谷川岳集中登攀 一ノ倉沢 南陵、中央カンテ
2015年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
メンバー米田、尼子、西野、野田、小川、中山、阪辻
期間: 2015年10月10〜11日

記録:
中央カンテ

米田、野田、阪辻
天候が思わしくなく初日の中央カンテしか登れない可能性が高くなった時点で、自分のなかでの今回の山行を、来年以降の谷川岳でのクライミングの予行演習と位置付けて、@一ノ倉沢烏帽子沢付近までのアプローチの確認、Aフォローで登る際の最速化とギア受け渡し・ロープワークの円滑化を目的とした。
8時30分登攀開始。1〜2ピッチは印象の薄い。米田さんをビレイしながら、南稜パーティが順番待ちになっているのをボンヤリ眺める。野田さんがムービーを取り出し、南稜チームの様子を撮影している。3ピッチ目、バンドを左上しカンテに出るところが少し難しく、おもしろい。4ピッチ目も快適なカンテを登っていく。「この3〜4ピッチが中央カンテのハイライトだよ」と米田さん。このあたりから猛烈に岩が脆くなり始める。ガバだと思ってつかむと、そのまま崩れてしまうようなホールドが多く閉口する。5ピッチ目のチムニー、7ピッチ目はボロボロなうえに難しく、「米田さんはよくここをリードできましたねえ」というと、「冬の時期はあのあたりが(以下、略)」と、ぜんぜん違う季節の参考になるような、ならないような解説をしてくれた。あとは段々状で、浮石に注意しながら登ると終了点に到着。12時20分登攀終了。
6ルンゼでの懸垂下降は、西野さんメイン、阪辻サブでロープのセットを行なった。「懸垂後、引く側のロープをリングに通しておく」という指示があったが、これをするとどんなメリットがあるのか、理解できなかった。狙いがちゃんと理解できていれば、もう少しスムーズに下降できたかもしれないので、これは反省であり今後の課題。登攀だけでなく、アプローチや下降・下山も学ぶべき点が多いことがわかった。

記 阪辻


谷川岳一ノ倉沢南陵
尼子・中山パーティ 記録

10月10日(土)
8:50 南稜テラス到着。
先行パーティ2組が登った後に、西野・小川組が取り付き、我々はそれに続いた。

9:40 1P目、リード中山。
はじめは左上して、バンドを右にトラバースし、チムニーを登る。ルートがS字を描くため、プロテクションのとり方に注意しながら進んだ。バンドまでは順調。チムニーの取り付きが少し被っており戸惑ったが、豊富なホールドとスタンスに助けられた。チムニーの中ほどまで進んだ時に、頭上から懸垂下降してくるパーティに遭遇。一度は道を譲ってくれたが、落ち着いて登りたいので、と先に降りてもらった。

10:20 2P目、リード尼子。
大きく右上してから、バンドを左に出て直上。先行パーティは、右上せず、はじめから直上していたようす。そちらにもルートがあるのか。トラバース要素もあり少し緊張したが、ルートは安定していて登りやすかった。

3P目、リード中山。
笹の草付を登る。しっかりとした踏み跡があり、道のようになっているので滑る心配もないが、念のため2ヵ所ほど、笹を束ねてプロテクションをつくった。

4P目、リード尼子。
頭上右手にある岩を回り込むように登る。短いながらも、手元・足元が不安定で、難しく感じた。ピン以外に、ブッシュでもプロテクションをとった。

5P目、リード中山。
6ルンゼ側から入り、馬の背リッジに上がる。途中でロープが重たくなったが、引けるので問題ないと判断して進んだ。しかし、その後セカンドをビレイする作業は、まるで苦行のようだった…。馬の背に上がるまでにとったプロテクションのランナーが短すぎたことが原因。馬の背に上がったところで、一旦ピッチを切ってもよかったのかもしれない。

6P目、リード尼子。5P目で、馬の背をロープがいっぱいになるまで進んだため、最終ピッチの手前までの短いピッチとなった。クラック状の場所を越えるのに少々難儀した。

7P目、リード中山。
真っ直ぐですっきりとしたルート。スタンス、ホールド、プロテクションとも豊富であったが、壁が立っているというプレッシャーに負け、最後にバランスを崩してしまった。少々悔いが残る最終ピッチとなった。
13:10 中山、終了点到着。
13:25 尼子、終了点到着。

14:00 懸垂下降開始。
懸垂下降は、各支点で順番待ちとなった。より時間短縮できるロープ捌き(次の支点にロープをセットしながら、前の支点のロープを回収する)を教えていただいた。
16:10 懸垂終了。(本谷バンド出だしの辺り)

 テールリッジ中間部の岩場でヘッドランプを点灯。
17:30 テールリッジ下部スラブ帯へ出る手前の樹林帯から懸垂下降

22:30頃 一ノ倉沢出合到着。

今回は私にとって初めての一ノ倉沢だった。憧れの場所に来ることができたという喜びで、私は終始興奮気味であった。前々から聞いていたアプローチは確かに「核心」で、壁より怖いと感じる場所もあった。また、登攀自体よりも、アプローチ・懸垂下降・下山に費やす時間が長いことも知った。いかに他のパーティよりも早く壁に取り付くか、いかにロープ捌きをスムーズに行うかが大事であることを実感した。
初めての谷川岳で、つるべで登らせていただき、よい経験になった。特に、リード時のルートファインディングとプロテクションの効率的なとり方には課題が多い。
今回パーティを組んでくださった尼子さんと、サポートしてくださった先輩方に感謝いたします。

(文責:中山)


     (南稜組:@尼子、中山、A西野、小川(記録))
天気:10日の日中は概ね晴れ

<コースレコード>
10月10日(土)晴れ
4:00頃 ロープウェイ下駐車場出発
4:40頃 一の倉沢出合到着
5:10頃 一の倉沢出合出発
7:10頃 中央カンテ取り付き 
8:20頃 南稜テラス到着
9:00頃 南稜登攀開始
12:30頃 終了点到着
13:00頃 6ルンゼから下降開始
15:00頃 南稜テラス下到着
17:40頃 一の倉沢出合到着

<山行内容>
10日午前4時にロープウェイ下駐車場に集合(米田車、野田車、中山車にて各々前夜に土合駅に到着し、ビバーク)。
当初、12日までの予定での山行だったが、天気等の事情により、10日のみの登攀となった。
各組に入会2年未満の者を入れての3パーティを結成。
中央カンテ登攀:米田(リーダー)・野田・阪辻組3
10月10日(土)概ね晴れ
4:40 出合い到着。テントを一つ張り、中に登攀具以外を納めた後、身支度。
5:10 出合い出発。
出合いからテールリッジまでの道はドロドロ。途中道を間違えて引き返す。ヒョングリの滝のところで懸垂下降。懸垂地点にはボロボロのフィックスロープがぶら下がっていた。
テールリッジは乾いてはいて登りにくくはなかったが、落ちたらどこまで行くのかわからない。とにかく、滑らないように、途中途中にあるフィックスロープも最大限活用しながら登った。いたるところに支点用のボルトが打たれていたが、この時はこのボルト乱打の意味が分からなかった。
中央稜の取り付きから南稜テラスへトラバース。途中で中央カンテ組の米田さんらと別れ、西野さん先頭で南稜テラスへ向かう。トラバース点は、途中微妙に濡れていて嫌な感じ。「落ちたら確実に死ぬな」と思いながら慎重に通過した。帰りもここを通過すると思うと、先が思いやられた。
8:10 南稜テラス到着
前に女性二人パーティが登攀を開始するところであった。
西野・小川組の後に男女2名のパーティがテラスに到着。その後、尼子・中山組がテラスに到着。後に到着した男女パーティに先を譲り、西野・小川組、尼子・中山組の順で登る。
9:00 登攀開始。 奇数P→西野、偶数P→小川。

【1ピッチ目 30m(W)】
 出だしは順調。案の定、クラックのところで少し戸惑うも、フォローという優位性を生かし、問題なくクリアできた。
【2ピッチ目 30m(W)】
 登るのは難しくなかった。が、2つ目のプロテクションの後、3つ目のピンが見つからず、7m位(もっと?)ランナウトしてしまった。本に書いてあったように右寄りの登ったつもりだったが、もっと右方向だったのか・・。ルートファインディングの甘さと登攀中の視界の狭さを痛感した。
【3ピッチ目 40m(草付)】
 西野さんがロープを引きながらガンガン登る。
【4ピッチ目 20m(V)】
 6ルンゼ側に左上。20m位の短いフェース。左側に切れ落ちているので、かなりの高度感。落ち着いてピンを探しながら登る。途中、崩れる雪渓の雷のような音が耳に入る。これが谷川岳か・・と妙に納得。終了点に着くと前のパーティのリードが登攀中。端のビレイ支点を利用する。
 登攀待ちの状態なので、西野さんとおしゃべり。つるべの際のチェンジの仕方等を教わった。
【5ピッチ目 40m(V)】
 前のパーティを追いかけながらの西野さんリード。ロープを5m位残し、リッジに入ったところでピッチを切った(本来のビレイ点は前パーティが使用していた)。
【6ピッチ目 30m(W)】
小川最後のリード。「リッジから奥壁側のクラックを登る」らしいが、あまりクラックを感じずに終了点到着。「今日はもうリードはない」という安心感で変な達成感。
【7ピッチ目 20m(X)】
南稜の最難関ピッチ。西野さんにリードで頑張っていただいた。
所々濡れていて、登りにくい。フォローの安心感で、A0なしで終了点まで。
12:30終了点到着。西野さんと登攀成功の握手。「初つるべの成功に感動!!」の予定だったが、あまりの寒さで高揚感は半減(今思うと、残念)。
 ここで中央カンテ登攀の米田組と合流。
13:00頃 懸垂下降開始。
 西野・野田・阪辻・小川の4人のグループ構成で懸垂下降を行う。
 トップはすべて西野さん。懸垂支点を探しながらの下降は難しいだろうな。
15:00頃 
6ピッチで南稜テラス下の登山道に到着。
ここから朝来た道を戻る。南稜テラスから中央稜取り付きまでのトラバースは相変わらず怖い。
テールリッジの中間部では、フィックスロープ利用+ロープ一本を利用し、3回懸垂下降。テールリッジ基部では、フィックスロープが下まで届いていなかったので、阪辻さんにシュリンゲで追加してもらい、安全に降りられた(感謝です!)。
日没を意識し、17:10頃ヘッドランプ装着
 ヒョングリの滝の所(朝、懸垂下降した所)を登り返し、登山道に入る。
17:40頃 一の倉沢出合い到着。
     エスパーステントを張り、夕食を準備し、後続組の到着を待つ。
23:00頃 夕食

小川山行感想
 2回目の本チャン、初めてのつるべ。事前の予習もあり、「日本の岩場」に記載のピッチ数で完登できた。
 それまでの訓練山行のおかげ(先輩の方々、ありがとうございます)で、何とか無事終了することができた。
 今回パーティを組んだ西野さんの随所でのフォローや温かい言葉はとても励みになった。ありがとうございました。
 本チャンは岩が登れるだけではダメだということが今回身に染みて分かった。私にもっと歩きのスピードがあれば、もっと早く下山できていたと思う。その点では、一緒に下山していただいた西野さん、野田さん、阪辻さんにはいろいろな場面でのフォローをしていただき、本当に感謝している。
登攀開始までのアプローチ、登攀終了後の下山のスピード。山道を登って下りるということを安全にかつスピーディーに行うことが求められる。「スピードの無さ」は、日照時間が限られ、工程に余裕がない場合、いわゆる「遭難」の危険性を増大させる要素の大きな部分を占めると思う。もっと、山道の登り下りを強くしなければいけないと強く思った。
 いろいろな点で、勉強になり、考えさせられることの多い山行だった。

西野山行雑感
・2ピッチ目:迷っている利香さんに、正しい方向をアドバイスできず申し訳なかった。
・5ピッチ目:馬の背リッジを気持ちよく登れた。
・最終ピッチ:濡れに心が折れて、最後にA0やってしまった(スリングを掴んだ)。
・6ルンゼから南稜テラスまでの懸垂は、4人で効率よくロープワークができたと思う。
(ロープがスタックすることもなく、動作の混乱もなかった。かなり手際よくできたと思います)
・登るのに必死で写真全然撮ってなくてすみません。