谷川岳敗退記
2016年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー米田、西野、牛山、中山、阪辻、尼子(記録)
期間: 2016年10月10日

『3連休は錫杖岳!!』と意気込んでいたが、あいにくの雨模様で錫杖岳は中止。最終日1日の『晴れ』の予報をあてにして前日夕方東京を発った。土合駅には既にどでかいテントが数張り、我々は隅っこでおでんをつつき、小宴会。翌日の登攀を期待しつつビバークし、朝4:00起床。なんとまだ霧雨が降っているではないか。早くも意気消沈している私。天気の回復を祈りつつ、とりあえず一ノ倉沢出合へ向かった。霧雨は途中で止んだが、上空は霧が立ち込め陽射しが出る様子もない。出合で幽ノ沢を登攀する米田・西野組と分かれ、残る4名はとりあえず取付きまで行くことにした。
テールリッジは思ったほど濡れてはいなかったが、凹状ルートの取付きまで来ると、壁から水がボタボタと滴り落ちている。阪辻・尼子は変形チムニーの予定なので、さらに少し先まで行ったが、こちらも同じ。しかも1ピッチ目から2ピッチ目にかけてルートの横には小川のせせらぎのように水流があるではないか!!牛山・中山の凹状ルート組もシャワークライムになること間違いなし!!とのことで、2組揃って敗退を決定。

 南稜や中央稜にはそれぞれ何パーティか入っているようだが、転進する気も起きず、下降を開始した。でも時間はまだ早い。それならばと、昨年の集中のときに下降できなかった一ノ倉沢を出合まで下りてみることにした。
 行きのアプローチでヒョングリの滝の落ち口へ懸垂下降したが、ここを登り返さずにそのまま沢を下降してみる。左岸の懸垂ポイントからまず25m懸垂を1回、さらに50m懸垂1回、25m懸垂1回、計3回で、チョックストーンのような大岩のあるところに降り立つ。この大岩の横(右岸)に残置のあぶみシュリンゲがかかっており、ここをさらに懸垂で下降するが、けっこう水しぶきが跳ねかかる。前回は、懸垂で下りたところでその先の下降点がわからず(真っ暗闇だった)右往左往し、懸垂で下りたところを登り返し、さらに右岸のルンゼをヤブ漕ぎしながら高巻きの登山道まで登り返したが、今回は明瞭。右岸を岩沿いにたどって岩を回り込むと、擦り切れたシュリンゲがあり、少し先にまた懸垂支点があった。

ここで50m懸垂して下りると、往きのアプローチで高巻きの登山道へ向かう岩場の下のところに到着。ロープをたたみ、あとは歩いて出合まで下降した。過去の記録の中には左岸をずっと辿っているものがあるが、大岩のところは、左岸には何も残っていない。出合に着いたのは午後1時過ぎ。幽ノ沢へ入った米田・西野組は、2時間弱登ったところで、ナメ沢の水量が多く敗退して出合まで戻り、堅炭尾根〜国境稜線〜西黒尾根下降に転戦していた。
雪渓が綺麗に詰まっていれば楽に登下降できる一ノ倉沢だが、ヒョングリの滝が姿を現すときには注意が必要である。下降の方法も選択肢をいくつか用意しておき、臨機応変に対処することも必要であろう。今回登れなかった凹状、変形チムニーは来季の楽しみとして、また訪れたい。