明神岳主稜〜前穂高岳
2021年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバーDS
期間:2021年9月19〜20日

山行タイム:
9/19(日)、上高地(0:40)7番標識(2:45)明神X峰(1:10)U峰(0:50)明神岳(0:25)2880m付近台地C1
9/20(月)、C1(1:10)前穂高岳(1:25)岳沢小屋(1:05)上高地

計画を固めた時には既に穂高岳山荘の予約制テント泊は空きなし。小屋泊まりはいくらか空いているようだがこの御時世なのでソロで水を背負ってビバークの計画を立てた。

9/19(日)、晴れ

5:30-7:05、松本バスターミナル→上高地
ナショナルパークライナー。上高地行き2台目でいくつか空席はあるがそこそこ混んでいる。
7:20、上高地発
8:00、7番標識、 南西尾根は登山道並みに踏み跡明瞭。朝露でかなり濡れる。
8:40-8:45、2000m付近
9:25、2270mからトラロープが出てくる。 少しだけ岩登り、ロープが道沿いに張ってある。
10:05-10:20、2508m展望が開ける。 急登続きと全装に加え2日分4.5Lの水の重荷で体力をだいぶ奪われ今ひとつペースが上がらない。
11:05-11:20、明神X峰2726m、 目印の木製ピッケルは健在。単独者に追いつく。話をしたら同じルートの計画だった。 V峰は岳沢側から巻く(直登可能)。 踏み跡は明瞭だが所々自分の目で判断する必要が出てくる。
12:20-12:35、U・Vのコル ハーネス装着。
12:45、U峰、 U峰懸垂。残地ロープが垂れていてクライムダウンできないことはなさそうだが、ここのためだけに持ってきた登攀具を使わない手はない。 ずっと一緒に並走していた方と合流したので即席チームを組み、お互いの50mダブルロープで懸垂下降1回で時短することにした。 目測25m程下ったところのテラスに懸垂支点あり。通常50mロープ1本ならここで切ってさらに15m程懸垂。 しかし折角の時短作戦も下降中に前から来る2人組がロープを出して登り始めてしまったため、結局真ん中のテラスで渋滞。落石が気にならないのだろうか。掛け声も姿も対面から確認できていたはずなので少し待ってほしかった。 コルに着くと東稜を登ってきた3人組が下ってきた。明神岳主稜は結構下りの記録も多い。 1回での懸垂距離は約45m。50mロープダブルでギリギリだった。
13:30、T、Uのコル、懸垂終了 本峰への登りが1番ガレガレで落石に注意を要した。
13:35、明神岳 山頂標識などは何もない。西穂への続く稜線が素晴らしい。
13:50、小コル 事前情報のビバークポイントを探しながら進む。
14:00、小コルから少し登り返した台地に1-2用テント1張り分のスペース発見。 ザックを置いて奥明神沢コルまで空身で偵察するが幕営適地なし。残雪期はここから岳沢に下れる。 コルへの下り途中に古びた懸垂支点いくつかあるがクライムダウンできた。 コルもツェルトビバークくらいならできないことはないが無雪期は快適ではない。テントは厳しい。落石の可能性も高い。
17:18、地震発生(飛騨地方震源、震度4、M5)
呑気に昼寝していたら突然下から突き上げるようにやってきた。脆い岩だらけという場所が場所なだけに山で経験した地震の中では1番恐怖を感じた。 数値を見ると大したことないなと思うのだが、実際は火山でも噴火したかくらいに思った。今いる場所が足場から崩れでもしたらどうしようかと本気で思って外に出て色々確認してしまった。 明神穂高一帯の岩場は大崩落。雷が落ちたようなボコーンという破裂音を何度も発しながら大岩が崩れてガラガラと尾根・沢関係なく岩雪崩が起き砂煙が高く舞い上がっていた。そして西穂〜前穂の稜線からの落石は当然岳沢に集中してくる。
寝る頃になっても余震と崩壊音が続く。自然落石の音が絶えない。前日まで台風による雨が降ったこともあり地盤が緩んでいたのかもしれない。 在京に念のため安否メール。 計画の西穂縦走はほぼ諦める。しかし最短のエスケープルートである重太郎新道から岳沢経由上高地への登山道もあれだけ落石が集中したのを見た後では安全とはとても言い切れない。 久しぶりに命の危険を感じた。行動中にこの地震だったり幕営地の選択を間違えていたらヤバかった。
21:30、就寝
微風。明後日には満月ということでヘッドランプが要らないくらい明るい。

9/20(月)、晴れ

5:00、起床
モルゲンロートが美しい。山が1番幻想的に見える瞬間だ。
6:10、C1発 この異常時だと普段なんてことない明神から前穂までのガレ場すらリスクを感じる。どこでも歩けるがどこでも歩いていいわけではない。極力スピーディーに通過。
6:25、奥明神沢コル 前穂東壁が見えてきて登攀意欲をそそるが、ボロボロそうで落石の心配が付き纏う。 コルから10分程登り返した先に1-2人用のスペースあり。落石を考えると適地とは言い難い。
7:20-7:55、前穂高岳 山頂に5張り分程整地されており幕営可能。山頂に張れば良かった。
8:10、紀美子平 登山道の荒れはなし。 こんな状況でも連休最終日とあって登ってくる人はかなりいる。
9:20-9:30、岳沢小屋 天狗沢は通れるらしいが落石リスクは高い。
10:35、上高地
10:40、松本行きバス乗車 バスめがけて急いで下山したのでギリギリ間に合った。
山は最高だったけど地震は恐ろしかった。運良く無事下山できて本当に良かった。また少し落ち着いた来年、穂高エリアに足を運ぼうと思う。