唐沢岳幕岩―大凹角ルート&広島ルート
1998年度山行報告 (C) 昭和山岳会(東京都山岳連盟)
1998年10月3〜5日 猪熊・宇都宮(日本登攀クラブ)

<10月2日(金)>
夜、急行アルプスで新宿発。めちゃ混み。

<10月3日(土)晴れ>
朝、大町着。タクシーで高瀬ダム下へ。
7:30 ダム下発
9:30 幕岩取付“大町の宿”着
10:00 “大町の宿”発
10:30 大凹角ルート登攀開始
17:00 登攀終了
19:00 “大町の宿”着
いい天気に恵まれ絶好の登攀日和。しかし、昨夜は混み混みアルプスで全然眠れなかった。寝不足だ。アプローチは唐沢を詰めていくが、今年の大雨で荒れているのかあまり良くない。途中の滝を左のガリーから巻く所は落石に注意!1時間30分位詰めると、左から滝を持ったB沢が入り、その左岸を登って滝上にトラバース気味に登る。その後、沢を詰めていくと、右に踏み跡が現われ、それを辿るとすぐ“大町の宿”に到着。きわめて快適な宿だ。しかし岩は濡れ濡れ、ここから見てもしょっぱそうだった。ここで一休みして大凹角ルートに向かう。さらに沢を詰めていくと、右稜のコルに出るが、そこから左にトラバースした所が取付きだ。最初の凹角はIII級・A1だが、濡れて苔むしていてフリー部分が非常に悪い。冷や汗をかきながら登り、途中の被った所を人工で越して半畳テラスに出る。さらにスラブを登って、洞穴テラスに出、その上のハングを人工で越して右にトラバース気味に登るとボサテラスに出るが少し分かりにくい。次の3ピッチはフリーで特に問題なし。緩傾斜帯はどこでもルートを選べるが、変な所を行くと私のように藪こぎするはめにあう。続く上部岩壁が唯一すっきりしていることころで、高度感もあり面白いが、ここでまたルートを間違えてしまう。上部岩壁2ピッチ目で、本当なら左のランペに行かなければならない所を私は右の強い傾斜の岸壁に取り付いてしまい(ボルトが連打されているが、途中でなくなる)、懸垂し引き返して正規のルートに戻った。懸垂は右稜の頭から少し下った所で7ピッチの懸垂で右稜のコルに戻ることができた。途中からヘッドランプ行動となり、宇都宮君がいなかったら懸垂点を見付けることは難しかったろう。

<10月4日(日)晴れ>
7:30 “大町の宿”発
8:30 広島ルート登攀開始
10:30 第1ピッチ終了
14:30 中央バンド着。下降開始。
18:30 広島ルート取付き着
19:10 “大町の宿”着
今日は5時に起きる予定が大寝坊してしまい、出発が7時30分になってしまう。広島ルートへは、沢を少し詰めて左側の踏み跡が現れたらそこをトラバース気味に登っていくのだが、少しわかりずらい取付きの直下にいやらしい濡れたスラブがあり、人工で越すが、乾いていれば多分A0で行けるだろう。台洞穴ハングは想像以上に大きく、「ヒエーこんな所登れないよー」とびびったが、宇都宮君がリードする以上登らないわけにはいかず、内心冷や汗をかいた。さしもの宇都宮君もここには時間がかかり、いよいよ自分の番。最初から腕力を使う。途中までは壁に足をついていけるのでまだ楽だが、天井部分はボルトの間隔も離れていてきつかった。ただ、わりとしっかりしたものが多かった。2ピッチ目 も傾斜が強い人工とフリーのミックス、3ピッチ目は問題なし。次のメガネハングは中央の水流を登るが、ドロドロの壁で濡れるは、泥まみれになるはで最悪のピッチ。5、6ピッチ目は明るいスラブだが、今回のように濡れているとピンが無くかなり厳しい。大テラスは少し外傾しているが広い。次の2ピッチのフリーも濡れていて不快だった。松の木バンドであと3ピッチ、ビバークを覚悟すれば行けただろうが、月曜日は午前中に降りたかったので(夜、用事があったので)撤退することにした。しかし、ここのルートの下降はかぶっており、かなり厳しく振られるので、アブミをフル活用して下に降り立つ。しかし、最後の洞穴ハングはザイルがなかなか回収できず苦労した。ここは懸垂する場合は短く短くピッチをきらなければ危険だ。俺たちもそうしたが、それでも回収にてこずった。

<10月5日(月)晴れ>
9:00 “大町の宿”発
10:20 高瀬ダム着
今日も晴れており、名残惜しい気持ちで下山する。広島ルートは敗退したが、かなり中身の濃い登攀が出来満足している。下山は下の滝で巻き道ルートを使ったが、結構緊張する下りだった。
(記:猪熊)