谷川岳一ノ倉沢烏帽子沢奥壁南稜(単独)
2001年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)

2001年9月22日土曜日 晴れ
記・三苫 育

 最近エイドソロに凝っていた私は、体中ギアで埋め尽くされ、おまけにロープでがんじがらめにされたまま、数時間をかけてようやく1ピッチ登るというスタイルに、いささか嫌気が差していた。そんなとき久々に顔を出した集会で提案されたのが、連休を利用しての一ノ倉の「変形チムニー」であった。パートナーと登るのは久し振りだったし、ルートもフリー主体とあって、私の心は思わず浮き立ったのであった。
が、
 前日の雨のため、壁が濡れていることを懸念した今回のパートナー堀内・牛山両氏は土曜日の計画を中止し、日曜から登ることになってしまった。日曜に用事のあった私は大ショック。あまりのショックにフラフラとまたも独り一ノ倉を目指したのであった。
 当日は私の予想した通り、快晴。しかし昨夜の出発が遅かったので一ノ倉出会いについたのは十時ごろだった。私は前から行きたいと思いつつも行かずじまいだった南稜を目指す。雪渓のない一ノ倉へのアプローチは初めてだったが、カメラマンのおじさんに助けられたり(この時点でソロでないという話も・・・)、フィックスロープを使ったりしながら、なんとか南稜テラスまでたどり着くことができた。
 一ノ倉は大賑わい。変形チムニーには3、4パーティーが取り付いていて渋滞もよう。衝立にも中央稜にもクライマーが見えた。南稜テラスにもまるで一家心中でもしたかのように靴やらザックやらが散乱している。しかしとりあえず見える範囲には誰もいなかったので、私はバックロープだけ引いて取り付いた。11時半ごろ。
1ピッチ目、W級。チムニーの出だしに足がないがガバガバなので問題なし。
2ピッチ目、V級。どこでも登れる。
3ピッチ目は緩傾斜帯に入るが、先行パーティーが懸垂してきたので、30分位待たされる。
4ピッチ目、V級。リッジ手前のテラスに出る。ここでも上で声がしたので、また20分位待って安全確認をしてから登る。
5ピッチ目?リッジ上に出るが、このへんでピッチの区切りがよくわからなくなる。リッジ上は前半は簡単だが、後半はちょっと難しい。が乾いていたので快適だった。広いテラスに出ると、おそらく核心部と思われるフェースが待ち構える。想像していたよりも随分と小さくて傾斜もなかった。しかし滴るぐらい見事にずぶ濡れである。先行パーティーがまだ登っていたので10分くらい待つ。ここではロープをつけることにした。大昔の本で読んだ「単独登攀におけるロープを二重にして確保」というのを試してみた。これはビレイポイントの残置スリングにロープを二重にして通し、ハーネスと結び、ランニングビレイをとる時にはいちいちハーネスからロープを外して通すというものである。もちろんこんなので落ちたら止まるわけがない。あくまでも精神的なものである。しかし唯ひとつの利点としてはピッチ終了後にいちいち懸垂しなくてもロープを回収できるという点である。ホールドは細かいというほどではなかったが、濡れていて恐いのでA0してしまった。相変わらずヘボである。13時前に登攀終了。待ち時間もかなりあったから、実質登っている時間は30分くらいだろうか?
登攀終了後は一ノ倉岳へと向かった。しかしルートファインディングがいいかげんだったせいか、猛烈な藪漕ぎやら、南稜よりも悪い岩稜を突破するはめになった。一ノ倉岳に15時前着。そこからのんびりと谷川岳本峰、西黒尾根、巌剛新道を歩いて道路に出たのは18時半頃だった。多分、無雪期においては、南稜を登るのが、下から一ノ倉岳に行く最も早い方法だと思う。ロープウェイを使うのを除けば。