利尻山西壁中央リッジ
2000年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
牛山、鈴木(えぞ山岳会)

2000年4月16日〜18日
15日 東京→札幌→稚内
 12時25分発のAIR DOで、千歳空港へ。札幌では、ICI石井スポーツ北12条店 でちょっと買出しをしたあと、特急スーパー宗谷で稚内へ。22時16分南稚内着。 鈴木宅に1泊。札幌→稚内は夜行を含めて1日4本しかなく、5時間かかる。東京 →稚内直行便は、1日1本で、値段が高い。札幌→稚内の飛行機もあるが今回は 考えなかった。いずれにしても行きにくいところだ

16日
6時50分  稚内発(フェリー)
9時    鴛泊着
9時30分  西大空沢入り口(しおり橋)
12時40分 大空沢ベースキャンプ(約800m付近にあるレリーフのそば)
15時   左リッジ第1コル
16時   雪洞完成 C1

 朝6時50分発のフェリーで、利尻島鴛泊へ。鴛泊のフェリーターミナルで、 親切な「先生」と呼ばれる利尻島住民が、なぜか登山口まで車で送ってくれる ことになり、交番に計画書を提出後、送っていただいた。タクシー代が助かっ たばかりか、時間も節約できた。
 ここでスパッツをつけ、最初大空沢に沿った林道を登り、林道がなくなって からは雪に埋もれた川原をひたすら歩く。途中1ヶ所右の沢に入り込みそうな ところがあるということだったが、よくわからなかった。約3時間で通常ベー スキャンプを張る場所に着く。今回は、2日目の行動時間を増やすため、壁の 取り付きのすぐ手前の第1コルまであがる。このあたりでは、ガスのため視界 は20m以下となる。ルートは、非常にわかりにくい。頼りになる目印は右俣と 左俣の分かれ目にある掌岩と言われる岩だが、にせ掌岩もあるとのことであま り安心できない。しかし、なんとか第1コルを発見し、雪洞を掘る。20時頃就 寝。

17日
3時    起床
4時45分  C1発
5時30分  中央リッジ取り付き
15時   グローブ雪田
18時   南峰
20時30分 雪洞に入るC2

 予定通り3時起床、4時半過ぎに出発。すでに明るくなっており、多少視界が いいときには、中央リッジの上までぼんやりと見える。私には、ほぼ90度に切 り立った巨大な岩の塊に見え、予想以上に難しそうに思われた。
 まず、大斜面と呼ばれる大きな雪壁を右上する。ここは、雪崩の危険がある が、早朝に通過できてよかった。その上からザイルをつける。最初の取り付き の岩のトラバースから緊張を強いられる。それよりグローブ雪田までは、50mザ イルいっぱいで6ピッチで抜けた。状況は、細めのブッシュの頭が出ている急傾 斜の雪壁で、所々氷結している。氷結部分はアックスが良く決まり、登りやす い。ブッシュをつかんで登る部分は、かなり腕力を消耗した。ブッシュもアッ クスも決まらない部分では私は怖かったが、鈴木はあっさり通過する。また、 雪の表面の下は寒さのためかしもざらめ(こしもざらめ?)状になっており、 ぐさぐさでスタンスが決まらない。鈴木が以前ゴールデンウィークに行ったと きよりも雪が多く、ランニングを取るにもホールドにするのにも、ブッシュを 掘り出さなければならないので時間がかかった。
 今回つるべで行くはずが、私は2ピッチ目のリードで腕力も戦闘意欲も減退 してしまい、以後鈴木にトップをずっとやってもらう。
 4ピッチ目にこのルートで最も難しいと言われる唯一の露岩が出てくる。ここ は、足元が決まらずかなり苦労して登る。あとは、ひたすらブッシュ登り、ま たはダブルアックス。
 グローブ雪田で初めて行動食を食べ、水を飲むことができた。ここは、いい ビバークサイトになりそう。ここから、南峰リッジに入る。利尻山はピークが3 つ(北峰、本峰、南峰)あり、南峰リッジは南峰にまっすぐつきあげている、 やさしいリッジだ。ここまでの中央リッジに比べ、傾斜も落ちてかなりやさし く感じる。ここは、5ピッチで抜ける。ほとんどランニングをとらなかった。  18時頃南峰に着き、明るいうちに着いたことを喜ぶ。ここから、懸垂約10m で南峰の基部に下りなければならないが、通常支点とするブッシュが雪が多く てなかなか見つけられない。そこで、ピッケル2本を使った回収可能な支点を つくって懸垂することにする。びくびくしながら、下るが支点はしっかりして いた。しかし、下からどんなに引いてもザイルは回収できない。仕方なく、私が 上りかえしセットしなおして、もう一度下るがやはり回収できず、鈴木が登り かえして今度はスノーマッシュルームを支点にして下った。この支点は下りき る前に壊れたそうだ。ザイル回収をしながら雪洞を堀り、20時半ころに雪洞に 入る。うまくザイルが回収できたら、北峰を越えて、長官山の小屋まで行った のに、残念だった。なお、C1,C2ともに携帯電話がよく通じた。夕方になってよ うやく天気が好転しはじめ、夕焼けがきれいに見えた。それ以前は、ずっとガ スだった。

18日
4時30分  起床
6時    C2発
7時    北峰
8時20分  長官山小屋
10時45分 キャンプ場
11時50分 鴛泊フェリーターミナル
12時20分 フェリー発

 18日中に札幌に帰るために17時前の汽車に乗りたく、そのためには12時のフ ェリーに乗らなければならない。それに間に合うように、6時にC2を出る。相変 わらずのガスの中、雪稜を北峰に向かう。1ピッチだけザイルをつける。北峰で は写真撮影をする。ここは、夏山で通常ピークとされているところ。このあと、 長官山まではガスで視界が悪いと非常に迷いやすいと、何度も通っている鈴木 が言う。地図とコンパスのにらみっぱなしで下るがそれでもたびたびルートが 違っていることに気づき、登り返したりする。しかし、わりと早く長官山に着 くことができた。小屋は、入り口が完全に埋まっており、掘り出すとしたらか なり時間がかかっただろう。前回正月に鈴木が来たときには、それほど埋まっ ていなかったとのことだ。このあと、しばらく迷いながらくだり、標高600mく らいでようやくガスが晴れ、迷いから開放される。このあとは、単調な雪面を えんえんと20cmくらいうまりながら歩く。日射があるせいか、木に積もった雪 が融けて、びしゃびしゃと雨のように降ってきて、晴れているのにびしょぬれ になる。キャンプ場から下はアスファルトの上を歩いて、ちょうどフェリーに 間に合う時間にターミナルに着いた。

感想
 鈴木さんはえぞ山岳会にほぼ同時に入会した人で、中央リッジを1度登った 経験があった。2年半の私の在籍期間中はよくいっしょに登った仲だった。しか し、私のブランクの間に彼との間にだいぶ実力の差がついてしまっていて、今 回は彼にかなり頼ってしまった。反省!しかし、中央リッジはあんなに立って いるとは思っていなかった。反省!

南峰で雪洞製作中