メンバー:下田、山田
日程:2009年9月19日〜22日
(行程)
18日:目白(21:30)→扇沢(2:30)
19日:扇沢(6:30)→黒部ダム(6:50)→平の小屋(9:25)→平ノ渡場(10:20)→奥黒部ヒュッテ(12:00)→熊ノ沢出合C1(13:00)
20日:熊ノ沢出合C1(8:15)→下ノ黒ビンガ(9:00)→口元ノタル沢出合(9:50)→廊下沢出合(10:20)→上ノ黒ビンガ(11:30)→金作谷出合(12:10)→赤牛沢出合(14:20)→岩苔小谷出合C2(14:45)
21日:岩苔小谷出合C2(8:00)→立石奇岩(8:45)→大東新道合流点(10:30)→薬師沢小屋(11:20)-(12:20)→赤木沢出合(13:10)→祖父沢出合(14:20)→雲ノ平キャンプ場C3(16:30)
22日:雲ノ平キャンプ場C4(7:00)→水晶小屋(9:00)→湯俣温泉(14:05)-(14:30)→高瀬ダム(16:30)
(記録詳細)
黒部川の上ノ廊下は沢登りを始めたころからのあこがれの沢で、これまでも何度か行こうと計画したことがあった。大学2年のときには久留島さんと計画を立てて信濃大町駅まで行ったのだが、台風直撃で中止になったのだった。
今回秋の大型連休とメンバーの山田さんの予定が合ったことでようやく行くことができた。
【18日】
目白駅に21時半集合。中央道から行く予定だったけど、22時過ぎにも関わらず首都高、中央道が工事渋滞で相模湖まで2時間以上の激混み。仕方ないので関越道から上信越道経由で行くことにした。
扇沢には2時半に着いたが、すでに上の駐車場はいっぱい。一段下の砂利の無料駐車場に止めた。
【19日:1日目】天気:晴れ
朝5時起床。昨日の夜はまだ駐車場に空きがあったのに起きてみるとすでにいっぱいであった。おそるべしシルバーウィーク。
荷物を整理していたときに重大な忘れものに気づいた。なんと下田がアプローチシューズを忘れてきたことに気づく。ここで、最初から沢足袋で行くのかそれともサンダルで行くかの二択になったが、最初から沢足袋で行くのは恥ずかしいのでサンダルで行くことにした。
6時半の黒部ダム行きの始発便に乗るために切符売場へ。すでに長蛇の列ができていた。
扇沢
朝の気温はかなり冷え込んでいて10度を下回っていたと思う。山田さんは上着をザックの中にしまっていたのでウェットスーツを着てかなり目立っていた。
なんとか始発に乗り込み黒部ダムへ。連休ということもありダムは観光放水していた。
スタート!!
黒部ダム
黒部ダムからいよいよ出発。黒部ダム沿いに平ノ渡場までひたすら歩く。途中男女2人のパーティーに山田さんが声をかけられた。
女性 「もしかしてJ&S中野にきている方じゃないですか?」
山田さん「そうですけど…」
女性 「私もよく行くのでもしかしたらと思って声をかけてみました」
山田さん「あ〜!」
ということで山田さんのよく行っているクライミングジムの知り合いの方でした。この方は立川山岳会の方で職場の同僚の方と上ノ廊下にきたとのこと。
平ノ渡場までは2時間半で到着。10時の船に乗る予定だったので何とか間に合ってよかった。
平ノ渡場
平ノ渡場ではまたしても山田さんの知り合いに遭遇。JECCの2人組みで同じく上ノ廊下にきたとのこと。山の世界は狭いなぁとつくづく感じる。
平ノ渡場からは対岸まで船で移動。この船は関電が管理していて、黒部ダムを造ったときに登山道が水没してしまったことから罪滅ぼしに行っているものだとか。これまでなんでこんな慈善事業をやっているのかと不思議に思っていたのだが、なるほど納得。
対岸からは奥黒部ヒュッテまでアップダウンの激しい登山道をひたすら歩く。この道は木の梯子が何度も出てきて非常に歩きにくい。サンダルなので靴裏に梯子がダイレクトに当たるので痛くてしょうがない。それでも1時間半ほどで奥黒部ヒュッテに到着。登山計画書をヒュッテに提出していざ出発!
登山道
奥黒部ヒュッテ
黒部川入渓!!
といっても、今日の行程は熊ノ沢出合まで30分ほどなのですぐに終わってしまった。
左岸の台地にいいテン場を見つけたのでそこにテントを張る。昨日2時間くらいしか寝てないのですぐに休憩。岩魚を求めて本流で竿を出してみたが、全く釣れなかった。夜は焚火をして7時には就寝した。
熊ノ沢出合い付近
【20日:2日目】天気:快晴
朝6時起床。かなり寒い。日が当たるのを待って8時出発。
2日目スタート
黒部にくるのは初めてであるが、それでも水量が少ないことは明らかに分かった。膝上までの渡渉を繰り返して川原を歩いて行くと、下ノ黒ビンガの入口に着く。
下の黒ビンガ
ガイドブックによるとここは泳ぐか巻く必要があると書いてあったが、腰程度の渡渉で難なくクリア。下ノ黒ビンガは50〜60mほどの側壁で迫力のある景色である。
下ノ黒ビンガを過ぎるとすぐに口元ノタル沢が出合う。ここは大淵のゴルジュになっていて泳ぐしかない。しかし、左岸をへつっていくと胸まで水につかったが、案外簡単に突破できてしまった。
口元ノタル大淵
廊下沢出合
その後は旧黒五跡と呼ばれる長大な川原となりひたすら歩く。途中上流から流れてきたものと思われる道標が誰かの手によって立てられていた。
黒五跡の川原
道標
川原を越えるといよいよ上ノ廊下のハイライト上ノ黒ビンガだ。両岸が切り立ってきて圧倒的なスケールで迫ってくる。中でも花崗岩の直獏が非常に美しかった。二人で歓声を上げながらゆっくりと遡行する。天気も良くすこぶる快適だ。
上ノ黒ビンガ入口付近
花崗岩20m滝
上ノ黒ビンガ出口
右岸から大きな滝が出てくると上ノ黒ビンガも終わり金作谷の出合いに着いた。
今日の予定は金作谷までということであったが、水量も少なく予定よりもかなり早く行動できたため、岩苔小谷まで行くことにした。
金作谷出合
金作谷を過ぎるとすぐにゴルジュとなる。ここは水量が多いと右岸を高巻くことになるが、今回は水流越しに泳いで突破。右岸に滝をみるとまたしても大淵。ここも泳いで突破した。天気はいいが、やはり北アルプスの水は冷たい!ウェットスーツをきていたもののじっとしていると唇が震えてくる。
ゴルジュ入口
泳ぐ!
泳ぐ!!
泳ぐ!!!
泳ぐ!!!!
ゴルジュ出口
しばらく渡渉を繰り返しながら進んでいくとゴルジュが出てくる。ここでは昨日の立川山岳会の方と別の3人組みのパーティーが休憩しているところであった。
先に行かせてもらいゴルジュに入る。ここはクランク状のゴルジュになっていて、右岸をへつりながら途中まで行き泳いで左岸に移動。そこからは空身で再度右岸に泳いで突破した。ここは荷揚げのため今回の山行で唯一ロープを出した個所であった。
ゴルジュ入口
果敢に攻める山田さん!
右岸から左岸に泳ぐ!
ゴルジュを抜けたところで下田が渡渉に失敗して流される。山田さんに手を出してもらってなんとか流されずに済んだが、思いっきり左ひざを岩に打ってしまった。
このゴルジュを越えると谷は穏やかになりすぐに赤牛沢が出合う。ここから20分ほどで今日のテン場の岩苔小谷に着いた。
赤牛沢出合
テントを張った後は岩魚釣り。今日はなんとしてでも岩魚の塩焼きを食べようと意気込んで釣りを始める。すると竿を入れて1分ほどですぐに岩魚が釣れた。すぐさま山田さんに報告。そしてその後も20分ほどでもう1匹釣れて難なく岩魚2匹をゲット!
夜は盛大な焚火のもとで岩魚の塩焼きを二人で食べた。沢といえばやっぱり岩魚の塩焼きに限る!
岩魚ゲッツ!!
【21日:3日目】天気:快晴のちガス
朝6時起床。昨日の反省から朝は焚火をして温まる。8時に出発。
出発前には、おとといから前後して歩いていた立川山岳会の2人に会った。これから岩苔小谷をつめて廃道から高天原につめるとのこと。
岩苔小谷の出合いは大きな淵になっていてとてもきれい。すぐに廊下状の谷になるが特に問題になるようなところはなくやがて立石奇岩に着いた。立石奇岩は地面からそそり立っており、まさに自然の造形美。この岩を登った人はいるのだろうか。
3日目スタート
ゴルジュ
立石奇岩
立石奇岩からは穏やかな渓相となりB沢手前で最後の淵が出てくる。ここは左岸に高巻き道と懸垂の支点があったが、左岸をへつって突破。ここを抜けると高天原への登山道と合流し上ノ廊下遡行が終了した。
最後の淵
最後の淵を抜けたところ
ここからは大東新道沿いに薬師小屋までひたすら歩く。途中には釣り師がうんざりするほどたくさんいた。
そしてようやく薬師沢小屋に到着し大休止。連休ということもあり、小屋にはたくさんの人がいた。パスタを食べながら30分ほど休憩。今日はなんとか雲ノ平キャンプ場まで行きたいが、まだまだ先は長い。
薬師沢小屋
薬師沢小屋を出発してからは川原歩きが続く。途中ゴルジュが出てきて直登できない滝があったが、左岸に明瞭な踏み跡があり問題なく通過。50分ほどで赤木沢出合に到着した。
赤木沢出合いは大きな淵になっていてとてもきれい。赤木沢も登ってみたい沢であったが、今回は下山のことを考えてそのまま本流をつめる。
4m滝
赤木沢出合
赤木沢出合から祖父沢出合までは1時間。祖父沢出合からは正面に祖父岳が見えた。ここからは傾斜がきつくなりいよいよつめとなる。休み休み登ると2,300m付近から源頭の様相となってきた。水がなくなり20分ほど歩くと目の前にテントの群れが見えてやっとのことで雲ノ平キャンプ場に到着した。キャンプ場に到着したころにはすでにガスってきていた。
祖父沢出合。正面は祖父岳
源頭付近
雲の平キャンプ場
【22日4日目】天気:ガスのち曇り
朝5時起床。7時出発。雲ノ平キャンプ場はガスの中で視界は50mほどしかなかった。今日は高瀬ダムまでのコースタイム12時間を歩かなければならない。しかもサンダルで。
ときおり霧雨の降る中出発。平坦な道や下りは問題ないのだが、登りになると極端にペースが落ちる。しかもおととい渡渉に失敗したときに打った左ひざが段々痛くなっていてきつい。
それでもコースタイムよりも早く水晶小屋に到着。水晶小屋では百名山の水晶岳に登る登山客でごった返していた。
水晶小屋
そこからはライチョウの群れに会いながらひたすら下山。14時に湯俣温泉青嵐荘に到着した。
ライチョウ君
湯俣温泉青嵐荘
湯俣では、立川山岳会の2人に偶然出会った。昨日は高天原から三俣まで歩いて泊まったとのこと。すごい体力だ。そして今日はこれから高瀬ダムに下山しそこから扇沢までタクシーで車を回収するとのこと。なんと我々と全く同じ行程じゃないか、ということで便乗してタクシーに乗せていただくことにした。う〜ん、今回は何から何までついている。
湯俣からは高瀬ダムまで登山道をひたすら歩いて2時間で到着。ダムには先行の登山者のタクシーが来ていたが、ほかの登山者が遅れているため、我々を先に乗せてくれた。ラッキー!
最後のトンネル
ゴール!!
高瀬ダムからは40分ほどで扇沢に着いた。ここで立川山岳会の2人にあいさつをしてお別れ。大町温泉薬師の湯に入って、信濃大町駅前のとんかつ屋昭和軒でとんかつ定食大盛り(かなりの大盛り)を食べて帰った。
(感想)
今回は何から何まで条件がそろった山行だった。
まず日程。何年に1度しかない秋の大型連休にぶつかったこと、山田さんの日程が合ったことで計画が実行できた。
次に天気。結局下山日に曇った以外はすべて快晴であった。当初台風が本州に向かって直上してきていたので前回と同じく中止になるかと思っていたが、直前になって東にそれてくれた。
そして水量。9月に入ってからあまり雨が降っていないこともありかなり水量が少なかった。そのおかげでロープを出すような渡渉もなく、1日短縮して下山することができた。
ただ、この水量であればグレードは3級くらいではないでしょうか。それでも天気も良く十分楽しめた山行であった。ということで、今回のコースタイムはあまり参考にならないと思います。
一緒に行ってくれた山田さん、そして立川山岳会の方々大変お世話になりました。