甲斐駒ヶ岳−赤石沢奥壁・左ルンゼルート
1998年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
1998年10月20〜21日 猪熊・宇都宮

<10月20日(火)>
19日夜、中央線で日野春へ。タクシーで甲斐駒竹宇神社へ
10:30 竹宇神社発
15:30 黒戸尾根7合目

<10月21日(水)曇りのち雪のち雨>
5:30 7合目発
7:30 奥壁左ルンゼルート登攀開始
12:00 5ピッチ終了点
14:40 左ルンゼルート取付き
15:30 7合目
19:00 竹宇神社
折角、週間予報で晴れの予報だったので、休みをとったのにどうも天気が思わしくないらしい。それでも行ってみようということになって、夜の中央線に乗る。乗り継いで日野春へ。ここからタクシーで竹宇神社へ。ヘッドランプを灯して黙々と黒戸尾根を登る。黒戸尾根は初めてだったが、同じような傾斜の登りがずーっと続き退屈だ。途中やせ尾根もあったが問題なし。7合目の小屋は夏用と冬用両方あるが、冬の小屋も毛布があり快適と言う事だ。我々は7合目の小屋のご親切に甘えて少し休憩をとらせてもらい、朝食まで御馳走になってしまった。小屋の主人は天気が崩れるので心配されたが、予定通りに出発し、8合目には6時に到着。そこから左に踏み跡を辿ると、奥壁の美しい全容があらわになった。日本では珍しい花崗岩の岩場。いいねー。さて、左ルンゼルートの取付はピンが少なくどこがビレーポイントか分からずまごまごしてしまう。1ピッチ目は顕著なハングの左に沿うような形でルートが伸びているが、取付きはじめた途端に雪が降り始める。この時期の雪だからまず積もらないだろうという甘い考えで前進したがここで引き返せば良かったとあとで後悔した。1ピッチ目はかなり傾斜が強く、フリー部分も多いので難しい。2ピッチ目はルート図ではフリーと人工のミックスと書いてあるが、フリーのみで登れる。ここを登ると広い第2バンドに出る。ここからまたルートが分かりにくいがやや左から取付きを右上するように上がって行く。そしてハングを右から回り込む。この2ピッチは1ピッチで行くことも可能。しかし、このピッチは雪が積もり始めるし、水流を通らなければならず、寒くて死にそうだった。この辺から手の感覚が怪しくなる。さて、5ピッチ目は最初のトラバースが雪が積もってバンドが滑り怖いったらありゃしない。その後はルンゼの中をやや左上ぎみに登っていくが良くない。とにかく平均的な難しさが続くので息をつく暇がないルートだ。天気のせいもあるだろうが。とにかく、5ピッチ目をビレーしている時に凍っているザイルを操作しているせいで手の感覚が完全に無くなり、降りようと相棒に提案する。相棒も「そうだね、おいたがすぎたね。」と言って同意したので降りることにするが、雪が詰まってザイルが流れず苦労する。さらに傾斜が続くので広島ルート同様、岩から引き剥がされないようにすることも大切だ。第2バンドからはピンが少ないので大岩で支点を取った。最後もなかなか回収できなかったが、なんとか回収して黒戸尾根に登り返す。しかし、スニーカーなので滑りこわいこわい。さらに黒戸尾根の下降もこけまくり、一体何回転んだのかわからないくらいだ。7合目で15cm位の積雪で本格的な雪になってしまった。途中から雪は雨に変わったがますます激しくなり、しかも途中からまた暗くなりヘッドランプ行動。水流と化した道をひたすら下る。ようやく19時に竹宇神社に戻った。駐車場前のお店でタクシーを呼んでもらったが、そこの人もとても親切にもてなしてくれ、「こんな天気で岩登りなんて馬鹿だね。」と言いつつも、もつ鍋を御馳走してくれた。感謝感謝!しかし、この後私は風邪をひき、原因不明の湿疹に苦しめられてヒマラヤのツアーに出発することになるのである。
(記:猪熊)