谷川岳一ノ倉沢衝立岩ダイレクトカンテ
2003年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
2003年9月27日〜28日
メンバー 牛山、下坂
26日 9時半頃所沢の下坂さんの家の近く発、11時頃水上着、ちょっと一杯の後車中泊

27日 天気晴れ、時々曇り、ガスが下がってくる。
7時15分 一ノ倉沢出会い駐車場発
8時30分 中央稜取り付き点
9時30分 ダイレクトカンテ登攀開始
10時30分 2ピッチ目開始
13時30分 3ピッチ目開始
16時   4ピッチ目開始
19時過ぎ 4ピッチ目終了
22時頃  衝立前沢に入る
1時30分 衝立前沢を下りきって、一ノ倉沢に出る。
2時過ぎ 下るのをあきらめ、ビバーク
5時半頃 下り始める
6時過ぎ 一ノ倉沢出会い

朝はちょっと遅い時間だが、順調に登り、ひょんぐりの滝を越え、テールリッジを登る。 中央稜取り付きから、ザイルを出して、右側のダイレクトカンテ取り付きへ移動。 しっかりした懸垂支点から15m程度下りた所から、下坂さんによる1ピッチ目登攀開始。 ルートがわかりにくいようだったが、問題なくクリア。
さてここからが、本題だ。前回、私は5月にこの2ピッチ目の途中でハーケンが抜けて落ち、 その雪辱戦として来たのであった。そのために、ハーケン15本、キャメロット8個など 多すぎる装備も準備し、気合を入れてきた。しかし、壁を見ると前回の落下の恐怖が一気に 頭の中を占め、完全にビビリモードになってしまった。最初のハングは、微妙なバランスから、 垂れ下がったシュリンゲをつかみ、A0から細かいスタンスを使って一気にアンダーホールドを 取り、キャメロット#0.75をかませて一息つく。そこからあぶみのかけ替えが始まる。さびさび ハーケンやら、さびさびの上にリングが壊れて広がっているところに細引きを結んだもの など、いかにもこわれそうな支点もどんどん使って、せりあがる。前回抜け落ちたハーケン のところには、新しいハーケンが打ち足してあった。たたいたら、効いている音がした。 もうずっと、いつハーケンが抜けるかと思うと怖くて仕方がないが、ビビリながらも登り、 ところどころピンの間隔が遠いところは、きっとフリーで行くのだろうと思って、なんとか フリーも交えて抜け、最後にガバをつかんで体を上げたところで、終了点着。リードで2時間 もかかってしまった。こんな怖いルートはもういやだ、というのがこのときの本音。私が ビレイしているときに、すぐ横の雲稜第1を登っていた二人がニコニコしながら空中を下りてくる。 上がぼろぼろなので下りてきたそうだ。
下坂さんが1時間でフォローし、続けて3ピッチ目をリードしてもらう。3ピッチ目のほうが ボルトの割合が多く、割と安心して登れる。しかし、セカンドで3ピッチ目を登ったときも やはりビビリモード全開であった。 そして、4ピッチ目牛山リード。すでに16時。夕闇が迫る。しかし、初っ端からルートを間違え ピン2〜3本分左に登ってしまった。本来は右に行かなくてはならない。なんとかビレイ点に 戻って右側を登り始める。最初は人工の割合が大きいが、徐々にフリーが多くなってくる。 しかしなかなか進めず、どんどん暗くなってくる。もうとにかくピンを探して、ピンのあるほうへと、 登ったりトラバースしたりを繰り返す。そして最後にハーケンやボルトが連打されたトラバースを 抜けて、木のある終了点に到着。18時。すでにピンがかろうじて見つけられる程度の明るさだった。 セカンドの下坂さんは、ほとんど真っ暗の中を登ってくる。最初ヘッドランプなしで登っていたよう だが、なぜそんなことができたのか全く不思議。途中でザックからランプを出して登ってくる。 滝沢の3スラを登っていたパーティの明かりは、すでにビバークに入っているようだ。一ノ倉出会いの 明かりも良く見える。きっとわれわれのヘッドランプの明かりも、彼らには良く見えていることだろう。 (きっと馬鹿にされていることだろう)。なんとか、19時過ぎに登攀終了。
終了点から、やや踏み分けっぽい笹の中を20mくらい進んだら、木にシュリンゲがいっぱいついた、 懸垂の支点が見つかった。休憩をとる。下坂さんは、ツェルトもあるし、ビバークしようかと 言っていたが、私はこの北稜は一応下った経験もあるし、たぶんコップスラブ以外はルートも はっきりしているので下れると思い、また早くビールを飲みたいモードであったため、下降する ことにする。懸垂下降2ピッチでルンゼを抜け、3ピッチ目は空中気味でがけを下りて、コップスラブ に着く。暗闇の空中懸垂はとても気持ちが悪い。なんとか、フィックスロープを見つけ、さらに 1ピッチ懸垂。さらにスラブを歩き回って衝立前沢への入り口と思われる支点を見つけて、休憩。22時。 ここから先は歩いて下れる。しかし、水のない沢を下りていくと、コップスラブの上の壁の上に 出てしまった。ルートを間違えた。ちょっと登り返し、やぶをこいで衝立前沢に入る。あとは ヘッドランプの光でひたすら沢をくだり、最後の滝と思われるところに出る。そこから懸垂2ピッチで ついに一ノ倉沢の本流と思われるところに出た。しかし、すぐ上には見慣れない滝があり、この沢 自体見たことがない様相。私が以前衝立前沢を下ったときは、雪渓で埋まっていたので、場所が よくわからない。とりあえず下れるだけ下ろうと、沢を下りていき、沢をへつっていくと、ちょっと 大き目の滑滝の上に出た。懸垂の支点はあるが、滝を覗き込むと途中で水がジャンプしていて、30m はありそうな大きな滝だ。これは下手すると危険だということで、衝立前沢に戻ってツェルトを かぶってビバークすることにする。2時。ヘッドランプを消すと、空一面に星。沢の中なので、空は 狭いが、こんなにきれいな星空は久しぶり。しかし、すでにオリオンが上ってきていて、時間も遅い。 それほど腹も減っていないので、水だけ飲んで、雨具を着て、ツェルトをかぶって寝る。

28日
さて、5時頃起きて、下坂さんがヘッドランプの明かりが見えるよと言う。上を見上げてみると、 すぐ上を登山者が歩いていた。実はひょんぐりの滝を越えて懸垂して下りるところのすぐ下に いたのだった。明るくなってから、昨日見た越えられない滝にたどり着くと、なんと10mもない 滝だった。しかも、登山道もすぐそばを通っていた。あっさり登山道に復帰し、6時過ぎに一ノ倉 出会いの駐車場に着いた。天気もとってもよく、帰るのがもったいないくらいだったが、未練なく 家路に着く。疲れました。

感想
やっぱり時間かかりすぎだろうか。しかし、怖いのでこれ以上は速く登れなかった。 やはり、実力がぜんぜん足りないのだろう。もう少し時間がたてば、また同じようなルートを 練習しようと言う気になるかもしれない。 夜に下降を続けたことは良いことではないかもしれないが、急がずにだめならいつでもビバーク に入ろうというつもりだった(言い訳ですけど)。
(記 牛山)

2ピッチ目を登る下坂さん

3ピッチ目を登る下坂さん

4ピッチ目終了点、すでに真っ暗

下坂さんのページの記録