栗子山塊・滑谷沢
2013年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー:西野(記録)、錦織
日程:2013年7月13〜15日

吾妻山の北側、福島県と山形県の県境に位置する栗子山。栗子山に端を発する滑谷沢は、今年購入したガイドブックいわく「ブナの森をのんびりと楽しめる沢」という。3連休を使って、沢の遡行・下降を繰り返す癒しの沢旅をしたいと計画をした。当初は大勢で楽しくと考えていたのだが、次々とキャンセルが出て、結局メンバーは2人となった。

7月13日(曇りのち雨)
東栗子トンネル7:00…二ツ小屋トンネル8:00…烏川橋8:10…滑谷沢出合10:15(11:00出発)…二俣12:50(幕営)
 前日21:00に南浦和駅に集合し、錦織車で東栗子トンネルまで向かう。福島飯坂ICを過ぎたあたりから雨が降り始め、トンネルに着いた時点ではやや強く雨が降っていたため、トンネル入口の駐車場にて車中泊とする。
 翌日は曇り。駐車場の対岸から登山道に取り付く。かつては車も通る国道だったらしいが、今は草に覆われている。1時間ほど歩くと立派なトンネルが現れた。もちろん灯りはついておらず、トンネルの中央部は暗く歩きにくい。トンネルを抜け、少し歩くとボロボロの烏川橋が現れる。橋を少し進み、左側にうっすらついた踏み跡から河原に下り、入渓した。
 まずは烏川を下降する。緩やかな流れで、広葉樹の林が明るく心地よい。よく見ると岩魚がたくさん泳いでいるのが分かる。河原やナメ歩きを楽しみながらのんびり歩くうちに、滑谷沢との出合に到着。錦織が釣りをして、あっという間に岩魚を2尾ゲット。すばらしい! 滑谷沢に入り、水量がやや多くなったが、快適に歩き続けて二俣まで到着。二俣の手前、右岸に広いビバーク適地がある。すでにテントが一張あったが、少し離れたところにツェルトを張り、焚き火をする。雨で濡れた流木はなかなか火がつかず苦労したが、なんとか焚き火ができた。錦織の釣った魚(1人1尾!)をおいしく味わった。しかし夜8時頃に土砂降りの雨となり、宴会は強制終了。

7月14日(曇り時々雨)
二俣7:30…奥の二俣10:15(11:00出発)…栗子山付近稜線14:00…滑谷沢左俣18:00(幕営)
 雨は夜中遅くまで降り続いていたらしく、昨日より水量がやや増し、川の水は少し茶色く濁っている。昨年の棒沢を思い出す。二俣から先は小滝やナメ、釜が連続する。どの滝もロープを使わずに登れて、登れない滝には分かりやすく歩きやすい巻き道がついている。きれいなブナの林が心地よい。天気がよければ釜で水遊びをしながら歩きたくなるところだ。奥の二俣あたりで一瞬晴れたので、大休止にして前夜に濡れたものを一気に乾かす。
 奥の二俣は左を進み、さらに890m地点の二俣を左に。沢はやがて南に向かう。水が涸れ、灌木の薮になってきた。なだらかな地形で背丈以上の灌木に覆われて視界がきかない。コンパスを頼りに進むのだが歩きにくいところを避けながら歩くうちに方向が分からなくなってきてしまった。見かねた錦織が先頭に立ち、なんとか栗子山の稜線、山頂のやや南側に出ることができた。ここでかなり時間をロスしてしまったため、山頂往復は諦め、先に進む。稜線に出たあたりで雨風がひどくなり、ガスで視界がきかなくなってきた。稜線は踏み跡があるが、1202ピークのコル手前で踏み跡が完全になくなってしまった。西側の山麓に向かう登山道(マーキング多数)にいったん入ってしまったが、すぐに気づいてもとに戻る。コル近くから、三本松沢左俣に下った。錦織のルートファインディングで、ほどなく沢に入ることができた。土砂降りの雨に流された土砂で、沢の水は焦茶色、全然きれいじゃない。三本松沢は右、中左俣の三本があって左俣が一番簡単と聞いていたのだが、ロープを出すほどではないものの滝がいくつも現れ、ヒヤヒヤする。ちっとも癒されないと思いながら下り続け、中俣、右俣と合流をしていく。幅広のナメ沢となり、しばらく進むと滑谷沢との合流点に到着。出合には大きな滝があるので、回り込むように進み、少し進むとキャンプ場のようなビバーク適地があった。
 翌日は3時間ほど歩くだけ、そのうち2時間は林道歩きの予定なので、夜遅くまで焚き火で宴会。夜中にたくさん蚊に刺された。

7月15日(雨時々曇り)
滑谷沢左俣7:20…大平橋8:30…烏川橋11:30…東栗子トンネル12:30
 朝から降ったり止んだりの天気。滑谷沢左俣を遡行していくが、きれいなナメが嬉しい。よく見ると岩魚もずいぶん泳いでいた。1時間ほど歩くと、立派なコンクリート製の大平橋に到着。ここで遡行は終了、あとは林道歩きだけ。
 林道といっても、道は灌木や草に覆われ、踏み跡が見えないほど。しかも雨上がりで水をたっぷりと含んだ草を踏みながら行くので、服がずぶぬれになる。めげずに道を進んでいたのだが、歩き始めて50分ほどたったところで、道がなくなってしまった。道の右側が大きく崩落している。もしかして土砂崩れで林道がなくなってしまったのか? …結局薮をこいで進むが、歩きづらくなってきたため沢(烏川)に下りる。烏川橋より手前に降り立ったと思い、下降していったが、いけどもいけども橋が出てこない。もしかしたら行き過ぎてしまったのか?と戻る(遡行する)。40分ほど戻ると、初日に通ったボロボロの橋が頭上に現れた。かなりのタイムロス、それでもなんとか林道に戻れた。あとは来た道を進み、東栗子トンネルまで戻った。帰りに飯坂温泉の共同浴場「波来湯」で汗を流し、帰京。
ブナの森で癒しの沢…と計画をしたが、結局癒されたのは初日のみ。天気もあまりよくなく、内容的にはかなり渋い山行となった。錦織さんのはからいで先頭を歩かせてもらったが、ルートファインディングにもかなり課題を残してしまった。よく歩かれているメジャーな山域では味わえない、詰めや下降の難しさも感じた。しかし深い森は心地よく、渓は美しかった。今後も機会を作って東北の沢を楽しんでいきたいと思う。

遡行図は「ヤマケイ入門&ガイド 沢登り」より転載