年は少ないのか?

11:00すぎに内蔵助平で1本取りながら進行方向を確認。中央山稜との合流点であるコルは標高1950mほど。休憩地点の少し先のところから大きく左へカーブしていく。上部は少し傾斜がありそうなので途中でアイゼンを付けた。GWの残雪期山行が初めての小川は,食糧のいっぱい詰まったザックの重さもあってか,なんとなく辛そうに見える。このころから曇り空になり,コルへ抜けるころには雨が降り出した。悪い予報だけはよく当たる。夕方までは雨模様との予報だったので,テン場探しをしたところ,少し上がったところにいい場所があった。どうもテン場の跡らしい痕跡あり。テントを張り終わって宴会を始めるころには本降りになっていた。結城Lが担ぎ上げてくれたプレミアムモルツ2本で乾杯!
夕方6時過ぎにはすでに快晴。後立山連峰から針ノ木岳の先まで一望に見渡せた。夕焼けに染まった鹿島槍がカッコいい。前線通過のため,夜は寒かった。夏用シュラフの尼子は一晩中寒い思いをしていた。真ん中に寝せてもらったが,あんな大きなテントじゃねぇ。
PM8:00就寝。

5/4 天気:晴れ 
(タイム)5:08テン場発〜12:00すぎジャンクションピーク〜14:40ころ富士ノ折立〜15:15標高2850m付近(幕営)

AM3:00起床。夜半の気温の低下により,雪はよく締まっている。AM5:08テン場発,アイゼンをつけて快適に?内蔵助峰を超え,広い尾根を1時間も歩くと暑い。休憩しながら行く手に見える中央山稜を眺める。岩稜帯が黒々と見えている。

かつては雪面が有効に使え,一度もロープを使わなかったが,今日はどうかな?ハーネスをつけて緩やかな尾根を詰めていくと,急勾配のリッジになる。岩を内蔵助側に回り込んで雪面を上がるが,傾斜が強そうなので念のためロープを出し,フィックスして小川にはアッセンダ―を使って登ってもらう。さらにその上もロープ。登ってみるとそんなにきつい傾斜ではなかったが,滑落すればアウト。そのあとはリッジを忠実にたどり,岩峰は左側を回ってブッシュを使って木登り。ひたすら登り続けて,ジャンクションピークに到着したのは12時過ぎ。最初,ここを富士の折立と勘違いしたが,稜線にぶつかっていないのでおかしいと思い,よくよく周囲を見ると,山小屋が右手前方にみえる。内蔵助山荘のようだ。目指す富士の折立は左手にある。あと少し。

前方の岩稜帯目指して再出発。ちょっと歩いた先の左手ブッシュに雷鳥がいた。白と茶のまだら模様がなんとも可愛らしい。ずっと見続けているわけにもいかず,先を急ぐ。開けた雪面を行くとまた岩峰にぶつかる。ここもロープを出し,ルンゼ状の岩場を結城Lリード。氷が詰まっていて少し登りづらいと感じたところは皆同じなのか,残置ハーケンが2本あった。ビレイ点の先のナイフリッジを渡っていく。その先の岩稜帯は,手前の岩稜は右側から辿り,途中で右手の急雪壁をトラバースし,また岩稜へ戻り,雪のついたルンゼを登っていく。ここから,若干疲れのみえる小川にはロープをつけ,スタカットで進んだ。眼下には黒部湖が,バックには後立山連峰が青空に映えている。

PM2:40ころ?に富士の折立に到着。すでにタイムアウトなので,真砂岳方面に下りながら,今日のビバーク地を探す。かなり風が強くなってきた。明日は荒れ模様の予報なので,できれば稜線ビバークは避けたいが仕方ない。下りきったところですでにPM3:15ころ。ブロックを積み上げて本日のテン場とする。はるか下には雷鳥沢のテント場が見える。今振り返れば,時間は遅いがまだ陽は高かったので行動すればよかったのかもしれない。
それにしても,今回は岩稜部分をたどることが多く,よくロープを使った。かつての快適な「岩陰のポケット」はどこにいった?平成9年当時とは,雪の量も質もまったく違う,異なる一面を見せてくれた中央山稜というルートの難しさ,面白さを十分に味わった1日だった。無雪期の縦走登山にはなかったブッシュ登りや急雪壁の登りは,何もかも初めて尽くしの小川にはどう映っただろうか。
強風を逃れてテント内に入り,ホッと一息,結城L持参のココアがうまい!明日の行程をどうするか,結城Lと話し合う。別山乗越経由で雷鳥沢から室堂へ向かうか,立山連峰を超えて一ノ越山荘経由で室堂へ行くか。夏道タイムは後者が少し早いが,この強風の中をまた3000mまで上がり,一度も歩いたことのないルートを通ることに少々ためらいを感じていたところ,結城Lが前者にしてくれたのでちょっと安堵。PM9:00就寝。

5/5 天気:曇り後風雪,烈風 
(タイム)5:08テン場発〜7:45別山乗越〜10:05室堂〜11:45扇沢

AM3:-00起床。一晩中,強風が吹きまくっていた。トイレに行くにも覚悟が必要。テントをたたむのも一苦労で,中に誰か入っていないと本体が吹き飛ばされてしまう。準備を整え,AM5:08出発。真砂岳はピークを行かずにトラバースした。途中で小川が足首をひねって捻挫してしまう。この先歩けるか一抹の不安がよぎったが,幸いにも何とか歩けそうとのこと。強風の中をゆっくりではあるが進んでいく。ときおり突風が吹きまくり,何度も耐風姿勢を余儀なくされる。こんな強い風は,厳冬期にこのエリアに入って以来のことだ。アウターに着ていた夏用の雨具の袖とフードがバタバタ煽られ,空気抵抗を大きくしている。夏道が出ている斜面を登り返すと半分雪に埋まった祠らしきものがある。どうやら別山らしい。乗越まであと少し。烈風は止まない。

AM7:45乗越着,やっと休憩が取れた。剣御前小屋は営業中。乗越から雷鳥沢へ下っていくが,こんな悪天候の中を登ってくる人がいるのには驚いた。ルートの目印に,ピンク色の旗がところどころに立てられている。膝の爆弾が痛み出した尼子はゆるゆる下山とあいなり,遅れをとってしまった。雷鳥沢のテン場は快適空間のようだ。あちこちにテントが張られている。近くの斜面では,子供たちがスキーと戯れていた。みくりが池一帯はこの時期でも硫黄の匂いがする。室堂が近くなるにつれ,スニーカー族が増えてきた。AM10:00過ぎに室堂着。10:30発のトロリーバスに間に合った。アルペンルートを乗り継いで扇沢にはAM11:45着。上原温泉に寄って,一路東京へ向かうころには,すでに大渋滞が始まりつつあった。
結城さん,小川さん,お疲れ様でした。

【雑感】
17年ぶりに訪れた中央山稜は,かつてとは違った様相だった。あのときは,ロープをまったく使わず,終始雪面を通り,雪の照り返しに眼が痛くなり,「岩陰のポケット」でサングラスをかけたことを思い出す(そのときのメンバー2人はすぐにサングラスをかけなかったので雪目になり,翌日は停滞するはめに・・・)。今回は,はい松のブッシュを使って木登りしたり,急雪壁でロープを出したり,最後は岩登り。あまりにも前回と違うのは,どうも雪の少なさ,つき方,状態の違いにありそう。持っていったヘルメットは被るべきだった。
30代だった17年前と今とでは,多分スピードが全然違う。初心者の小川を連れていたので速度的にはラクだったとはいえ,もっと鍛えねば。それにしても,このオンボロ膝はどうにかならないものか・・・。

【雑感・小川】
 立山連峰の美しい山並みとスケール、そして厳しい自然環境に自分の小ささ、未熟さを痛感させられ、結城さんと尼子さんにお世話になりっぱなしの3日間。
これまで写真でしか見ることのできなかった景色が、自分の眼下に広がったとき、何とも言えない気持ちになった。
またしても初めて尽くしの山行だった(山を始めて1年だから当たり前なのだが・・)。
初の2泊雪山山行・・・自分の荷物の多さに後悔&反省。急登時の筋力のなさを痛感。
初の雪壁、雪のナイフリッジ・・・「落ちたら死ぬかも」という湧き上がる恐怖心を抑え込みつつ踏み出す一歩は、一動作ごとに時間を要した。
初の耐風姿勢・・・「人は浮く」ということを実感した。容赦ない強風に、耐風姿勢をとりながら思わず笑ってしまった。
山行中はつらいことも多かったが、終わってみれば、とても楽しい山行だった。
自然(山)に挑むなんて大それたことは考えないけれど、どんな状況にも対応できるようにいつかはなりたいな。