南稜や中央稜にはそれぞれ何パーティか入っているようだが、転進する気も起きず、下降を開始した。でも時間はまだ早い。それならばと、昨年の集中のときに下降できなかった一ノ倉沢を出合まで下りてみることにした。
行きのアプローチでヒョングリの滝の落ち口へ懸垂下降したが、ここを登り返さずにそのまま沢を下降してみる。左岸の懸垂ポイントからまず25m懸垂を1回、さらに50m懸垂1回、25m懸垂1回、計3回で、チョックストーンのような大岩のあるところに降り立つ。この大岩の横(右岸)に残置のあぶみシュリンゲがかかっており、ここをさらに懸垂で下降するが、けっこう水しぶきが跳ねかかる。前回は、懸垂で下りたところでその先の下降点がわからず(真っ暗闇だった)右往左往し、懸垂で下りたところを登り返し、さらに右岸のルンゼをヤブ漕ぎしながら高巻きの登山道まで登り返したが、今回は明瞭。右岸を岩沿いにたどって岩を回り込むと、擦り切れたシュリンゲがあり、少し先にまた懸垂支点があった。
ここで50m懸垂して下りると、往きのアプローチで高巻きの登山道へ向かう岩場の下のところに到着。ロープをたたみ、あとは歩いて出合まで下降した。過去の記録の中には左岸をずっと辿っているものがあるが、大岩のところは、左岸には何も残っていない。出合に着いたのは午後1時過ぎ。幽ノ沢へ入った米田・西野組は、2時間弱登ったところで、ナメ沢の水量が多く敗退して出合まで戻り、堅炭尾根〜国境稜線〜西黒尾根下降に転戦していた。
雪渓が綺麗に詰まっていれば楽に登下降できる一ノ倉沢だが、ヒョングリの滝が姿を現すときには注意が必要である。下降の方法も選択肢をいくつか用意しておき、臨機応変に対処することも必要であろう。今回登れなかった凹状、変形チムニーは来季の楽しみとして、また訪れたい。