北鎌尾根〜西穂高岳
2000年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
L 久留島、M 牛山(記)

4月29日
信濃大町 505-545
七倉 615-645
高瀬ダム 740
湯俣 1230-1300
千天出会 1620 C1
天気はおおむね晴れ(行動10h)

28日夜の急行アルプスで新宿を出発し、朝5時頃信濃大町着。そこから、堀内 パーティの6人といっしょにタクシーで七倉に向かう。今年は、まだ高瀬ダム まで道が通じていなかった。七倉で登山計画書を提出し、アスファルトの道を 延々と歩く。高瀬ダムの大きな石が積み重なっているダム部分は直登したほう が早い。さらに、ダム湖の横を過ぎ、林道を経て、登山道に入る。荷物が重く、 湯俣まではかなりゆっくりペース。湯俣でくつろぐ堀内パーティを尻目に、気 を取り直して千天出会いに向かう。湯俣〜千天出会いまでは、踏み跡ははっき りしないが、雪に着いている足跡をたよりにすすむ。高巻き、徒渉を繰り返す。 久留島は、靴のまま徒渉して、靴のなかまでびしょ濡れになっていた。私は石 の上を選んで渡ったので、靴に浸水はしなかった。湯俣〜千天出会のほぼ中間 の左岸にある、つるつるの岩のトラバースのところは、補助ロープがついてい たのでそれほど難しくなかった。しかし、ロープが終わったところで2人とも 川に落ちそうになった。この川の水の中の石はけっこう滑りやすい。高巻きも、 何カ所か怖いところがあり、ちょうど懸垂下降のために用意していた10mの細 引きを木に引かけて手がかりに利用した。4時を過ぎて千天出会に着いたので、 疲れていることもありそのあたりにテントを張った。

4月30日
起床 230
C1発 430
P2取り付き 500
P2 730
P3 900
P6 1200
P8 1515
独標手前 1630 C2
天気は午前は晴れ、午後曇り(行動12h)

この日は、終始2つの男女ペアのパーティーと前後して行動した。夜明けとと もにC1を出て、すぐにP2の取り付き付近に達し、川を徒渉して尾根に取り付く。 途中急斜面の泥付きを通過する。ここは、木の根がホールドとなって楽しく登 れたが、久留島は怖がっていた。他のパーティはザイルを出していた。取り付 きから2時間半でようやくP2に達し、とても消耗する。P3まで行くと視界が広 がり、P5,P6や硫黄尾根などが見えてくる。P5,P6はルート情報の通り、P5は左 側を、P6は右側を巻いて通過する。P5の左を巻く時は、雪が腐っており、スタ カット2P+コンテ1Pで通過する。P6の右は最初ノンザイルで行くが、途中でス タカットにした。他のパーティはコンテで通過していた。P7の下りを懸垂2Pで 抜け、そこから長い長いP8までの登りを登る。とても疲れていたが、なんとか P9を越えたコルでC2とした。

5月1日
起床 230
C2発 515
独標登攀開始 615
独標 750
P15 1330
北鎌平 1430
槍ヶ岳 1630-50
肩の小屋の天場 1730 C3
天気は、独標を越えるまではガスで吹雪、その後徐々に良くなり、槍ヵ岳 では晴れた。(行動12h)

この日朝は天気が悪い。C2から岩場を巻いていくとすぐに独標の目の前に出る。 おもしろそうなので直登することにし、ザイルを付ける。1ピッチ目のクーロ アールは急な雪面が10mくらいで、フィックスロープがついていたが雪に埋まっ ていた。2ピッチ目は雪のついた岩稜。3ピッチ目はザイルのいらないような雪 壁。独標から先は、やせた岩稜がつづく。独標を下り、P11を登ろうとしたと ころで、巻くか直登するか迷い、結局スタカットで直登した。その後、下ると きに補助ロープを2.5m程度使って岩に支点をとり、懸垂で下りた。さらに進む が、視界が効かないので、どれがP12〜P14なのか良く分からない。一度ひとつ のピークを登って下りようとしたときに、その先が妙に下りすぎていて不審に 思っていると、視界が晴れて間違っていることが判明したことがあった。その 後、視界が次第に良くなり、P15付近から後方を見渡すことができた。このあ たりで、昨日いっしょだったパーティーに抜かれ、トレースができたので、ルー トファインディングの必要がなくなった。北鎌平周辺には、広い幕営適地がい くつもあった。前方が晴れていれば、さぞかしかっこいい槍が岳の眺めが見ら れそうだったが、残念ながら霧で見えない。槍の穂先の登りは、しばらく先行 パーティーのトレースをたどって雪壁を左上する感じでノンザイルで登り、最 後の2ピッチだけスタカットで登った。穂先に出たときは、突然太陽が目に飛 込んできて、感動。槍のピークからの下りは、はしごやくさりが出ているので、 全く問題なし。肩の小屋からもう少し南に下ったところにある幕営地でテント を張った後、ビールを買いに小屋へ走る。

5月2日
起床 315
C3発 535
中岳 630
南岳 745- 805
キレット 945-1005
北穂小屋 1520-1535
北穂北峰と南峰のコル 1550 C4
天気はキレットを下るまでは快晴、北穂の登りでは曇りで、北穂ではガス テントに入った後、夕方吹雪+かなり激しい雷

この日1人の単独行者とすれ違っただけで、他に登山者はいなかった。 C3から南岳までは快晴の中をとても気持良く歩く。景色も最高。南岳で交信 (結局これが最後に通じた交信となった)のあと、キレットへ下る。下りのルー トは、標識などがなくて晴れているのにわかりにくい。半分以上下ったところ にはしごが2つあった。ここで、岩角を利用し、2回懸垂で下りる。(あとから 考えると懸垂でなくても下りられたかも。)この壁を下りきって、最初に現れ た一番低いと思われるコルで休憩。しかし、ここからが核心だった。岩につけ られたペンキの標識に従って進むが、かなりやせた岩稜を下らなければならず、 馬乗りになって進む部分が2ヶ所。クライムダウンも数回。さらに北穂の登り にかかると、悪いトラバースもいくつも出てくる。しかし、結局ザイルは付け ずに通過した。最後にたぶん30mくらいの長い急な雪壁を登り、ようやく北穂 山荘に着く。そこから、天場を探して北穂高岳に向かう途中、北峰と南峰のコ ルにいい天場が見つかり、オーバーハングした岩の下にテントを張り、C4とし た。夕方から夜にかけて、天気予報の通り、激しい雷が1時間以上にわたって 続き、恐ろしかった。

5月3日
起床 430
C4発 815
涸沢岳手前 1030
涸沢岳 1315
穂高岳山荘の上の天場 1330 C5
天気は、最初時々晴れたが、それ以降はガスの中だった。視界は、わり と良く、時々50mくらいあったように思う。

天気予報で、この日悪いことが予想されていたので、ほぼ行動を諦めていて遅 く起きる。すると、テントの風上側が高さ50cmくらいの吹きだまりとなってい て、食事の後除雪する。その後天気が回復する兆しがあり、出発することにし た。この日、先行パーティーは全く無し。

北穂〜涸沢岳手前のコルまでは、最初のみ視界があったが徐々に悪くなり、と きどきルートを間違う。涸沢槍でかなり下を巻くところを登りすぎてしまい、 懸垂一回、その後ザイル2本分をペツルボルトで止めたフィックスロープがあ り、それを伝って、トラバースした。これは、夏道に沿っているようだった。 涸沢岳の登りは、くさりがかなり出ていたので、ザイルを出すこともなく行く ことができた。はしごが2つあった。涸沢岳の下りは全く問題なし。

5月4日
起床 230
C5発 510
小屋で天気待ち 515-720
奥穂高岳 800
天狗のコル 1250 C6
天気は、小屋を出発したあとはおおむね晴れたが、岐阜側からの風がとて も強かった。

5時過ぎにテントを出発するも、ガスで視界が悪く、歩ける天気ではなく、小 屋に入って天気を待つことにする。テレビのニュースで、九州のバスジャック の犯人逮捕の映像を何度もながしていた。7時過ぎようやくガスが切れたので、 登り始める。小屋の人に、今年は雪が多く、厳冬季なみの積雪量だと言われた。

奥穂の登りは、はしごが2本とくさりが何本かあった。奥穂〜ロバの耳までは、 非常にやせたナイフリッジを進む。この時は、逆行する単独行者がいてトレー スがついていたため、楽に通過できたが、怖いことにはかわりない。コース情 報の通り、ロバの耳は右側を大きく下がって巻き、ジャンダルムは左側を巻く。 ロバの耳の右巻きでは、一部快適なアイスクライミングを楽しむことができた。 ジャンダルムの左巻きでは、一度下りすぎて先行の私が腐った雪を踏み抜いて ちょっと危なかった。その部分だけザイルをつないでスタカットで通過した。 やはり、東面(信州側)は日射で緩んでいるときには、注意が必要だ。その後は、 岩稜歩きが続くが、岩稜にはだいぶ慣れてきたのでもはや難しさは感じない。 しかし、風が強くて気温はやや高く、飛雪がサングラスに付着して何も見えな くなったりして、不快だった。天狗のコルには、だいぶ早い時刻に着いたが、 次の日に晴れることはわかっていたので、ここでC6とした。コブ尾根の頭を過 ぎたあたりから、この辺りのルートを登ったパーティーに3〜4回会った。

5月5日
起床 240
C6発 505
西穂高岳 655-730 ?
西穂山荘 820-905
上高地バスセンター 1040-1123
松本 1310 頃

天気はずっと晴れ、風も弱い。

C6から稜線に出るところで、くさりがあったのでそれをつかんで登る。単調な 岩稜を下ると、西穂高岳についた。そこで、最後の眺めを楽しんでから、西穂 山荘に向けて下る。独標を過ぎるととたんに人が増える。西穂山荘でアイゼン をはずし、グリセードや尻滑りで上高地に向かう。夏のコースタイムよりもだ いぶ早く下ることができた。上高地に下りた後、梓川沿いを散歩しつつ、バス センターまで歩く。バス停は、帝国ホテル前の方が近かったが、混雑時には始 発からでないと乗れないことがわかり、バスセンターまで行って正解だった。 河童橋で記念撮影をしたあと、新島々を経て松本へ、松本では駅ビル内の杵屋 でカツ丼定食大盛りを食った。

感想

今回の山行では、非常に日程を無駄にする事なく、非常に効果的に行動するこ とができたと思う。途中で計画よりも先行したが、最終的に計画通りに下山し た。雪が多く、また状態も悪かったため、北鎌でいっしょだったパーティーは 計画を変更して槍沢を下ってしまったようだが、我々は全行程を消化すること ができた。雪については、2人とも今回が初めてのため、難しかったのかどう かわからない。今回で、特に難しかったのは、大キレット〜北穂間、涸沢槍周 辺、ロバの耳とジャンダルム周辺だろうか。北鎌尾根がメインと考えていたが、 結局そのあとの槍〜西穂高の方が難しく感じた。特にザイルを付けずに難所を 通過すると緊張を持続しなければならないのが、つらかった。しかし、この山 行でテクニックや岩に対する感覚が向上したはずなので、良しとしたい。

北鎌尾根P15より独標方面を振り返る

ジャンダルム手前